第47話 7日目⑤
「えっと、何が起きたのですか。」みんな思いが誰かに伝わるのでは、と恐れて言葉を発しない。だから僕が発する。
「別にお望み通りにしただけだが。」ジンが言う。
「具体的には。」僕が低姿勢で言うと、
「お前が言ってたように四人をテレパシーで結ぶのは、便利だけど面倒くさいんだよ。魔力も要るって書いてあっただろ。でも、俺がしたようにお前、お前だよ、お前。」指で、どこが指なのかはわからないが、で指される。
「あ、はい。」僕が言うと、
「うん、お前な。そうお前と三人をテレパシーで結んだんだ。お前が中心な。ただそれだけだ。」ジンが答える。
「え~。織屋とつながってるの。」御紋さんが率直に言う。
「双葉ちゃんとかとはつながってないのか。」椎名さんも言う。
「ね。」三谷さんも言う。
「まあ、そういうことだ。じゃっ。」ジンが言う。
「あっ。」何となく声をかけてしまった。
「なんだ。あっ、これは日が沈んだら、終わりな。覚えとけよ。じゃっ。」ジンがその声とその余韻を残して消えた。どこかに。
「だって。時間ないね。」空を見上げた御紋さんが言う。
「うん。」椎名さんも相槌を打つ。
『じゃあ、早く迷路に行った方がいいんじゃない。』三谷さん。
「そうですね、三谷さん。」僕が言うと、
「えっ、織屋くん、何?」そう返って来た。
「いや、いま、早めに迷路に行った方が良いって言ったので、そうだなと。」そう言うと、
「そうだけど、なんでわかったの。ってあっ。」三谷さんが何かに気づいた。僕も、二人も気づいた。
「テレパシーか。」そんな結論に達した僕たちは、迷路に入った。
中は金属の塊だらけだった。海で、椎名さんが作り出してたのの比ではない量だ。それに、この整然とした感じが恐怖を与えている。計り知れない。ゴールが見えない、霧の中、それはこんなにも怖く、怯むことになるものだったのか。
「じゃあ、右!」そんな僕の鬱々としかけた気持ちを一気に晴らしたのは、御紋さんの一言だ。
「OK。」二人も考える必要もないと考えているのか、というかそう考えているのがわかるのだが、御紋さんに付いて行こうとしている。ちょっと、試してみよう。
『おそらく、左右で別れた方が効率よいと思います。』そう思って見た。三人が一気に振り向いた。できた。テレパシーが。
「そうだね。」椎名さん。
「双葉ちゃんと私にする?」御紋さん。
「いいよ、それで。」三谷さん。
僕が言った時と同じような反応だ。会話に置いてかれないようにしなくては。
「そうですね、じゃあ、僕と椎名さん、三谷さんと御紋さんで行きましょうか。」そう言うと、みなOKのようだ。
僕たちが左に行くことになった。
「織屋、これって、テレパシーだけで話せるのかな。」椎名さんが言う。一本道を歩くだけなので、会話の余裕がある。
「多分ですけど、三人の思いをバラバラには聞けるんですけど、三人にバラバラに話すことはできないんですよね。だから、私とあなたの会話がほかの二人に筒抜けになりますけど、どうしますか?」すこし意地悪な言い方をしたが事実は事実だ。
「分かった。普通に話そう。」
「ええ、そうしましょう。あっ。」
「どうした、織屋。」
「なんか、三谷さんの思いが聞こえますね。」
『また、二手に分かれたんだけど、どうしよう。』だって。思いを読み上げながら言う。そして、
『じゃあ、二手に分かれてください。万一の時は僕が仲介できるので。』そう送ると、了解と来た。
「これで、あっちはすでにバラバラですね。」
「へぇ。」椎名さんがそう返した時、前には真っ直ぐの道と右への道が現れた。別れることになりそうだ。
「では。」僕が言うと。
「またね。」控え目に手を振りながら、椎名さんが金属の塊へ消えて行った。絶対、また会えると思いながら、二人にも、結局は三人になるのだが、
『こちらも別れました。』と送った。
『頑張ろう。』と御紋さん。
『早くゴールしたいね。』三谷さん。
『何か心配になって来た。』椎名さん。
『珍しく、椎名さんが弱音を吐いていますが、また、一堂に会せるようにしましょう。』僕が言うと、
『一堂に会するってなに。』なんて声が聞こえて来た。聞こえてはないが、声の主は御紋さんだろう。
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