第49話 7日目⑦
空は赤くなっていく。というか、赤い空が雲と共に動いていく。にゅるっと動いていく感じだ。激しくはないが確実に目で見て分かるぐらいに動いている。そういえば、夕焼けが赤く見えるのは、可視光の中で波長が長く、消えづらい、つまり残りやすい赤色の波だけが僕たちの目に届くからだったけな、なんてことも考える。が、今はそれに集中する時ではない。誰かの思いが聞こえたのだ。織屋の「おり」ぐらいが聞こえた気がする。
『織屋、織屋。』椎名さんだ。
『どうしました。』とりあえず返す。
『外に出る場所があった。どうすればいい?』そう聞かれて少し考える。二人に話すのでちょっと待っててくださいね。そう送って二人に送る。
『いいんじゃない。ゴールしてもらえば。』このサバサバした感じは、御紋さん。
『私たちがゴールしやすいようになんかしてもらえるかな?』これは三谷さん。
『そうですね。じゃあ、三人に切り替えますね。』僕はそう言って、三人に送り始める。
『えーっと。とりあえず椎名さんにはゴールしてもらとして、ゴールしていいですよ。どうですか。』すこしして、
『OK。外に出た。』と送られた。
『椎名さんはゴールしました。何か、合図みたいなの、できますか。』とりあえずそう訊くと、
『黒魔術でなんとかなるかも。』と来た。
『黒魔術でいい方法ありますかね。』二人にも訊くと、
『大きな音とかは。』と御紋さん。
『光とかなんかないかな。』と三谷さん。そうだ、音と光と言えば、花火。打ち上げ花火だ。
『椎名さん、どんなものでもいいんで、花火打ち上げられますかね。』そう訊くと、
『なるほど、やってみる。』と来た。
『いいね。』と御紋さん。
『ナイスアイディア。じゃあ、それ目指せばいいね。』と三谷さん。
『では、椎名さんの花火を目印に、歩きましょう。』そう送った。
ある少女が、右腕を自分の体の前でくるくる回している。なにやら、なにかの練習のようだ。おそらくこの振り方は花火の打ち上げだ。そう思うと、
ドゥアーン。こんな音が響いた。やはり花火で正解だった。少女は誇らしげだ。
この音から十分もたたないうちに、花火の主に話し相手が現れた。それは非常に小柄な少女だ。二人とも楽しそうに話している。
そのあと三分ぐらいで、もう一人の女の子が出て来た。やはり楽しそうだ。
おかしい。さっきの音の方向はこっちだったはずだ。さっきこっちから来たから、なんて頭を巡らせて、あることに気づいた。僕は方向音痴だった。そのことに三人の少女も気づき始めた。その結論は断続的な花火だった。少年はなんとかその音に導かれ少女たちと合流した。
「よかった。ひさしぶりです。」僕が言うと、
「そんなに久しぶりでもないよ。」なんて言われた。御紋さんに。
「まあ、良かったね。次は何。」三谷さんが言う。
「うん、良かった。でも、もう暗いよ。迷路に翻弄されてるうちに。」椎名さんが言う。たしかにその通りだ。
「じゃあ、どうしましょう。」迷路の疲れから、大したことは考えられない。
「そういうことなら、今日はここで終わりでしょ。セクションの間で、休みやすいし。」御紋さんが言う。そのとおりだ。
「では、そうしましょう。」僕が言うと、
「晩ご飯の準備しよう。」椎名さんが引き継いだ。いつの間にかみんなものすごくしっかりしている。この魔界のおかげだろうか。
僕があの時、左に曲がったのが間違いだったのかと、ずっと頭の中で思い出していると、織屋、と呼ばれた。晩ご飯のようだ。特に今回は何もしていない。出て来たのはおいしそうな晩ご飯だ。すばらしい。
「いっただきまーす。」御紋さんの声。なにか、安心する。それに追随するほかの声も安心をより確かなものにする。
みんなで食べ終わると、片付けも率先して行ってくれた。そして、就寝だ。
「明日は魔王の城に行くのでしっかり寝ましょう。おやすみ。」そんな御紋さんのしっかりしたお言葉つきで。
「はーい。」三谷さん。
「うん。」椎名さん。
「はい。」僕。その後に御紋さんが
「じゃ、織屋、朝はよろしく。」と言ってきた。
はい、わかりました。心の中で返事をする。
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