第6話星の降る街

昨晩は、快眠だった。

それは現実逃避からくる睡魔なのか、自分が薄情からなのかは分からない。

気持ちの整理は、まだついていない。

今の自分は、昨日のことが全て夢なのかもしれない、という現実逃避を繰り返すことで精一杯だ。

「今日、部活あるわよね。科学準備室ぶしつだったわね?」

そんな淡い感情は、悪意のない彼女の言葉で一掃された。

登校時に傘はささなかった。この意味が分からないほど、鈍ってはいない。

けれど、窓越しから天気を再確認する。

雲一つない快晴だ。

「…ああ、やるよ。部室は理科準備室だから、そこで放課後に集まろう。」

自分でもビックリするほどの事務的な会話。

「…そう。」

隣の彼女もその会話を咎めたりしない。

その気配りは、今の自分に心地良いものだった。

悩んでいても時は止まってくれない。

放課後は刻刻と近づく。もう、最後の授業か。

「これで『星の降る街』は、今日で終わる。

因みに、この話はここが舞台になって書かれたらしい。そう思うと親近感が湧くな!」

いつもよりテンションの高い現国の江坂先生。

―――『星の降る街』

男がひとり。

ある冬に、男は星の降る街に辿り着く。

男は5人の女性と出逢い…そして、恋に落ちる。

けれど冬が終わる頃、男は旅立つ。

簡単に説明すればこれだけの話だが高校の現代文で扱う内容ではないぐらい、どろどろとした関係だ。

この話に微かに予兆を感じながら、俺は部室にゆっくりと向かう。

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恋愛観測物語 祭 仁 @project0805

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