第12話(最終話)
「ん…」
体を起こすと、寝ぼけたままの目をこする。
「んん〜、よいしょっと」
伸びをするとベッドから降りる。
「ん、おはようシャル」
机の上に置いてあるフィギュアは当然ながら返事などしない。
でも何となくいつも話しかけてしまうのだった。
「ってもうこんな時間!?やばっ!!」
慌てて支度を整えると、家を飛び出した。
☆
プシュー
電車のドアが開くとともに僕は電車を飛び降りた。
そのままダッシュで改札を抜ける。
目指すは自宅。
カバンを落とさないようにしっかりと胸に抱きしめる。
だってこの中には大切なものが入ってるから。
休むことなく自宅のドアの前までやってくると、はずむ息もそのままで鍵を開け、飛び込む。
——なんか、懐かしい感じだな。
そのまま廊下を突っ切ってリビングに通じるドアを開け放つ。
「……シャル!」
部屋の中央に置かれた机の上、そこに1人の少女が立っていた。
少女がゆっくりと振り返る。
「さつき、ただいま」
少女が微笑んだ。
そして、泣いていた。
ゆっくりと、暖かいなにかが心の中に広がって行く。
まだ半分夢の中にいるような感覚の中で机に近づく。
そして、少女と手が触れた瞬間、これは現実なんだ、そう実感できた。
「…お帰り!」
☆
「いや〜、まさか、さつきが漫画家になるとは思わなかったよ」
「うん、自分でも全く考えてなかったからね」
シャルと別れてから、僕はかおりさんに無理を言ってアシスタントとして雇ってもらい、一生懸命絵の勉強をした。
そして、努力が叶って、この間賞を受賞することができたのだ。
もちろん主役はシャルだ。
今日は出版に関する打ち合わせがあったと言うわけ。
それもだいたい順調にいって、出版が確定した。
それで、もしかしたらと思っていても立ってもいられなくなって、走って帰ってきたら—
「ん?どうしたの?」
僕の視線に気づいたシャルが首をかしげる。
「なんでもない。…また会えて嬉しいなって」
「私もにゃ!…さつき、ありがとう。」
「こちらこそ、ありがとう。」
僕らはお互いに見つめ合うと、
「これからも、よろしくな?」
「もちろんにゃ!」
一緒に笑い合った。
異世界最強少女は現実を知る さーにゃ @elsy
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