No.13『関係は広く浅くをモットーに』
昼時の一番忙しい時間帯を切り抜け、一段落ついた頃。俺は休憩がてら海の家のパラソル付きチェアに腰を下ろし(本来はお客さん用であるため見つかったら店長にどやされる)、俺の
別に焼けるのが嫌とかではないけれど、最近は皮膚ガンだの日差しに当たることで引き起こされる病気とかマジで危ないらしいからしっかりと日焼け止めを塗りたくっておいた。ちなみに皮膚ガンや白内障の危険性があるのはUV‐Bであり、その多くがオゾン層で吸収されているそうだ。マジオゾン層感謝卍。
そんなテキトーなことを考えながら、ビーチでキャッキャウフフしてる陽キャ女の谷間を眺めていると。見覚えのあるビキニ姿の女二人が近付いてきた。華一と籠目の二人だ。
「穢谷くんっ! 今暇~?」
「ん、まぁ暇っちゃ暇だけど」
「聞きたいことがあるから、ちょいと顔貸せや~」
「なに俺今からボコられんの」
「あははっ、冗談冗談!」
「さっすが~。返しが一味違うわ」
謎に感心されてしまった。俺が暇だということがわかると、二人は俺を挟むようにして隣のパラソル付きチェアに座った。そして上半身だけ俺の方に寄せ、二人して持っていたグラサンをかけて口を開いた。
「実はね、今日遊びに来てるメンバーの中から
「なるほど。告白しようとしてるヤツはゲイで、もし告白したらこれまでの友人関係が壊れちゃうかもしれないから俺にその男に告白をやめるよう説得して欲しいんだな。丁重にお断りさせていただく」
「あひゃひゃひゃひゃ!! いや全然違うしww! 発想ぶっとびすぎでしょ!!」
「穢谷くんっww、マジヤバイわ~w。ウチらのドツボだわ~~!」
俺の肩を両方向からバシバシぶっ叩いて笑う華一と籠目。痛ぇよ、素肌なんだから少しは力弱めろよ。茶々を入れたつもりだったのだが、どうやら俺はこの二人に変に気に入られてしまっているようだ。
「あ~面白い……で、何の話だっけ」
「忘れたんなら無理に思い出さなくてもいいぞー」
「稜に告白しようとしてる子がいるって話だよ」
「おぉっ! さすがは
「いやいやかまわんよ
「茶番はいいからさっさと本題入れよ……」
「なにをっ!? これはウチと夏込の伝統芸能なんだぞーー!」
「なんなら穢谷くんも混ざる?」
「いやそれこそ丁重にお断りさせていただく」
つか伝統芸能の意味知ってて言ってんのかよ。誰から引き継がれてきたんだ。多分言いたいのは伝統芸なんだろうけど、まぁ伝わるっちゃ伝わるからほっとこ。ツッコんだら一々メンドくさそうだし。
「んでその告白の話なんだけどさ、穢谷くんと同じ六組の
「へぇー、そーなんだ」
って言いはしたけど
「そこで穢谷くんに聞きたいのが、綾の恋愛事情についてなんだよね〜」
「
「そそ。どんな子が好きとか、この子が好きって言ってたとかさ。少しでもいいから情報が欲しいんだよねー」
「なんで俺に聞くんだよ。他にもっとアイツと仲良いヤツらいんだろ」
「もちろん穢谷くんより先に色々聞いて回ったよ」
「でもみーんな『綾はあんまりそういうこと言わないし訊かれるのも嫌がるから知らない』的なこと言うの」
「だとしたらなおのこと俺が何か知ってるわけなくない? 俺アイツと友達でもなんでもねぇし」
俺よりも確実に仲が良いヤツらが知らないって言ってるんだ。つい最近やっとこさ名前覚えたようなヤツの好きなタイプだの女のこと知ってるわけが無い。
「いやいやだけど穢谷くん、バレー部の合宿中に稜と同じ部屋だったでしょ?」
「なんか夜にそういう話になったりしてないかなーって思ったんだけど」
「あー、なるほどそういうことか」
確かに思い返してみたら一日目にそういう話したような気がしなくもない。でもそれは
……あ、いや待てよ。来栖が聖柄にもつっかかってたような……。
「アイツ、好きな人はいないって言ってたぞ。来栖が中学ん時から恋バナはしたがらなかったって」
「「んぁ~、やっぱりか~」」
がっくしと肩を落とす華一と籠目。俺の方に寄せていた上半身をチェアの背もたれに預け、ふぅ~とため息を吐いた。二人を横から見るとなるほど、彼女らは胸のサイズまで似たり寄ったりらしい。
「なんでお前らは聖柄に好きなヤツがいるかとか聞いて回ってんの?」
「「え?」」
「告白すんのはその……
「すっごいね穢谷くん。それ当たって砕けろ精神の塊じゃん」
「は?」
「もし告白して他に好きな人がいるからごめんとか言われたら嫌じゃん」
「だから先に情報集めしとくのか?」
「そ。まぁ緋那が告白ビビってるからウチらが調べてあげるよってイキったのが始まりなんだけどさー」
そう言って笑う籠目。もし聖柄に他に好きな人がいるという情報を得た場合、その女はどうするつもりなんだろう。フラれるのが嫌だから、ということは聖柄に好きな人がいた場合、告白はやめるのだろうか。
「……ていうか、二人とも違うクラスだよな」
「そうだね」
「ウチらは五組だからね」
「なんで違うクラスの集まりに来てんの?」
「ウチらの交友関係、広く浅くがモットーだから!」
「他クラスの中に交じっても、全然平気なんだよねー」
なるほど顔広くしときたいけど、ズブズブの関係にはならないと……。コイツら結構俺好みの考え方してんな。なんだかんだで俺も変にコイツらのことを気に入りかけてしまっていた。
「あ、そうだ一枚写真撮ろーよ!」
「えぇ……」
「うわ、嫌な顔露骨すぎぃ~!」
「それな~。せっかくウチら仲良くなったんだし、一枚くらい良いじゃん!」
「ちなみに、撮った写真どうする気?」
「「インスタにあげる」」
「絶対撮りたくない」
「えぇーー! なんで、いいじゃんそれぐらい!」
いやこっちは撮るのも嫌なんだよ。加えてネットに顔晒すとかもっと嫌だわ。
「わかったじゃあ、インスタあげないから記念写真ってことで撮ろうよ!」
「なんの記念だよ」
「ビーチで偶然出会った記念!」
「そんなんで記念とか言ってたらキリなくね?」
「そうなんだよー。ウチらのフォルダえげつないよ? ほら」
写真フォルダの画面を見せつけてくる華一。気持ち悪ぃ、写真枚数五桁もあるんだけど。ちなみに俺のフォルダには
「もうなんだろ、関わった人みんなと取りあえず撮っときたいんだよね」
「ジンクスみたいなとこあるよね」
「若干ジンクスの使い方間違ってる気がするけど、言いたいことは伝わった。伝わった上でもう一回言うぞ、撮りたくない」
「「意志固っ!」」
コイツらが何かにつけて写真撮るのがジンクスなんだとしたら、俺は何が何でも写真撮りたくないジンクスなんでね。
「撮った写真絶対誰にも見せないからさ〜」
「それならいいでしょ!?」
「……今この並びで撮ったら真ん中の俺が死ぬからヤダ」
「「言い訳くるしっ!!」」
結局、俺は目元を
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます