第45話 7日目③

 危なかった。なんとか陸地に足がついた。どうやら、あの石畳は徐々に前に傾いていたようだ。

「何が起きたの。」御紋さん。

「怖かった~。」椎名さん。

「よく考えたら、あの石畳も浮いてたんだよね。だから傾いてもおかしくないか。」三谷さん。

「そうですね。普通に怖かったです。」僕。

「でもさぁ、ここがもう陸地ってことはさぁ、『蒼穹の街』は終わったのかな。」御紋さん。

「確かに。」三谷さん。そんなことを言いながら僕たちが歩いているのは確かに陸の上だ。まだ標高は高そうだが。

「もし、終わったなら私たち結構移動したってことかな。」椎名さん。

「走ったしね。」御紋さん。

「それ相応の時間も過ぎているでしょうね。」僕。

「ってことはさぁ、もうお昼の時間じゃない?」御紋さんがこちらを振り返って言う。

「確かに、太陽も真上に来てる感じですしね。」上を見上げてそう言う。

「ってことは。」なぜかあおってくる椎名さん。

「お昼にしましょう。」僕がそう言うと、三人がジャンプして喜んだ。さっきの大ジャンプよりも大きいかもしれない。

「じゃあ、この辺の食材探してくる。」と三谷さん。

「食卓とか出すよ。」と椎名さん。

「とりあえず、これが今ある食材。」御紋さん。やはりみんな手馴れて来たのだろう。まあ、魔界に来てから割と時間たったから。そう思いつつ献立を思い浮かべる。僕もこの能力が身に付いたかもしれない。

 そんな感じでみんなで楽しく料理した。そして食べ始めて食べ終わる。特筆すべきことはなかったけど、いつも通りというのは貴重なことだ。安心もする。

「で、このあとってさぁ。やっぱり魔王の城なのかな。」御紋さんが本題に入る。

「そうなんじゃない。あの烏もそう言ってたし。」椎名さん。

「じゃあ、行くよね。目的は魔王討伐なわけだし。」三谷さん。

「そうなりますね。」僕が箸をおいて言う。僕が食べ終わってお皿を洗っていると、椎名さんと三谷さんが自分の皿を持ってきて、御紋さんは最後に食卓を拭く、というのがお決まりになっていた。今日もその手順を踏んで、再び出発となった。

 数分歩くと、大きな門が目の前に現れた。その下には石碑というか大きな切り出された石が一つ置いてある。

「これが言ってた門で、この石が鍵穴があるものかな。」御紋さんが言う。

「そうじゃないですかね。鍵穴は、、、。」僕が言うと、

「六つだね。」三谷さん。

「でも、私たち三つしか持ってないよね。」と椎名さん。

「確かに。」御紋さん。このあと数秒沈黙が続いた。もしかしてここで手詰まりなのかという思いと共に。しかしそれは十数秒になる前に破られた。

 スパッ。シュッ。タラララ。

 こんな音が聞こえて来るかのような動きで鍵がどこからか飛び出した。三つの鍵出て来て、それぞれが自然に自分の鍵穴目指して刺さっていった。

「なに。今の。」椎名さんが言う。

「鍵が降って来たね。」御紋さんが言う。

「もしかしたら、今の鍵を降らした人と、あの看板を粒にした人は一緒なのかもね。」三谷さんがぽつりと言う。僕がどういうこと、と尋ねると

「本当はあの、『怨恨の炎』『氷の大地』『蒼穹の街』にも鍵とその存在を示す看板はあったんだけど、鍵はないよ。でも進んでねってことだったのかも。」と返って来た。

「なるほど。」僕が言う。

「へぇ。」御紋さんも驚いている。三谷さんは予想だからねと謙遜している。

「で、あと鍵は三つでしょ。入れようよ。」三谷さんが言う。そうだった。鍵穴は六つでそれらは、六芒星のとがった頂点に並べられている。その内、逆三角形の部分がまだ空いている。あとはここに入れるだけだろう。

「あっ。この鍵、うさぎの耳がついてる。」三谷さんが言う。

「え、そうなの。私のは十字架だよ。」御紋さんが言う。

「私のは波だよ。」椎名さんが言う。

「じゃあ、それぞれセクションのモチーフが用いられているんですかね」僕が言うと、三人は納得しながら鍵を入れている。

「入れたよ。」御紋さん。

「私も。」椎名さん。

「私も。」三谷さん。

 三人の声がかわるがわる、晴れた空に消えていく。

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