第22話 4日目①
まぶたが開く。開いたら起きなくてはならないとわかっていても。青空が見える。同時に海が見える。やっぱり、海の近くだからか。寝ぼけながらもそんなことを考える。そして、自らの過ちに気づく。果たして何が誤りだ。今見えたものが海ではない。いや、潮の流れも感じられるれっきとした海だ。上に広がるのが、空でない。いや、この澄み切った青に白い雲。空に他ならない。では、いま僕は起きた、という夢をまだ見ている。それなら起きたくない。でも、このリアルな雰囲気、現実だ。では何がおかしいのだ。ベッドに横たわっている自分が目を開けただけで、空と海が同時に見える。いつもあおむけに寝る僕だとありえない。頭が重い。なぜだ。まだ目覚め切っていないから。よく眠れていないから。どちらも不正解だ。こんなに頭が働くということは、目覚め切っているし、よく眠れた証拠だ。よって、頭が重い理由はただ一つ。今、僕は、ベッドに横たわっていない。そう思ってみると、自分は食卓に突っ伏して寝ていたようだ。なぜだ。昨晩のことを思い出す。私服に着替えながら。
僕のおやすみへの返事が二人分しか返ってこなかった。返してないのは御紋さん。今、食卓で寝ているのだから当然だ。椎名さんと三谷さんは御紋さんを起こそうとはしないが、皿洗いでもしていたらその音で起きるだろう。そう思って、お皿を洗う。水を使って軽く洗い、汚れを落とし、最後に洗う。この水は、きれいにした海水だが、いまはそのことは関係ない。この音でも御紋さんは起きない。一方で二人はパジャマに着替えて、ベッドにもぐりこんでいる。心の中でもう一度おやすみを言う。こうなったら、僕が起こすしかない。その決心もつゆ知らず、御紋さんは気持ちよさそうに寝る。できれば睡眠を邪魔したくないので、最後の最後まで起こさない。とりあえずパジャマに着替える。着替え終わってふと目をやっても、まだ起きていない。あんなところで寝たら寝つきも悪いし、寒い。でも布団を持ってくるのも面倒だ。仕方ない。
「御紋さん。ベッドで寝てください。パジャマはベッドにありますよ。」
「ん。」眠そうな声。
「ベッドで寝てください。」
「わかった。ありがとう、京華ちゃん。」勘違いされている。とりあえず否定だ。
「織屋ですよ。」
「織屋はばんごはんつくってくれた。ほら、ベッドに連れてって。」そういわれても、と困惑していると、
「何とかおんぶできるでしょ。ほら早く。」と急かされた。仕方ない。御紋さんを立たせて、おんぶする。なんとか、梯子の下まで来た。
「はい、じゃあ、ベッドに着替えありますから。あとは自分で上ってください。」そういうと、
「うん。ありがとう。」と言われた。じゃあ、食卓でも拭くか。そう思い、布巾をしぼり、食卓へ向かう。食卓に向かって座り、拭き始める。円形って意外に拭きづらいんだよな。
そんなことを思ったのまでは覚えている。そのあとの記憶がない。寝落ちしたのだろう。だから布巾があったのか。そうこうしていると、みんなが起きて来た。珍しく御紋さんが三人の中で一番だ。
「あれ、織屋早いね。」御紋さんに言われる。
「ええ、まあ。」そう答えると、
「でも、織屋昨日、机で寝てたでしょ。だめだよ、ベッドで寝なきゃ。」え、御紋さんは僕が寝るところを見てたの。でも、御紋さんをベッドに連れて行って、そのあとだったんだけど。まあ、いいや。
「そうですね。御紋さんも机に突っ伏してましたけど。」そういうと、
「それは、京華ちゃんが起こしてくれたの。それで、着替えてたら、織屋が寝てた。あっ、京華ちゃんおはよう。」椎名さんが起きたようだ。
「二人とも、おはよう。」まだ眠そうな椎名さんに御紋さんがお礼を言う。
「昨日の晩ありがとうね。ベッドに連れてってくれて。織屋みたいに机で寝るとこだった。」椎名さんは何が何だかわかってない。昨晩、私はベッドで寝ただけのはずだが、と混乱している。僕がちらっと見ると、うなずいて、
「いや、別に。どういたしまして。」と言っている。察しがいい。
「あっみんな、おはよう。」三谷さんの声が聞こえる。
一日が始まる。
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