No.11『嗽←読めるもんなら読んでみやがれ』
「て感じでマジうざくなーい? こっちは汚ねぇチ◯コ握ってやってんだからしのごの言わずにイカされとけって話よ」
「はあ。そっすね」
「それ言ったらこっちだって死ぬほど喉の奥まで入れられたしー。めっちゃ
「へぇー、大変ですねー」
「まだ攻めれるだけマシっしょ。私なんて攻め好きにずぅぅっとク◯イジられまくってイキ死ぬかと思ったかんね」
「ふーん。そりゃご苦労さんです」
「ねぇー、穢谷くん聞いてるー?」
「はいはい聞いてますよ」
「え〜何それー」
「全然聞いてる時の反応じゃなーい」
「うりうりー。照れてんのかおーい」
ドチャクソうぜぇ……。 何なんだよコイツら、初対面でボロクソ言ってきたクセに結局俺に話聞いてもらってるし。そして俺も素っ気ないの極みながらも話聞いてあげちゃってるし。
そもそもその謎の枕営業自慢に対する正しい反応を俺は知らないわけで。だから素っ気なくなるのも仕方ないわけで。
「最初はみんな葬哉くんのこと気に入ってくれなそうだったけど、打ち解けたみたいで良かったー」
「いや雲母坂さん、別に打ち解けてるわけじゃな――」
「まぁよく見たら意外とカッコイイ寄りの中途半端顔だし〜」
「そのヤル気ない感じの目が結構唆るんだよね」
「なんて言うんだろ。程良く落ち着いてるって言うかさ」
「あー、それわかる。結婚するなら顔とか派手さとかよりも、こういうタイプ的なね」
「うんうん。あと私の話テキトーに流してくれるところがすごいイイ♡」
「……あんたら手のひら返しにも程があるぞ」
お前らの中で急に俺の株上昇し過ぎだろ。あと最後のヤツは多分ただのドMだと思う。
しかしなるほど、育ってきた環境が違うだけでやはり他人から見定める俺の価値観も違ってくるようだ。
あっちじゃ卑屈で陰キャで中途半端な顔のゴミクズとされる俺も、ここ東京の地ではカッコイイ寄りの顔として持て囃される。つまり、俺は東京にいれば永遠にモテ期ということなのだ(自惚れ)。
よし、高校卒業したら上京することにしよう。んで永遠に東京から出ないようにしよう。
と前までの俺なら本気でそう考えていた。だがしかし、今の俺には眼前の枕営業タレントどもを凌駕する爆裂可愛い彼女がいる。こんな汚ねぇおっさんと汚くまぐわった汚ねぇタレントなんかじゃ俺の心は揺れねぇ。今回の面倒ごとをさっさと終えて、東京の最高級スイートホテル堪能した後に心躍らせながら田舎に帰ってやらぁ。
「け、穢谷!?」
刹那、俺の耳に届いたその声はこの地で聞こえるはずがないのにも関わらず、あまりにも聞き馴染みあり過ぎる声だった。
まさかな……東京にいるわけがない。きっと似た声の人がたまたま俺の名前を知ってて呼んだだけだ。
がしかし。ゆっくり後方を振り返ると、そこには
「……春夏秋冬?」
春夏秋冬に会いた過ぎる俺が幻覚を見ているだけ、なんて爆裂低い確率が起こっている可能性もあるので、おずおずと名前を呼んでみた。
すると春夏秋冬と思しき少女はこちらに歩み寄り、俺の肩に触れる。そして目を真ん丸にして言った。
「幻覚じゃない……!?」
「それはこっちのセリフだよ……。何やってんのこんなとこで」
「それこそこっちのセリフよ! なんで穢谷が父さ……オリカープロモーションの本社にいるわけ? しかもたくさんの女の子に囲まれて……って、黎來もいるじゃない!」
「あはは! 朱々ちゃんとりあえず落ち着いてよー」
春夏秋冬に見つかった雲母坂さんはたははーという感じで呑気に笑い、落ち着きを失った春夏秋冬を宥める。
それによって春夏秋冬は一瞬冷静な表情を取り戻したように見えたが、すぐにその顔は喜怒哀楽の二つ目に近い状態となり、俺に詰め寄ってきた。
「いや落ち着けないわよ! どういう状況なの穢谷!」
「あ、いやこの状況はー、まぁ何から話せば良いんだって感じなんだけど」
「やぁ穢谷く〜んw。こんなとこで会うなんて奇遇も奇遇、最早運命だねっww! でも春夏秋冬ちゃんが怒るのもわかるよ、こんな可愛い女の子に囲まれてるなんてボクもちょっと許せないなぁw」
「平戸先輩ちょっと黙って。あなたが喋ると余計ごちゃごちゃする。あと私は別に怒ってないです!」
