第43話 7日目①

 目の前には、青空が広がる。頂上だからか、非常にきれい。雲一つない。不安なんてない、そう思わせてくれる青空だ。そういえば、青空といえば、きのう晩ご飯のときに、御紋さんが

「言い忘れてたけど、次のとこ『蒼穹の街』って言うらしいよ。」なんて言ってたっけ。

「だから、道も浮いてたんだ。」そんな感じで三谷さんが言ったのも覚えている。

 そのあとはみんなで普通に寝たんだった。で、いつも通り、僕が最初に目覚めたということですね。どうしようか。まだ起こさなくてもいいか。先にご飯づくりだ。

 そう思って色々と火をつけたりお皿を出したりしていると、三人が徐々に起きだした。

「おはよ。」椎名さんの声。まだパジャマ姿だ。椎名さんは起きたらすぐ水を飲みたいということが分かったのでコップに水を入れて渡す。

「あ、ありがと。」そう言って飲み干して、着替えに向かった。最後に着替え終わった御紋さんが食卓について朝ごはんは始まった。

「やっぱり、ここも看板崩れたから、鍵とかはないってことかな。」御紋さん。

「そうなんじゃない。」三谷さん。

「まあ、とりあえず進めばいいってことよね。」椎名さんがまとめる。

「そうですね。街っていうほどですし建物とかあるんですかね。」僕が言うと、

「どうだろうね。」三谷さん。

「じゃあ、確かめに行こうー。」勢いよくそう言って立ち上がったのは御紋さん。珍しく食べるのが早い。椎名さんと三谷さんからの視線に

「別に、今日は寝起きがよかったの。」と答えている。まあ、いいだろう。一緒にお皿をキッチンに持っていく。

 少しして、キッチンとかを全て片付けて、今考えたら黒魔術便利すぎる、出発の準備が整った。今日も先頭は御紋さんだ。矢印となった看板のところには古代ギリシャ風の石造りのアーチがある。ここからが『蒼穹の街』ということだろうか。雰囲気がある。

「すごいね。街ってだけあって、人の手が加わった感じがする。」三谷さんが率直な感想を漏らす。門をくぐると、そこは大きな広場だった。しかし、地面はなく、切り出された石が浮いているだけだ。今にも建物に使いそうなものだ。

「浮いてるよ。すごい。」御紋さん。

「幻想的ともいえるけどちょっと怖い。」椎名さん。

「不思議だね。」三谷さん。

「ええ。」口からは、ええなんていう言葉しか出なかったけれど言い訳をするなら目の前の光景が信じられなかったのだ。パルテノン神殿みたいな建物が至る所にある。それだけでもすごいのに、しかもそれらが浮いている。危うく思考停止するぐらいだ。

「でも、この石を踏んでけばいいんでしょ。」そう言いながら御紋さんは軽やかなステップで石を踏んでいく。そのたびに石が二センチぐらい沈むらしく

「ああ。」なんて声を上げながらも楽しそうに跳んでいる。けんけんぱみたいに遊んでるけど、踏み外したら、危ないと思う。昨日登って来た氷の山の高さぐらいにいるわけだから。そう思って躊躇してると、みんなに置いてかれる。

「ほら、パルクールかじったんなら、朝飯前でしょ。」三谷さんにそう言われ、なぜかa piece of cake と英訳が思い出されたが、たしかにパルクールだと思えばなんてことはない。トントントンっと御紋さんまで追いついた。左手には大きな柱が浮いている。屋根とくっつく部分に、カーブのかかった髪の毛みたいな装飾が施されてるから、これはイオニア式だな。そんな知識を掘り起こしていると

「織屋、はやいね。」と御紋さんに言われ、そしてまた追い抜かれた。

「待ってください。」僕も言いつつ駆け抜ける。こんなことを繰り返していると、

「二人待って~。」と後ろから声が聞こえて来た。椎名さんと三谷さんがハモっている。僕たちはそれを聞いて立ち止まる。でも、同じ石に立ち止まっていると沈みそうなので近くの石でステップを踏むことになる。二人でダンスを踊ってるみたいだな。なんて思っていると二人が追い付いてきた。

「こっち~。」御紋さんが手を振っている。僕は前を向く。もうそろそろこのゾーンも終わりなようだ。

 クァークァー。クァ―。前から烏の声が聞こえる。

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