第16話 3日目②

 目の前にあるのはマリット教会。グリムさんもこのフェミル村の中心だったと言っていたものだ。そう分かっていても心が受け付けない。心に入ってこない。形は教会の形だが何か雰囲気が違う。神聖な感じがあまりしない。何か別の力を感じる。それを三人もいや、二人か、も感じ取ったんだろうか。会話が始まる。

「やっぱり邪悪な雰囲気がする。なんか気持ち悪い。」御紋さんが言う。

「ようやくわかったこの雰囲気。たしかに気持ち悪い。まったく心が清められない。」三谷さんも冷静に言う。

「私も感じます。気分が悪くなりそうです。」僕も言う。椎名さんはまだ寝ている。背中で。

「これか。思ったより高いね。」御紋さん。

「三階建てぐらいかな。」三谷さん。僕も上を向こうとしたけど、背中の椎名さんを思い出しやめておく。

「でも、普通の教会っぽいつくりですよね。」僕も言う。

「うん。辞書によると、昔から一般的な教会のつくりだね。」三谷さんの解説。

「中に入って、ちょっと見て来るね。」御紋さんがパッと中に入っていく。御紋さんの行動はいつも唐突だが今回もいつも通り驚いた。三谷さんが慌ててついていく。

「織屋くん。京華ちゃん、見てて。私、初ちゃんについていく。」三谷さんが言い残す。

「あっ、はい。気を付けて。危なかったら、すぐ帰ってきてくださいね。」僕も言う。次の時にはもう三谷さんの姿は見えない。教会の前の花壇に椎名さんを座らせる。ついでにちょっと距離を開けて僕も座る。椎名さんよく眠っている。やはり夜寝れなかったんだろうか。よほど疲れていたんだろう。寝顔もかわいい。椎名さんを見守りながらも塔を見上げる。あの上の部分に鐘があるんだろう。あれを鳴らすのがミッションだったはずだ。普通に考えればそんなに難しくはないだろう。気味が悪いだけだ。ちょっと怖い。まあ、御紋さんのあの元気の良さがあればすぐに終わるのではないだろうか。他力本願だが頑張ってほしい。椎名さんがうつらうつらしている。浅い睡眠に入ったのだろうか。寝言も聞こえる。

「織屋、あぶない。前見て。」たしかにそう聞こえた。しかし、前に障害物も僕の安全を脅かすものも一つもない。何が危ないんだろう。聞き間違えだったのかな。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」荒い呼吸の音が聞こえる。前方から。御紋さんの声だ。心配もしたが御紋さんが息切れするなんて何事だろう。

「初ちゃん。速いよ。」三谷さんがそう言いながら、教会の階段を悠々と下りて来る。まったく息切れなどはしてない。

「初ちゃんどうしたの。急に走ったりして。置いてかないでよ。」

「ごめんね。いきなり息が苦しくなって。血の巡りも悪い気がする。」

「え、大丈夫?とりあえずそこに座ったら。」僕の隣を指さす。この騒ぎを聞いて椎名さんが起きる。

「どうしたの。初ちゃんが息切れなんてして。」

「あっ、御紋さんと三谷さんが教会の中に入ってくれたんだけど、御紋さんが気分が悪くなって走って下りてきて、それを三谷さんが歩いて追いかけて来たの。」僕がとりあえず説明する。

「うん。分かった。なるほど。初ちゃんは気分が悪くなって、双葉ちゃんは大丈夫だったの。」椎名さんが訊く。

「うん。不思議だよね。私の方が体力もないのに。」三谷さんが答える。

「それってもしかしてさぁ、、、。」椎名さんが言い始める。何を言わんとしてるのか僕にも分かった。

「この『闇の教会』の負のパワーが関係してるんじゃない。」予想通りだ。そういうことなのかもしれない。

「それって、わたしは、『修道女』のジョブを身につけているから、修道女の清らかな部分に抵抗する負のパワー、闇の力により気分が悪くなったってこと?」

「逆に私の『全知全能の持ち主』は特に関係がないから影響もないってこと?」

「そうじゃない。」椎名さんが言う。

「僕もそう思います。」僕も言う。結局四人で花壇に座っている。このミッションは簡単かも、そう思ったのが信じられない。やはり魔界は一筋縄ではいかない。

 空を雲が覆い始める。

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