第23話 4日目②

「えーと、大変言いにくいといえば言いにくいんですけど、今まで少しずつ貯蓄してきた食糧が尽きました。これからまたとっていなかいといけません。」僕の一言で、朝ごはんが始まった。反応は三者三様だ。文字通り。

「じゃあ、海でとればいいじゃん。近いし。」このポジティブと言うかアクティブと言うかっていう雰囲気は御紋さん。

「いったん鍵探しやめて、食糧とろう。」これは、椎名さん。リアリスト。

「二班にまた分かれる?」これは、三谷さん。もしかしたら、海に入りたくないのかもしれない。

「えー、二班?泳ぎたくないだけでしょ。」思ったことをすぐいうのも、御紋さん。

「二班なら私は陸上班ね。」これは椎名さん。やはり、泳ぎたくないのだろう。

「だから。」御紋さんがまた何か言おうとしている。

「まあ、まあ。とりあえず食べましょ。そのあとで方針は決定しましょう。」僕がそう言って、またみんなで食べ始める。これから、活発に動くことが予想されるので、分量は少なめだ。食材があまり残ってなかった、というのもあるが。少なめということもあってか、食べ終わるのは早めだ。食卓を拭いた後、みんなを呼ぶ。

「じゃあ、これからどうしますか。とりあえず、海に、というか、『忘却の海』に入ろうと思うんですけど。」僕が言う。

「でも、私泳げない。」椎名さんと三谷さんが言う。また御紋さんが何か言い始めそうなので、先に言葉を発した。

「そのことなんですけど、私みんなが起きる前に海に軽く入ったんですよ。そんなに流れもきつくなかったし、そこそこ安全だと思います。それに、私と御紋さんはまあ、泳げますし。どうですか。」

「そうだよ。なんかあったら、私たちが何とかするよ。ね。」御紋さんが言う。

「そこまで、言うなら。ね、京華ちゃん。」三谷さんが先に決意した。ならば、という感じで、椎名さんもうなずいた。

「やったー。じゃ、みんなで海に入ろう。ほら、黒魔女、水着出して。」御紋さんが言う。

「分かったよ。どんなデザインが良い?」割と椎名さんも乗り気だ。ここから十分ぐらいで水着ができた。僕の水着は三谷さんに辞書で見てもらい椎名さんに作ってもらった。色々あって水着はビキニというのだろうか。スクール水着の様な感じではなかった。はじめは、椎名さんは抵抗があったようだが、着てみると意外にもあり、ということになったらしい。僕に見られるのはまだ恥ずかしいようだが。

「冷たい。でも気持ちいい。」御紋さんが楽しそうにはしゃぐ。

「初ちゃん、やめて。」そんなこと言いながら、椎名さんが水をかけている。

「京華ちゃん、ほら。」なんて言いながら三谷さんも楽しそうだ。まあ、僕はそれを横目にとりあえず海に潜ろう。いなくなったなんて騒がれても困るので、近くにいた椎名さんに、ちょっと潜ってきますね、と声をかけて潜った。

 広がるのは青い海。透き通ってるし幻想的だ。陳腐な言葉しか出てこないけど、作り物かと思うぐらい綺麗だ。もしかしたらホントに作り物かもしれないが。

「初ちゃん、織屋行っちゃったよ。どうする。ねぇ。」焦りだす、黒魔女。水着のデザインも若干ダークな感じだ。

「そうだよ、初ちゃん。」焦りが伝播したのか、いつもは冷静な辞書を置いてきた全知全能の持ち主も修道女に言葉をかける。

「だから、まず、織屋は結構泳げるから、織屋自身は大丈夫。で次に私たちが置いてかれてることだけど、私は追いかけたい。でも、二人はどう?」リーダーシップをとる、御紋 初。珍しい光景だ。

「たぶん、今は織屋も下見程度だと思うし、泳げないって言ってる人に無理やり泳がせたりはしないと思う。それに、深いところまで行くのは難しいし。でも、私は追いかける。で、二人は潜水艦かそんな感じのやつ作っといたらいいんじゃない。じゃ。」颯爽と消える、修道女。

「だって、行っちゃったよ、初ちゃん。つくろっか。潜る系のもの。」三谷さん。

「分かった。砂浜行こっか。」

 砂浜に、二人の少女が上がる。海には、少年と少女がいる。

 辞書をめくる音が潮騒とともに流れる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る