第27話 4日目⑥
「いただきまーす。」先陣を切る御紋さん。ぼくらも後に続く。
「海の中どんな感じだった?」椎名さんが話を切り出す。
「やっぱり、とてもきれいでしたよ。」僕が答える。
「うん。深くまで行けば、魚たちもいっぱいいたし。」御紋さんも言う。
「一緒に来ればよかったのに。」たたみかけている。
「潜水艦つくったらから、私たちも海の中行けるね。たのしみ。」三谷さんが言う。
「うん。ちゃんとつくったから、大丈夫だと思う。」椎名さんも言う。たのしみという気持ちがにじみ出る。
「黒魔術つかったとはいえ、潜水艦つくるってすごいですよね。動くかは確認したんですか。」僕が言うと、
「まだだから、とりあえず海に入れてみるところからかな。」椎名さんが答える。
「どうやって、入れましょうか。ていうか、動力は何なんですか。」僕が訊くと、
「普通はエンジンみたいなんだけど、今回は椎名さんの魔力をためとけば上手く行けそう。」と三谷さんの返事。
「海に入れるのは、木を敷いてころころすればいいんじゃない。」御紋さん。
「そうですね。」僕が言う。
「じゃあ、その材料作りからスタートだね。」椎名さんが言う。
「さっきまでの端材が端にまとめてあるから、それ使えるかも。」三谷さんの提案。
「じゃあ、そうしましょう。そのあとは、、、。」
「海に入るんでしょ。全員で行きますか。」僕の問いに、
「私は入りたい。潜水艦。」と反応が素早い御紋さん。
「私たちはもちろん潜水艦に乗るよ。操縦もあるし。ね、双葉ちゃん。」椎名さんが言う。
「うん。」と三谷さん。
「じゃあ、わたしは万が一に備えて泳いどきましょうか。また水着姿で。」僕が言うと、
「ごめん、織屋、お願いできる?」と椎名さん。
「大丈夫ですよ。そうしましょう。じゃあ、わたしはとりあえず、料理の片づけしますね。」
「私も食べ終わったから、転がす準備するね。」三谷さんが立ち上がる。
「よし、私も。」椎名さんもお皿を持って立ち上がる。お皿、よろしく、と言って。
「置いてかないで~。」いつもの展開だ。
「御紋さん、落ち着いて食べてていいですよ。」僕の発言もいつもどおり。お皿を洗って、かまどの火を消して、鍋を洗って、そんなことをしていると、お皿を持った御紋さんが僕に渡して、二人のところへ走っていった。
「えー、すごい。完成度高い。」御紋さんの声が聞こえる。
「でしょ。・・・・。」椎名さんが誇らしく細かいことを語っているのは分かった。聞き取れなかったが。こっちの片づけも終わったし、とりあえずあっち行ってみるか。
「もう出せますか。」ちょっとカッコつけて「出す」なんて言ってみると、
「はい、出せます。」と椎名さんからノリノリの声が返ってきた。機嫌がいいのだろう。よく考えたら、今はみんなで、端材を並べてるけど、三人が乗ったら、海に入れる担当は僕だけなんじゃないだろうか。魔力は温存しておきたいだろうし。僕の考えを読み取ったのか、
「織屋、海に入れるまではよろしくね。とりあえず、出たら左に行って時計回りに旋回して戻ってくるから。地図っていうかナビっていうかもあるし、大丈夫だと思う。じゃあ。」そう言った椎名さんは大声で二人を呼んで、潜水艦に入った。そうかやっぱり僕が押すのか。
「織屋よろしく。」
「織屋くん、よろしく。」くの余韻を掻き消すようにドアが勢いよく閉まった。もうちょっとソフトなつくりでも、と思ったがここから水が入ったりでもしたら大変なのであろう。一人でうなずきながら、後ろに回る。
重い。潜水艦はそんなに大きくないし、ころもあるから、軽くはなっているのだろう。でも人、三人が乗っているのだ。ある程度は重くなるだろう。こんなこと言ったら絶対怒られるなぁ、多分一番怒るのは椎名さんかな、なんて思っていたらいきなり軽くなった。水に入ったのだ。ちゃんとつくってある。そう感心したが、これで役目は終わりではない。時計回りに回るなら左側が外側。そう思い、そちらで海に入る。
目の前にはまたしても鮮やかな海。きれいだ。中の三人もそう思ってるかな。なんて思うと、またクマノミと目が合った。
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