と言いつつもかなり声に怒気が含まれている春夏秋冬。平戸さんは春夏秋冬に声を荒げられ、ニタニタ笑顔のまま口を結んだ。
てか平戸さんもいるのか。確か東西南北校長は別のことを頼んでいるって言ってたけど、どういうこったこりゃ。
「えー、誰誰? 穢谷くんの彼女さん?」
「残念だけど違いまーす。朱々ちゃんは私の
「従姉姪がよくわかんないけど、要は親戚ってことだよね?」
「うん。私の従姉の子供だよ」
「あねな。それで従姉姪か」
あっちはあっちで雲母坂さんの説明により、突如現れた困惑する美少女の存在に納得してくれているようだ。
さて、俺も春夏秋冬に色々と説明しなくてはいけないのか。何故か知らんけど春夏秋冬は現在激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム状態にあるようなので、逆鱗に触れないよう慎重にいかねば。
△▼△▼△
「えーっと、話をまとめると穢谷は東西南北せんせーの面倒ごとでこの人たちのメンタルケアをしに来たってことよね」
「あぁ。んで平戸さんも校長からの面倒ごとで、殺害予告の出ている炎上男のボディガードをしに来たんですよね?」
「そうだねw。そして春夏秋冬ちゃんは炎上お父さんに話がしたいと言われてここまでやって来たとw」
数分間の話し合いでようやくお互いに納得いく結論が出た。
春夏秋冬は終始にこやかとは言い難い表情で俺の話を聞いており、初めて平戸さんの笑顔を見て救われた。
「はぁ、どうせ校長絡みだろうとは思ってたけど……ちょっと不満だわ」
「……あの、春夏秋冬さん出来れば何がご不満なのかはっきり申してもらえませんか。無能な俺にはなんで怒っていらっしゃるのかさっぱりわかりません」
俺がなるべく恭しく下手に出てこれ以上春夏秋冬を怒らせないように質問すると。
「女の子たくさんに対して穢谷男ひとりだったことがよ!」
「あ、あーなるほど……」
それは普通に嫉妬的な感情があるとみてよろしいんでしょうか。だとしたらこちらとしてはめちゃくちゃ嬉しいんだけども。
いやしかし春夏秋冬としてはそれが不満、嫌だったのだ。であれば彼氏である俺がすべき行動はもう彼女を不安にさせないようにすることだろう。
「悪かった。もうこういうことが無いように善処する。俺もお前のこと嫌な気持ちにさせたくはないし」
「いや別に嫌ってわけじゃ、ないわけでもないんだけど、こういうこと言って束縛激しいとか思われるのも嫌だったし……うーん、とにかくわかってくれたならよろしい!」
「お、おう」
ゴニョゴニョ恥ずかしそうにもごついていた春夏秋冬だったが、最後にはうんうんと頷いて俺に言うと言うよりかは自分自身に言い聞かせているようだった。
「しっかし……なんで今になって、しかもこのタイミングで春夏秋冬を呼んだんだろうな」
「このタイミングって言うのはボクと穢谷くんがちょうど東京のこの事務所にいるタイミングって意味w?」
「はい。なんかお膳立てされてるみたいじゃないですか?」
「校長のことだからって何か目的があってこうしてこっちで私たちを鉢合わさせたと考えるか、それとも普通に偶然なのかよね」
偶然とするにはあまりにも出来過ぎだ。同じ日に同じ土地の同じ建物に集まるなんて。
だから何か仕組まれた、お膳立てされた気がしてならないのだが、果たして校長が何か企んでいるのかどうか……。
こうして本社に潜入が成功している俺たちにこの炎上中の会社のさらなる弱みを調べさせ、そして支配下に置こうとかそんな突拍子も無いことも、東西南北校長だったらワンチャンあるから何とも言えない。
ただ校長からの面倒ごとでやって来た俺と平戸さんに対し、春夏秋冬はちょうど父親もどきに呼ばれただけ。だから父親もどきと校長が繋がっていない限り今日春夏秋冬がここに来るかも、ということはわからないはずなのだ。
そう考えると深く考え過ぎなのかもしれないと思えてくる。……俺たちが校長のことをどれだけ信頼していないのかがすぐわかるな。
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