第54話 8日目⑤

「すごかったね、織屋くん。」三谷さんが言ってくれる。

「うん。」御紋さん。

「流石だね。」椎名さん。

 流石にみんな疲れているのだろう。まだこの城来てからそんなに時間が経っているわけでもないが、緊張感と独特な雰囲気が疲労を生んでいる。それでも、この部屋と部屋の間の廊下は休憩に最適だ。まあ、その奥にはまた部屋への入り口が見えるのだが。

「ゆっくりしたいけどさぁ、そんなに休む時間もないよね。」御紋さんが言う。休日はいつも寝坊して遊びに送れるくせに、そんなことを椎名京華は心の中で思っていた。もちろん口には出さないが。

「じゃあ、行こうか。」椎名さんが大儀そうに腰を上げる。

「うん。」三谷さんも同調する。

「では。」僕もそう言って立ち上がる。次はどんな部屋だろうか。御紋さんも同じ考えだったらしく、

「体力、知力と来たよね。次は何かな。」と言っている。

「そうだね。心、とか?」椎名さんが言っている。

「でも、心を試すってなんだろうね。」と三谷さん。

 たしかになんだろう。そう思ってる頃には、もう扉は開いていた。いや開けられていた。御紋さんに。

 ここの番人はどんなのだろう。ぱっと姿が見えないだけに、好奇心に駆られる。ここまでの厳つい感じのバンガとしっかりしてる執事の様なコトルは扉を開けたらすぐ目の前に立っていた。

「あっ、いたよ。」御紋さんの声が部屋に響く。心なしか今までの部屋より広そうだ。

「うん。ボクがいるんだよ。ここは、『心』を試す部屋なんだ。ボクは『三人の番人』の最後の一人、トモナだよ。」そう言った、魔物は魔物という名すら似つかわしくない、かわいらしい、男の子という感じだ。人間に見える。

「僕は人間じゃないんだ。正真正銘の魔物だよ。」僕の思いが伝わってるのかそんなことを、トモナに言われた。

「かわいいね。」三谷さんが言っている。

「うん。好み。」椎名さんも言っている。

「ちょっと、この子は私たちのいわゆる敵だよ。しっかりして。」御紋さんが言っている。

「敵だなんて悲しいな。ボクはみんなと遊びたいだけなのに。」

「で、何をするんですか。」僕が言う。

「ありがとう、遊んでくれるんだね。最近ここにあんまり人が来なかったから、暇だったんだよね。」にっこりと笑ってトモナが言う。もしかして、それは、ここまでたどり着く人が少なかった、もしくはすぐ踵を返したってことではないのか。と僕たちは思っていた。

「まあまあ、そんなに難しいゲームはないよ。ほら、モルナ。」そう言って、トモナが大きなさいころを転がしている。

「このさいころは、魔王様が僕の遊び相手にと作ってくれたんだ。」

「へえ。」僕たちは感心する。

「えっと、今回のゲームは、、、うん難しくないね。ここまで来れた君たちなら簡単だよ。じゃあ、モルナの言うとおりに説明するね。」どうやら、このさいころがモルナで、ゲームを仕切るようだ。

「まず、四人は、あっボクも一緒にできないんだ。残念。まあいいや。」少し間があって、

「それぞれ小部屋に分かれます。じゃあ、分かれて。っていつのまにか小部屋ができてる。感激。」

 たしかにいつのまに、といった感じだ。言われたまま、一人ずつ小部屋に入る。

「壁に説明がでるから、それを読んで、読み終わったら、出てきてだって。で、モルナが休んだら、説明がでるみたい。あっもう、休んじゃうの、モルナ。」

 そう、トモナが言った時、壁には、ある短い文が映された。

『この部屋の中に、一人嘘つきがいる。その嘘つきを一時間以内に決めて、私、モルナに言いなさい。私がその人を処分する。嘘つきを処分できるまで、私は処分を続ける。冷静さを忘れないことがクリアの鍵です。』比較的短かったので、すぐ読めたが、内容は重い。処分とは死を意味するのだろう。ここにきて過酷なゲームだ。そう思いつつ、小部屋を出る。

 予想通り、三人の顔は暗かった。はずだった。しかし、そこに現れたのはいつも通り明るい御紋さんと、いつも通りというよりは深夜テンションの椎名さん。そして、無駄に明るい、三谷さんだった。なんだろう、明らかな違和感。みんな違う。だれかが嘘つきなのだろうか。嘘つきとは何なんだろう。処分とは一人の意思でよいのだろうか。よくわからない。そんなことを考えてた、はずだった。

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