第4話雨の図書室。

 今日も、雨。

 部活に朧月が入って6日。

 織姫との天体観測から1週間。

 ずっと雨だ。

「ハァ・・・これじゃあ、部活になんないよ。」

 深く、長い溜息を吐く。

 曇りでも、雨でも、ただ理由もなく織姫と過ごしていたあの頃は、もう遠い過去に感じる。

「ねえ、話があるんだけど。」

「えっ?」

 何の変哲もない話の振り方に、いつもなら驚きもしない。

 その声の主が宇美かのじょでなければ。

「今日の放課後、図書室。・・・待ってるから。」

 語尾に『来なかったら殺すから。』と付きそうな目で凝視された。

「うっ・・・分かった。」

 別に、部活もなく暇だからな。

 いい暇つぶしになるだろう。

 しかも1週間ぶりの会話だ。

 いやでも、ワクワクしてしまう。

 しかし、放課後まで待っての話ってなんだろう?

 校舎裏なら告白の可能性も。

 いや、最近では、図書室で告白というのもあるのか!?

 あの宇美に限って、告白はないか。

 そんな考え事をしていたら、放課後までに15回も先生からお叱りを受けた。

 放課後の図書室に入る。

 そこには、読書中の司書が1人。

 そして、窓越しから雨雲を仁王立ちで眺める宇美だけだった。

 後ろ姿、様になりすぎだ。

「話ってなんだ。」

 ぶっきらぼうに話しかける。

「そうね。選ばしてあげる。良い話と悪い話。どっちから聞きたい?」

 笑顔で、俺に振り返る彼女。

 その笑みは反則だ。

「じゃあ、悪い話から。」

 俺は、好物は最後まで残すタイプだからな。

「了解。悪い話って言うのはね。あなたと同じ天文部に所属している、についてよ。」

「は?なんで、織姫??・・・お前、ほぼ面識ないだろ??」

 いきなり、彼女おりひめの名前が出てくるとは思わなかった。

 織姫は別に共通の知り合いではない。

 なのに、放課後に呼び出してまでする話なのか?

「彼女、天道織姫は────────。」

「・・・っ嘘だろ。」

 終始無言で彼女の話を聞いた。

 性格には、一言も話せないほどに、受け入れ難い話だった。

「私、帰るね。」

 彼女は、気を使おうとしたんだろう。

 少し憐れんだ顔をしている。

「・・・待てよ。良い話がまだだ。」

 好物を食べずに終われるか。

「ああ、それはね。」

 彼女は一瞬にして、満面の笑みを魅せる。

「『私も天文部に入る』って話。じゃあ、また明日。」

「・・・っ・・・っな、なんじゃそりゃああああ。」

 図書室にも関わらず、叫んでしまった。

 司書が『しっ~』とジェスチャーを送る。

 力が抜ける。

 目の前にある椅子に、へたり込んだ。

「ハァ・・・・・・とんでもないだ。」

 深く、深く、長く、長い溜息を吐く。

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