第40話 6日目④
「でさあ。これから、どうするの。」御紋さんが切り出す。
「そうだね。どうなの、織屋。」三谷さんに訊かれる。
「そうですね。今ここは、『怨恨の炎』の終わりと次のセクションの始まりの間なんですよ。で、今はまだお昼なので、午後は移動できますよね。行ってみますか。」そう言うと、
「じゃあ、そうしよう。」御紋さんが言う。
「分かった。じゃ、食べ終えたらまたこの机とか片付けるね。」椎名さんが言う。
「よし、じゃあ、昼ご飯終わったら、あっちに看板があるので見に行きましょう。ごちそうさまでした。」僕は食べ終えた。席を立ち、軽く皿を流しに行く。
「やっぱ、速いよ、食べるの。」御紋さんが嘆く。
「ほら、私も食べ終わったよ。」椎名さんが言う。
「私もほら、これで終わり。」三谷さんも席を立つ。
こんな感じで食べ終わり、荷物も片付けて、あっちに向かう。
「ねぇ、あっちに行くんだよね。」三谷さんが再確認している。
「そうだよ。」椎名さんがあっさりと答える。
「そうだよね。」三谷さんがやはりと言う感じで椎名さんの言葉をかみしめている。
「もしかして、双葉ちゃん怖いの?」御紋さんがからかいに入っている。
「じゃあ、行くよ。」何のためらいもなく、御紋さんが渡っていく。
ガラガラガラ。ガラガラガラ。
年季を真正面から表すような音がする。まあ、予想通りと言えば予想通りだ。二人は、何番目がいいのかなと思って、橋の横で僕は待っている。
「私行くよ。」椎名さんが軽やかな足取りと声で橋を渡っていく。
「え、どうしよう。でも、最後は嫌だ。織屋待っててよ、そこで。」そう三谷さんに言われて、橋の横で待つ。少しして、音が一つになりまた重なり始めた。御紋さんが渡り終わって、三谷さんが渡り始めたのだろう。ある程度間隔があいたところで、渡ることにした。
ガラガラ。
僕によって、また音が鳴る。三谷さんがその音にびっくりしている。まあ、そんなことを気にしている場合でもない。よく見たら、景色もよい。後ろを向けば大きな山で、前は氷が見える。やはり、次は氷系のセクションのようだ。
「やっと来た。遅いよ。」御紋さんがあっけらかんとした様子で、言い放つ。
「ごめん。怖かったし。」三谷さんが言っている。
「では、あれが看板でしょう。見に行きますよ。」数十メートル先の看板を目指して、歩き出す。
「よく、考えたら、また看板って消えたりするのかもね。」この椎名さんの発言が、上手にフラグとなった。
僕たちは、粉々になって、というか、霜柱が砕けたようになって地面に散った看板を目の当たりにした。無論、形は矢印だ。もう四人全員、何も言わない。当然と言えば当然と言った感じだろう。少なからず僕はそうだ。少しして、三谷さんの言葉が静寂を破る。
「こうなったってことはさ、また、鍵とか気にせずに前に進めってことなのかな。」
「そうなりますね。」僕が返す。
「じゃあ、行こう。」元気のよい御紋さん。
「そういえば、みんな見えなかったかもしれないけど、私、前にいたから見えたけど、ここ『氷の大地』っていうらしいよ。」椎名さんの発言。
「じゃあ、気を取り直して、『氷の大地』にLet's go!」Ui said so.ついつい、英語になったが、おそらく他の二人も、発音いいなと思ったことだろう。目の前には銀世界。具体的に言えば大きい氷の板がある。もしかしたら、湖か何かが凍ったのかもしれない。そんなことは気にせず、三人が滑り出す。いや、仮にも僕たちは受験生だ。スケートを始めた。
「よく滑る。」御紋さんが言う。
「ね。滑りやすいね。」椎名さん。
「こけないようにしないとね。」三谷さん。三人ともなんやかんや言いながら、上手に滑る。まあ、受験生を脅かす言葉だらけだったが。僕はやったことないから、恐る恐るリンク、ではないが、に一歩を踏み出す。すぐに、腕を御紋さんに引っ張られる。彼女としては歓迎の意だろうが、僕にとっては恐怖の始まりでしかない。なんとかバランスは保ったが、前進も後進もできない。
端から見れば、明らかに季節外れのスケート客だろう。ここは、端から見る人もいない魔界なのだが。
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