第57話 8日目⑧

「じゃあ、いただきます。」御紋さんが言う。

「うん。今日もおいしそう。」椎名さん。

「楽しみ。」三谷さん。

「それなら、うれしいです。」と僕。

「では。」と御紋さんが食べ始める。こうやって、四人で食卓を囲むのは、もう何回目だろうか。いつも、同じような内容になりそうだったり、同じメンバーだったりして、飽きてきそうだが、まったくそんなことはない。まあ、僕だけかもしれないが。でも、場所は毎日変わってるし、楽しい気もする。

 雲の動いた跡が顕著になったころ、僕たちは食べ終わった。

「今日もおいしかったよ。」と椎名さんが言ってくれる。

「うん。」御紋さんも同調してくれる。

「流石。」三谷さんも言ってくれる。

「じゃあ、これからどうしましょうか。」お皿を洗いながら言う。

「うん、多分この辺にあるんだろうね。あれ。」その御紋さんの指示語だらけの発言に三谷さんが返している。

「『或る部屋』はここら辺にあるんだろうね。向かうはそこだけど。」

「でも、周りは森だよ。どうなってるんだろう。」と椎名さん。

「そうだね。とりあえず歩こうか。」こう御紋さんが言ったころ、お皿も洗い終わっていたし、食卓なども片付けられていた。僕たちはすぐに出発した。

「こっちかな。」御紋さんが早く奥に入ろうとする。

「まあまあ、周りをぐるっと回るってことだったでしょ。」椎名さんがなだめる。

「うん。ってあっ。」三谷さんが言う。

「え、なんかあった?」御紋さんがすぐに食いつく。

「何ですか。僕には何も見えませんが。」僕がそう言うと、

「いやなんか。光が反射してきた気がするんだよね。」と三谷さんから帰って来た。

「へえ。太陽光かな。でも森に反射させるものなんてないよね。」と椎名さん。その通りだ。

「じゃあ、人工物があるんだよ。あっ、魔界だから、人工とは限らないか。」そんなことを言ってる御紋さん。糸口が見つかった気がしてうれしいのだろう。

「まあ、勘違いかもしれませんが、行ってみる価値はあると思います。行きましょう。どっちですか、三谷さん。」僕の問いかけに、あっちと言いながら、指で森をさした。その先には木が生い茂っている。まったく普通の森に見えるのだが。そんな半信半疑で近づくと、

「嫌なムードが感じられる。」と御紋さんが言った。

「そうなの。やっぱり修道女だから敏感なのかな。」三谷さん。

「割と当たったよね。」と椎名さん。

 その当たったかどうかという答えはすぐに僕たちの目の前に示された。

 ストン。

 そんな音もない音を感じさせるような白い箱、3メートル四方ぐらいの、ものが森に佇んでいた。もしくはそんなに高くはないけれどそびえ立っていた。修道女でない二人もただならぬ気配を感じたのか。

「これかな。『或る部屋』。」との椎名さんの問いかけに、

「そんな気がするよね。」なんて返している。

「まあ、行ってみないことには始まらないですね。では。」こんな不安で足がすくむようなときには、不安なんて感じないなんて思ってみて、突っ走るのが大事だ。

「ほら、行きますよ。」僕のこの声で三人は、やっと自分の感情の外に目を向けられるようになったようだ。

「うん。」と御紋さん。いつもなら急かすが、嫌な雰囲気がその気持ちを妨げるのだろう。

「行こっか。」と三谷さん。

「じゃあ。行くよ。初ちゃん。」そう言った椎名さんが、先陣を切った。

 とはいったものの、立方体に入口は見当たらない。はて、困ったものだ。

「どうする、こじ開ける?」こんなことを実行できる力があるのは自分だけという自信からか椎名さんが言う。

「いいけど、なんかやり方がありそうだよね。」と三谷さん。

「入口、ほんとにないの。」と御紋さん。

「多分ないと思います。」と僕が言うと、

「そういえば迷路の時も私が黒魔術でできないって言ったら、織屋が悪魔、召喚したよね。できない?」と言われた。たしか、瞬間移動、テレポートの悪魔の呼び方なら、ちょっと前に読んで覚えたはずだ。やってみよう。そう思い、石で円を描き始める。三人は避ける。次は文字の書き込みだ、そう思った時、悪魔が現れた。予定より早い。というかなぜ。こんな月並みな僕たち全員に思い浮かんだであろう、疑問はすぐに吹っ飛んだ。そこに現れたものによって。

 陽はまだ照っている。さっきから少し強くなったであろうか。

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