第4話八王子の冷たい朝

1月の凍える風に晒され、コートを着ていても顔は冷たい。


伊善鏡太郎いぜんきょうたろうは午前5時の八王子の街を歩いていた。


当然店など開いてないし、人もほとんど歩いてない。


八王子の地理など精通してるわけではない。


歩き疲れてきたので、ネットカフェで休憩しようと階段を上がる。


受付の女の子に身分証明書をご提示下さいと言われたので、財布を出す。


国保の保険証を忘れてきた。会社の身分証も忘れたようだ。


まったく、慌てて確認もせず家を出たから忘れたのか、そそっかしい。


唯一行き付けの歯医者の診察券があったが、それでは駄目らしい。


諦めて外に出る。そういや今幾ら金持ってたっけ。


財布の中を見るとかろうじて5千円くらいは入ってる。


SUICAにも3千円くらい残ってるはず。牛丼くらい食っとくか。


駅前で開いてるのはコンビニと松屋くらいだ。


なぜ会社が始まる前に八王子に来たかというと、謎のメールのせいだ。


“八王子、ねえ、あの場所で。”というメールで折口玲子おりぐちれいこのアドレスだった。


携帯は繋がらない、メールを送り返しても戻ってくる。


八王子のあの場所?どこの事だろう……。


2018(H30)4/4(水)





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