第20話 3日目⑥

魔物たちの顔に雲がかかっていた。というか曇っていた理由はあの封筒にあったらしい。唯一文字が読めるアルミの子が魔物たちに聞かせてあげている。そのあとに僕たちにも教えてくれた。

「この手紙は、レナさんからだったんだ。そして、マリット教会が鐘が鳴らされた途端に崩れたのも、レナさんが仕組んでいたらしい。」

「なんで、わざわざ自分がつかえていた教会を崩すなんてことをしたの。」三谷さんが言う。

「それにどうやって仕組んだの。」これは椎名さん。

「まあ、落ち着いて。まずこれはレミさんの魔法によって仕組まれたことらしい。レナさんがレミさんにお願いしたという。自分が魔王に呼ばれたときに。レナさんは自分が捕らえられたあと、この教会も魔王に支配されると考えた。そして、鐘を鳴らすというのは教会の中心的事象だから、魔王たちに行われてはならない。もし、自分が戻れてもそのときには教会は魔王により支配され、腐敗していると考えた。それなら、腐敗した教会は一度取り壊し新しくつくり直した方がいい。あなたたちがこれを読んでいるということは教会は壊れたけど、私はそこにいないということでしょう。無責任で申し訳ないが教会の再建を文字通りにも、フェミル村にとってもお願いします、と書いてある。」アルミの子が読んでくれた。

「へぇ。じゃあ、壊れたのは私のせいじゃなかったんだ。でも、私にも責任はあるよね。」御紋さんが言う。

「そうだよね。教会をつくり直すの手伝うよ。」三谷さんが言う。

「そうですね。人が多い方がはかどるでしょうし。」僕が言う。

「そうと決まったらやろう。京華ちゃんは魔法使えるしね。」御紋さんが言う。

「うん。まずどうしたらいい?」椎名さんがアルミの子に訊く。

「まず、このがれきはもう使えない。新しい素材は僕たちで作り出せばなんとかなるよ。もう準備し始めてる。」後ろにはアルミの大きな塊や木材がいっぱいある。

かさかさ。とんとん。ふるふる。ぱわわ。久々にこの音を聞いた。楽しげな雰囲気だ。椎名さんが、アルミの子に指示を仰いでいる。そして、どんどんパーツを動かしてる。よく見たらパーツが浮いている。やはり黒魔術はすごい。御紋さんは魔物たちの傷を治している。三谷さんは教会の建設の仕方を辞書で調べている。設計図を出している。はぁ、僕は何をしようかなと思いながら、がれきを端に寄せる。そんなとき、アルミの子が話しかけて来た。

「織屋さんは僕たちの夕ご飯をつくっといてもらっていいですか。そうしたら、夜通し作業できるし。あともう少しで、教会の土台ができます。そこまでに作ってもらえますか。土台ができれば僕たちだけで地道につくれるんで。まだ、夜には時間があります。次の目的地は『忘却の海』です。海辺まで行けば寝泊まりもここよりはしやすいですし、夕方に歩けば到着しますよ。じゃ、たっぷりお願いします。」アルミの子の言葉が頼もしい。これからの予定も勝手に決められたが、悪いプランじゃなさそうだ。とりあえず料理を作ろう。食材は教会の倉庫にある程度あった。まず、野菜を切って、お湯を沸かしてゆでて、その間に肉を炒めて。10分ぐらいだろうか、頑張った。久しぶりに料理を集中して作った。いつの間にか、教会の土台ができている。

「織屋、もうここまでで手伝い良いって。出発するよ。」御紋さんの声が聞こえる。椎名さんと三谷さんも荷造りを終わっている。

慌ただしかったがお別れの時が来た。夕日がきれいだ。

「教会づくりの手伝いまでありがとうございました。」アルミの子が丁寧に述べる。

「いや、こっちも楽しかったよ。ありがとうね。」椎名さんがお礼を述べる。もうすっかり仲良しだ。

「では。」アルミの子の声に続いて、魔物の鳴き声が聞こえる。

とんとんとん。ふるふるふる。ドルドルドル。ふぁぐふぁぐ。やっぱりこの声は楽しげだ。

僕たちは夕日の方にある『忘却の海』に向かって歩き出す。

「夕日がまぶしい。」御紋さんの声が赤い空に消えていく。僕たちの笑い声が響く。マリット教会が早く戻ればいいな。そう思ってまた歩を進める。

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