第39話 6日目③
本当だ前には、陸がひらけている。眺めが良い。その先には一本のつり橋がある。吊り橋効果が、、、なんて考える。その甘い考えもすぐ打ち切られる。
「織屋、私たちはここに着いたけど、二人はどうだろう。ねぇ、どうする。ねぇ。」と御紋さんに声をかけられたからだ。そうだった、そうだった。どうしよう。
「そうですね。どうしましょう。おそらく、洞窟の途中に他に脇道はなかったでしょうし、出口もここだけっぽいですよね。周りを見る限り。だから、もう少ししたら、迂回してくるかもしれませんね。」
「そんな悠長なこと言ってられないかもしれないんだよ。どうする。」よしじゃあ、探しに行こうと言わないと収まらないような勢いだ。でも、ミイラ取りがミイラになるのは困る。
「探しに行きたいのはやまやまですが、二人もちゃんと来れるはずです。そこは信じて私たちはここでできることをしておきましょう。」そう言うと御紋さんは落ち着きを取り戻し、
「じゃあ、そうしよう。なにからやろう。」と言ってくれた。
「そうですね。もうお昼時かもしれません。何か作りましょう。」
「分かった。でも、もう材料ないよね。探してくるよ。」
「じゃあ、出口付近を見ておくのは必要なので、御紋さんはこの辺で食材調達お願いします。私はあっち側見てきます。」
「OK。」
「では。」この会話で、少年少女は散って行った。
少年の行く先には谷があり上には橋がある。その奥は、一面が銀世界だ。まだ、少年は奥の景色にまで気が回っていないようだが。
はぁ、はぁ。何もない洞窟に、少女の呼吸が聞こえる。さっきこの道に入ってから、この道はどんどん天井が低くなっていくが、この少女は身をかがめることなく、くじけずに歩いていく。勇ましささえ感じる。しかしこれは、不安と孤独で脆くなった自身の心を虚勢で守っているだけかもしれない。というか、おそらくそうだろう。それが普通だ。しかしこの少女は、あと二、三分で陽の光を見ることができる。良かったねとなぜか温かく見守る。
無言の少女の頭の中は、今フル回転なのだろう。今ここはどこか、あとどれくらいで着くのか、自分はどうなるのか、みんなはどうしてるか、なんて問題がぐるぐる渦を巻いている。しかし、結論は何回考えても一緒だった。結局は歩かなければならない。前か後ろで言えば前がいいだろう。じゃあ、前に進もうという感じでだ。この少女も自分の判断が正しかったことに気づき、自然の空気を吸えるだろう。
背の高い少女は上を見上げて、木の実を見定めている。どれが食べれそうか。どれが調理しやすそうか。結局後者の問いは、織屋ならなんとかなるかということで省かれたのだが。上を見ている少女は、空気の揺らぎを感じた。自分以外の命を持つ者による揺らぎを。
「はぁはぁはぁはぁ。ここは、どこ。」小さな少女、三谷 双葉が言葉を発す。御紋 初は
「ここは、魔界。」と平然と答える。そして、
「えっ。」と言った。双方とも、お互いがコミュニケーションを知らずのうちに取ってたことに気づいた。そして、文字通り、手を取って喜んだ。
「良かった、双葉ちゃん。あっちに、織屋はいる。」
「うん。ほんとどうなるかと思ったよ。」
「あっ、二人がいる。良かった~。」三つ目の声がする。椎名 京華だ。
「織屋ー。木の実もとれたし、二人も来たよ。」いきなり大きな声を出す少女。他の二人はそのいつも通りに安堵する。
「良かった。これで、全員集まりましたね。とりあえず、ご飯にして、この後の方針を話しますね。えっと。」僕が言う。
「分かった、椅子ね。はいっ。」黒魔女が黒魔術で出す。そういえば、迷ったときに黒魔術は使わなかったのだろうか。
少しして、食卓には昼ご飯が並んだ。おいしそうだ。自画自賛になるが。みんな、無言になった。少しして、会話が始まった。
「織屋、この後は。」御紋さん。
「あっちが、次のセクションぽいです。まだ看板は読んでませんが。」僕。ここから鍵についての話が続いていく。やはり四人は安心する。
洞窟の出口の近くの丘に四人の人が見える。非常に楽しそうな雰囲気だ。次に彼らはここに来るのだろうか。
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