第4話 1日目④

『さまよえる森』明らかに木製じゃないけど木製を模したかのような看板にそうあったので、四人は若干、拍子抜けした。森への入り口も、明らかに人の手が加わったようだ。

「なんか思ってたより、魔界っぽくない。」誰よりも早くみんなの思いを御紋さんが代弁した。他の三人の無言の同意があった後、三谷さんが

「『さまよえる森』の下に小さい文字でなんか書いてある。」と言った。

「うん。『この森の中に全身が白く耳だけ黒いうさぎが一匹だけいる。そのうさぎが、鍵を持っている。』って書いてある。」と僕が言うと、

「そのウサギを探せってことね。」と椎名さんが返す。

「じゃあ、行こう。」御紋さんが元気よく、一歩目を踏み出すが、三人で引き留める。

「初ちゃん、もう陽も落ちて来たし、今日行くのはやめようよ。」と椎名さん。

「暗い森は危ないしね。」と三谷さん。

「今日のところはこれで終わりにしましょう。」と僕。

「うん。じゃあ、そうしよう。休もう。」と御紋さんがこっちに戻ってくる。

「じゃあ、晩ご飯ですかね、そろそろ。」と僕が言うと、

「私たち昼ごはん食べてないよね。」と椎名さんが言う。

「たしかに。」と三谷さん。

「忘れてた。けど、不思議とおなかは空かなかったね。」と御紋さん。たしかに、朝ここに来てから、いま日が沈みかけているのだから、10時間ぐらいは経っていても、おかしくはない。でも、おなかは空かない。

「もしかしたら、この世界、魔界では、一日が24時間ではないのかもしれませんね。」僕が言うと

「なるほど。」と三谷さん。

「じゃあ、ご飯はどうするの。朝、昼、晩の三食だと多いかもってことだよね。」と椎名さん。

「うん。」僕が考えていると、三谷さんも考えているようだ。すると、

「おなかが空いたら、食べればいいよ。」と御紋さん。その通りだ。

「じゃあ、そうしよう。」椎名さんも合意。

「うん。」と三谷さん。

「じゃあ、いまから作りますか。」と僕。

「えっ、織屋、料理できるの。」と驚きながら、御紋さん。

「ええ。一人暮らしできるぐらいには。」とこたえる僕。

「すごい。でも私はできない。よろしくできる?」と三谷さん。

「私もできない。」と御紋さん。

「私はできるよ。普通に。」と椎名さん。

「じゃ、二人でやりましょう。でも、台所ないねですね。」僕が言うと、

「材料もない。」と御紋さん。

「台所っていうか、寝場所とかもないね。」と三谷さん。たしかに、ここは大地の上だ。始まりの。

「じゃあ、材料とってくる班と、住むところつくる班に分かれますか。どう分けます?」僕が訊くと、

「私の黒魔術は、家とかつくるのに向いてるかも。組み立ても簡単にできそう。」と椎名さん。

「私は修道女だから、鎮魂ができるの。だから、魚とかもとれるし、食料班かな。」と御紋さん。

「私はどっちでもいいけど、力仕事苦手だし、家の班に回るね。辞書に家の作り方とかあるかもだし。」と、三谷さん。

「それだと、私が力強いみたいじゃない。」御紋さんが言うと、

「事実。」と椎名さんに一蹴されていた。

「まあ、それは置いとくとして、でも御紋さんは私より力あると思いますけど、私は、食料班でいいですかね。」僕が言った。

「じゃあ、食料班が私と織屋。家の班が京華ちゃんと、双葉ちゃんね。」と御紋さんがまとめた。

「食材は、四人分の晩ご飯ぐらいでいいよね。そんなに多くないね。私、小食ですし。」と僕が言うと、

「晩ご飯はそれでいいけど、明日の朝ご飯の分とか、これからは、食料が得にくくなると思うから非常用とかあった方がいいかもしれない。」と椎名さん。

「そこまで、頭が回らなかった。さすがですね。」と僕が言うと、

「ゲームと一緒だよ。とれるときにとっておかなくちゃ。」と返ってくる。

「さすが、ゲームばっかりやってるだけはある。」と御紋さんが茶化している。

「そんなことない。それより早くいかないと、ほんとに暗くなっちゃう。」椎名さんのその一言で、僕たちは二班に分かれて、一時解散した。

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