カースト順位はみかんで査定。


俺はカンチ。

みかんとキャベツが好物の

フレンチブルドックだ!

俺のおやつは冬から春にかけて、みかんである。

毎年チヨさんの実家からサナエばあばが届けにくる。

今年の冬もサナエばあばがでっかい米袋(30kg用)にうんと入れて届けに来た!


うほ!みかん!!!


俺は番犬として、来客に吠えるという任務がある。

がしかし。

窓から、サナエばあばだとわかるとみかんに興奮し過ぎて吠えることを忘れてしまう。


そう、俺にとってみかんは…


を狂わせる魅惑の果実!!



しかし美味しいみかんにありつけるのはなかなか難しいのが現実である…。




俺は毎日、お昼におやつにみかんをもらえる。

おやつをくれるのは

平日はチヨさん。

休日はトシコさんかユウタだ。


俺はトシコさんから貰うみかんが、美味しくない率が高いことに薄々気づいていた。

理由はわからない。

だがしかし。

つい最近、俺は決定的な事実を目の当たりにした。


「母さん、この袋の外に弾いてあるみかん何?食っていい?」

ユウタがトシコさんに聞いていた。

「それ、もうシワシワになって来ちゃって良くないヤツ。カンちゃん用にとってあるの。」

「ああ。これ、カンチのおやつ用かぁ。」


お気づきだろうか。


仁科家にとって俺は所詮犬である…。

この世は人間様様だ。

仁科家では、大黒柱であるトシコさん様様だ。

つまり犬である俺は…

仁科家人間以上に上質なものを食べてはいけない定めだったのだ!!



しかしながらユウタは…アイツはもっと酷い!

俺はユウタが甘いみかんが好きだということを知っている。

だからアイツは…


自分が剥いて、一口食べて口に合わなかったみかんを俺によこすのだ!!

ユウタめ!


俺はこの二人からは絶対に美味しいみかんをいただけないことを知っている……。

知ってるぞ。

知ってるんだからな!


悔しいから「ほねっこ」をかじる。

ユウタのクッションの上で。

ガミガミ、かじる!


ユウタめ!このッ!このッッ!

ガミガミ。


クッションがよだれまみれになるまで。

気がすむまで。

「ほねっこ」ユウタに八つ当たる!


だがしかし!

チヨさんは違う。

チヨさんは神だ。


チヨさんは畑仕事がひと段落すると縁側に腰掛けてみかんを3つ膝におく。

休憩だ。

俺はチヨさんの近くで寝そべる。

チヨさんは剥いたみかんを

半分自分で食べた後、

半分を俺にくれる。


お分かりだろうか。


この差は歴然である!


俺はチヨさんといるときだけ人間と同等の上質なみかんをいただけるのだ!!


チヨさんは神だ。

俺のハートをみかんで撃ち抜く神だ!


だから

俺の中のチヨさんの優先順位は常にトップだ!

ユウタじゃない。アイツは最下位の4番目。


犬は一般的に、ご飯をくれる人間から順位をつけていくとある。

でもチヨさんは

茶色いご飯をくれない。

散歩も行かない。

なでなでゆさゆさポンポンもしてくれない。


全ては……!


魅惑の果実みかんのくれかたにあるのだ!!


俺はチヨさんの前では

「プロ彼女」ばりの「プロ犬(=忠犬)」だ。


徹底していい子でいると決めているのだ!





しかしこのいい子でいる理由には、

実はもう1つの理由がある…。


次回に続く。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る