トシコとキャベツ。


俺はカンチ。

キャベツが好きなフレンチブルドックだ。


俺が大好きなキャベツ!

朝はご飯にキャベツがついてくることもある


うほ!


おて、おかわり、伏せ、待て。

これが俺のご飯を食べる前の儀式。


しかし!


ユウタはこの「待て」がながい。

誰よりも…!

悪質にながい!!

俺のよだれが2、3滴落ちるのを笑いをこらえて待ってから「よし!」と言いやがる。


…ユウタめ!ユウタめ!


でも待たないとご飯が取り上げられそうなので大人しく従う。

が、非常に屈辱である。



キャベツはおやつになるときもある。

ちぎってくれたりする。

俺はこの白い芯と白いはっぱが大好きだ!

ゴリゴリ。

シャキシャキ。

パリパリ。

たまらない!

しかしながら俺はこの緑の部分が好きじゃない。(キャベツの外側の緑色の葉っぱ)

そう、好きじゃない!!


トシコは、人間が食べない緑の部分を俺にくれる。

トシコ様の中では、徹底して俺は犬である。


でも俺はすきじゃない。緑のトコロ。

しかし…。

トシコ様はこれを食べ終わらないと次にスタンバっている美味しいところをくれないのだ。


「カンちゃん、好き嫌いしちゃダメよ。」


優しい言い方だが、目が笑っていない。

おしかり感はじわじわと感じる察しのいい俺。



俺の食べず嫌いは許されないのか!!

他は玉ねぎ以外なんでも食べるぞ!?

と言いたい。


俺は、室内犬だから知っている。

仁科家全員の嫌いな物を。

知っている!!

知っている!!!


チヨさんは納豆とキムチ。

ユウタはレーズンと、セロリ、おせんべい。

ヒロコは、メロンと牛乳とシャケ。

トシコさんはオレンジジュースと、甘いもの。


2つ以上の食わず嫌いを許される仁科家。

たった1つを許されない

…犬には理不尽な世の中だ。



しまいにはこうだ。

「カンちゃんが食べないから、これはお預け。」


…。


俺は…

俺はキャベツが大好きだ!!

キャベツのために脱走して、ヨシエさんの畑のキャベツだって食べたことがある!!

キャベツへの情熱は揺るがない。

しかしトシコさんも揺るがない。


嫌いなのは緑のトコだけなんだーーーーーー!!



でだ、俺は画期的なトシコさん対抗作戦を編み出した。

フレンチブルドック特有のこの垂れ下がった口と頬袋に隠して、食べたふりをする作戦。


俺は緑の嫌いなところを食べたふりをして次をいただこうとういう作戦だ!


「お、カンちゃん今日はいい子ね!」

ふがふが。

ふがふが。


俺はこの作戦で、次に控えている白いキャベツをいただける。

うほ!


俺は用意されたキャベツを全ていただけることとなった!!!



だがしかし!!


この作戦には欠点があった。

大好物の芯の部分は顎を使い過ぎて隠しきれないという欠点…。


結局、終盤。

食べることに夢中になって、隠しきれなくなって。

ぽろっと落ちる。


や、やばい!

バレる!!


俺はよだれまみれのをお尻に弾いて隠す…。


見上げて愛想笑う俺。

ヘコヘコ。ハッハ。

…が、トシコ様の目はちゃんと捉えていたようだ。


冷たい目。


ひぃぃぃぃぃ!!!

たじろぐ俺。


「そんなに嫌いなのね。」


ひぃぃぃぃぃ!!!



お、お手でもしとこうか…。


「あとで食べときなさいね。」


と言ってトシコさんは戻っていった。


俺は…とりあえず。

ユウタのクッションの下にソレを隠す…。


ごそごそ。


で、学校から帰ってきたユウタ。

クッションが足にあたり向き出るソレ。


ユウタがソレを踏んで青ざめる。

「うぇ。なんだこれ。」


と言ってゴミ箱に捨ててくれる。


ふふふ。ユウタめ。

俺のよだれとソレは、ユウタを不快にする天才だ!

そしてトシコさんにバレずに末梢されたソレ。


そう、俺は天才だ!!




後日俺の好き嫌いはユウタによって公認された。


ユウタ、good job☆(上から)











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