第21話 3日目⑦

目の前に海が広がる。大きな青い海だ。夕日が沈み切った後でもその壮大さがよく分かる。

「あー、海っていいね。」御紋さんが素直な感想を述べる。

「そうだね。」三谷さんが相槌を打つ。

「なんか、心がすっきりするね。」椎名さんが言う。

「そうですね。これからどうしましょう。とりあえず、ご飯にしましょうか。」もう、夕ご飯がぴったりな時間だ。

「そうだね。でも、次のミッションも確認しときたいね。」御紋さん。

「あれじゃない。看板あるし。」椎名さんが指で遠くを指した途端、御紋さんが走り出す。すぐに椎名さんが追いかける。三谷さんも、えっと言いながらも付いていく。じゃあ、僕も付いていく。

「はぁはぁ。」椎名さんが息を切らしている。三谷さんも同じくだ。御紋さんは全然大丈夫そうだ。僕はまだ何とか大丈夫。

「ここに条件が書いてあるよ。っていうか、今回は単純に鍵探しみたい。」と御紋さん。

「えっ、じゃあ、簡単そうだね。」三谷さんがほっとしたように言う。

「それって、どこでやるの。」椎名さん。

「海の中に宝箱がある。その中にある。って書いてありますね。」僕が言う。その瞬間、椎名さんと三谷さんから溜め息が漏れる。

「私、泳げないんだよね。」これは三谷さん。

「私も25メートルが限度かな。」これは椎名さん。

「私は結構泳げるよ。」これが御紋さん。

「私もまあ、泳げますね。」これが僕。

「え、でも黒魔術でなんとかなるかな。」黒魔女が言う。

「私の辞書に潜水艦の簡単なつくり方とか載ってないかな。」辞書を開く、全知全能の持ち主。

「別に、普通に泳げばいいじゃん。」御紋さんが悪気もなく言う。

「それが嫌なの。できないし。」二人の声が重なる。

「はいはい。まあ、ミッションについての話は、晩ご飯でも食べながらにしましょう。いまは、拠点の場所決めますよ。木の下でいいですかね。」

「うん。雨も防げそうだし、あの辺、松の木いっぱいあるしね。」御紋さんが言う。

「私は何でもいいよ。」椎名さん。

「私も。」三谷さん。二人はそれどころではなさそうだ。とりあえず四人で歩き始める。

教会の魔物たちから食材を少しもらったので、彼らに作ったのと同じようなものを作った。また、食材の調達が必要だ。海で何かとれるかしら。

「はい、晩ご飯にしますよ。」御紋さんはかろうじて手伝ってくれているが二人は辞書にくぎ付けだ。

「ちょっと待って。」椎名さんが言う。もう、あったかいうちに食べますよ、とか言おうとしたら、御紋さんがこんな機会めったにないとでもいうように二人に注意する。

「ほら、織屋が作ってくれたんだから、食べるよ。二人とも。」

「はーい。」三谷さん。

「まさか、初ちゃんに注意される時が来るとは。」毒を少し吐いたのは椎名さん。そんなことを言いながらも、砂浜の上に置いたブルーシートもどきの上の食卓を四人で囲む。やはりこの時は幸せだ。

「織屋、今日のもおいしい。」御紋さん。うれしい。

「そうだね。」椎名さん。

「そういえば、海から魚とか調達できるかもね。」三谷さん。

「そうですよね。明日の朝ぐらいに見て来ましょうか。」僕が言う。

「冷たくない?」これは椎名さん。

「まあ、夏だから太陽が出てしまえば大丈夫でしょう。」僕が言う。

「そうかもね。」三谷さん。

「でもさあ、この広い海から宝箱、多分海底に沈んでると思うけど、を探すのって大変じゃない?範囲も広いし、結構深さ有りそうだよね。面倒くさいし、身体的にもきついかも。」これは、御紋さん。

「そうですね。」僕。

「やっぱり、素潜りは危険かな。」ほっとしたように椎名さんと三谷さん。

「なんかつくりますか。」僕。

「ねむいー。」唐突に御紋さん。あなたが言いだしたことで話してるのに。誰もがそう思っただろうが、その言葉を飲み込んで、

「じゃあ、また、早く起きた人ががみんなを起こすシステムで行こうか。」椎名さん。

「いいよー。」半ば投げやりな、御紋さん。たしかにこの人が一番に起きることは考えられにくい。

「私もいいよ。」三谷さん。あとは、僕で満場一致だな。

「じゃあ、そうしましょう。お皿片付けますね。みなさん、おやすみなさい。」僕が言う。返事は二人分しか返ってこない。御紋さんは突っ伏して寝ている。

夜空の下で、お皿を洗う。

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