第24話 4日目③
目の前に青の海が広がる。というか、潜っているのだけれど。生態系も豊かなようだ。魚たちもたくさん泳いでいるし、サンゴ礁もきれいだ。そろそろ、上がるとしよう。たしか後ろの方に行けば帰れるはずだ。そう思って、周りを見渡す。やばい。どっちが砂浜か分からない。とりあえず、水面に出て、方角を確認するとしよう。どんどん上に上がる。われながら、長く息が持ったものだ。誰かがこっちに向かってきた。人間っぽいが、泳ぎはドルフィンキックだからか、人魚っぽい雰囲気もある。と思ったら、上を指さしている。やはり人間のようだ。上に出よう。
太陽がまぶしい。周りを見ていると、さっきの人が上がってきた。どうやら、御紋さんだったようだ。
「織屋、帰るよ。ほら、こっち。」そう言って、導いてくれる。泳いでついていく。
「二人は結局どうしたんですか。」そう訊くと
「砂浜で潜水艦かなんかつくってもらってる。やっぱり泳げないみたい。」
「まあ、思ったより深いですし、大変ですかね。」
「うん、そうだよね。でも、潜水艦とかうまくいくかな。」
「私もよく分かんないですし、二人の様子を見てみないことには始まらないですね。」
「うん。じゃあ、ペース上げよっか。」この御紋さんの一言で、二人のペースはより速くなった。よく考えたら、こんな会話をしながら普通に泳げる御紋さんはやはり泳げる方なのであろう。おっと、置いてかれそうになる。御紋さんがこっちを振り返る。はいはい、いま行きますよ。
そのころ黒魔女と全知全能の持ち主は辞書をめくっていた。「潜水艦」の項を見たが、つくるのが大変そう。「ヨット」とか簡単につくれそうなものは使えそうにない。どうしたらいいかと迷っていた。
「潜水艦つくれたら、便利だと思うけどね。」黒魔女が言う。
「大変そうだよね。やっぱり、水とか入ってきたら困るし。緻密さが要りそう。」返すのは、水着の上からいつものポンチョを羽織る全知全能の持ち主。
「まっ、とりあえず二人の意見も聞かなきゃね。」そう言葉を続ける。
「そろそろ帰ってくるかな。あっ、そうだったら、水着姿見られちゃうよね。」
「べつに良いじゃん。さっきもそうだったじゃん。」
「あれは、海の中だったからだからよかったけど。」そんな会話をしていたら、水音がしてきた。二人が帰ってきたのだ。
「帰ってきたよー。寂しかった?」御紋さんが元気よく言う。やっぱりさっきの泳ぎは全然余裕だったようだ。
「ん、まあ、別に。」急にツンデレ属性が出て来る椎名さん。結局水着姿だ。
「で、どうなりました。潜水艦とか。」僕がそう言うと、二人から返事が来た。
「潜水艦ができればベストなんだけど。」椎名さんが言う。三谷さんが続ける。
「つくるのが難しいんだよね。細かい加工とかもいるし。中学生四人がパッと作るのは難しいかも。」
「たしかに。じゃあ、簡単なものになる感じかな。」御紋さんが言う。僕にはピンと来るものがあった。
「さっき、三谷さん中学生がつくるのは、、、って言いましたよね。でも、今のあなたたちは、ただの中学生ではないですよね。」
「なるほど。」三人の言葉が重なる。三人は自分にできることを確かめ合った。が、御紋さんは潜水艦づくりに技術的に貢献できないことが分かったようだ。だから、
「でも、御紋さん、普通にというか普通以上に泳げるじゃないですか。それだけで十分ですよ。」と僕が言うと、励ますつもりだったのに、
「でも、それは織屋もできる。」となぜか、張り合われた。まあ、いいか。かわいいし。砂浜で辞書を熱心にのぞき込んでいる二人に目を向ける。というか、さっそく潜水艦に適しているチタンの塊を出している。
「椎名さんって、そんな簡単に、金属とか出せるんでしたっけ。」そう聞くと、うれしそうに、
「マリット教会の魔物たちから、ちょっとコツを教えてもらったんだよね。ほら、そっち飛んでくるよ。チタンの塊の三つ目。」そう言われて避ける。二メートルぐらいの立方体が飛んできた。自分が活躍できると知って、うれしいのだろう。上機嫌で材料を出す椎名さん。
砂浜が金属で埋まる。
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