第13話 2日目⑦

「はい。できましたよ。」今日は和食だ。一汁三菜を何とか頑張った。お皿を食卓に運ぶ。三人も手伝ってくれる。御紋さんが再び立とうとする小人をなだめている。座られてて下さい、と。

「いただきます。」今日はしゃがれた、か細い声も混ざっている。やはり、食卓を囲む時間は良いものだ。

「おいしい。」御紋さんがいう。

「定番のおいしさだね。」椎名さんもほめてくれる。

「ああ、おいしいな。こんな料理初めて食べたよ。」小人もいう。

「今日は肉じゃが風にしてみました。」僕も言う。

「材料も上手にやりくりしたね。」三谷さんも言う。思い出したように、小人が箸を置く。

「そういえば、あんたたちに話をするんだったな。なんの話だったかな。」

「レナさんって方の話でしたね。」御紋さんが言う。

「ああ、そうじゃった。良い人だったんだよ。この村の中心の教会を治めている修道女の方でな、いわば、この村の中心人物だったんだよ。」小人が話し出す。

「ああ、なるほど。」僕が相槌を打つ。

「この村は、魔界の一部ではあるが魔王の統治下ではなかったんだよ。特別区みたいなもんだな。」小人が続ける。

「ああ。でもなんでさっきから過去形なんですか。」三谷さんの鋭い指摘。気づかなかった。たしかにそうだ。良い人だった、中心人物だった、統治下になかった、過去形が続いている。

「ああ、その通りだ。まあ、先を急ぐな。」小人がなだめるように言った。

「レナさんは、これはこれは素晴らしい修道女だった。お手本とも言えるな。どんな人も受け入れ、平等に接し、教会で子どもたちと共に暮らしておった。さらに、レナさんの人柄もあって、村の人たちも教会を、教会の子供たちを差別せず普通に暮らしておったんだ。あの頃はすこし不便だったが、思い返せばよかったな。いきなりだがな、レナさんにはレミさんと言う妹さんがおったんだ。この妹さんも優しくてよい方でな、さすがレナさんの妹と言う感じだった。まあ、レミさんは修道女にはならなかった。理由はいろいろあったらしいが、一番大きいのは、お姉ちゃんとは別のアプローチで、この村を良くしたいということだったらしい。そして、選んだ道は、魔女やった。一生懸命勉強して、立派な魔女になった。それでも、心優しい部分は変わらず、レナさんと二人で頑張っておった。そういえば、わしがこうして人の言葉、今回はあなたたちに合わせた日本語、を話せるのも、レミさんの魔法のおかげなんだよ。この二人の頑張りでどんどん、この村は、活性化していった。商業の村としても、発展していった。それも、レナさんが人々を助け、レミさんがその人たちが活躍できる場を作っていったからだからだな。レミさんの魔力は、もう、一人の少女が独学で頑張ったという程度のものではないぐらいの強大なものだった。しかし、レミさんはその魔力を決して悪用するような方ではなかった。それはこのフェミル村の全員が分かっておった。しかし、それは村だけの話であった。もう、なんとなく、展開がわかるかもな。魔王はレミさんのことを嫌っておったんだよ。はじめは教会の小娘が魔法をちょっと覚えてお姉ちゃんと頑張ってる、ぐらいに思っておったんだろう。しかし、レミさんは魔力を強めた。これが、魔王は気に食わなかった。もしかしたら、人望もあるレミさんが強い魔力をも持ったら、自分の地位も危ないと思ったのだろう。無論、レミさんにそんな気はなかったのだがな。自分の座が危ないと思ったら止まらない魔王のことだ。そのあとの動きは、敬服するほど素早かった。まず、部下を使い、抵抗できないレナさんを誘拐する。それを人質にレミさんを呼ぶ。お前が、来れば姉は返すと言って。レミさんは姉の為ならと、生きて魔王の下から帰って来れるとは思ってなかっただろうが、城に出向いた。魔王のことだ。レミさんが城に行っても二人とも帰ってこなかった。おそらくそれは、、、。」小人が話し続け、勢いを失った。当時のことを思い出したのだろう。

「グリムさん。グリムさん。なんか、おら、気分悪い。」そう言って別の小人らしき人が、戸を開けた。

 まだまだ、夜は続きそうだ。

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