第6話

 うわああ「この方向で進めていきます」ってメールしちゃったけど私に改稿なんてできるのか推敲でさえやりたくないからウェブに投稿するときも書きあがったらざっと眺めて投稿してそれから気持ちが落ち着いたころにぱらぱら見直すみたいなスタイルでやってるのに……(もしかしてこれはばらしてはいけないことでは?)。

 とめちゃくちゃびびってたけどやり出したら普通に出来た。そういえば昔は推敲大好きで一回書いたやつ延々読み返して延々弄り回してたな……と懐かしい気持ちになったりした。なんで推敲苦手になったんだろ。自分の文章に飽きたのかな……。

 改稿って人やレーベルによってやり方が違うと思うけど私は新しいファイルを作って一から順に書いていくという単純なやり方にしました。改稿案に沿って元の原稿の文章から使えそうなところを持ってきて、その間を埋めるための新しい文章を書いて、文脈に合わないところは修正して……という感じ。あと書き進めながら起こった出来事の時系列表も作った(それは普段から作れよ)。


 あと意外にも改稿作業、楽しかった。


 普段まじで暗中模索って感じで先をどういう展開にするのかも曖昧なまま一日三行ずつ書いてるから小説書いてても全然物語が進んでる気がしないんだけど「わーいどんどん文章が増える!」って感じが久しぶりに味わえた。元原稿書いてくれた人ありがとうね! 天才! 新しい文章を書き足すときもキャラクターも展開もテーマももう出来てるから書きやすいし、「そういえばもとからこういうシーンいれたかったんだよな連載中タイミングを失って無理だったわ」ってところもあった。元原稿にある文章を削ったり順番を入れ替えたりしても物語に必要な情報を漏らさないよう工夫するのも案外楽しい。例えばフレンチトーストのシーンを削ってるんだけど物語上似たような効果を持たせるためにおむすび屋さんについての会話文を足したりとか。あと本当はこの小道具について全部削ってもいいんだけどな……というところもウェブの読者の人が読んで「あ、こうなったんだ」って思ってほしいので改変して残したりとか。小説書くのに集中すること自体が最近あんまりなかったので、やっぱりこういうの楽しいなあ好きだなあと思った。

 時間に余裕もあったし作業自体に困るってことは特になかった。逐一編集さんに連絡とったりせずにがりがり勝手に進めてたので一か月ぐらいやり取りもせずにいて、向こうから「大丈夫ですか?」って聞かれたときに「五章立てで三章だけやたら長くなったりしたのと1995年に設定したのにそれらしさがあんまりないのが気になるぐらいですかね」って返信したら「とりあえず全体が出来てから見て判断しますね(意訳」って言われた(そりゃそうだろ)。できるまで誰にも見せずにがりがりやってるしがりがりやってることTwitterとかでも言えないし「これちゃんと人間が読める文章になってるのか?」って不安になったりもしたけどまあこれも大した問題じゃない。本当に不安だったら途中まででも編集さんに見てもらったりすればいいんだろうしね。

 ただ……ただねーうちこぐまいるからね。三歳だからね。こぐまの名誉のために言っておくとわりと大人しい方なんだけど三歳児の相手しながら小説書くとかできる? いや正直言えば出来るけどね一日三行なら。でも暗中模索、ではあるけど何書いてもいい一日三行と違って改稿って元原稿と完成形の全体図を見通してやらなくちゃいけないから集中できないと無理……。あと引っ越しもしたからね。夫の仕事で八月に沖縄に引っ越して一月にこぐまと私だけ関東に帰ってきて三月末に夫も帰ってきた。家を残した状態での引っ越しだったのでそこまで大変じゃなかったけどまあ引っ越しは引っ越しだ。こぐまも慣れない環境(沖縄暑い。猫が懐っこい)に荒れてわがままになった(可愛い)。

 そういうわけでこぐまを寝付かせて布団の中でスマホ見たりKindleUnlimited(Amazonの定額電子書籍サービス。私のおすすめは光文社古典新訳文庫のジロドゥの「オンディーヌ」とラディゲの「肉体の悪魔」だよ。あと漫画は「ぼのぼの」が入ってたよ)読んだりしてだらだらしてから気合入れて起き上がってパソコンの前に座ってお菓子を食べネットを見て気合を入れてから作業をする。おかげで寝不足だったし太った。みんなも気を付けてね!

 とりあえず最後まで書いて、それから一週間ぐらいかけてざっと見直し。七月下旬から作業を始めてそこまで終わったのが十月の上旬だった。早いのか遅いのかわからん!(嘘。多分遅いと思う)

 編集さんに原稿を送って何言われるのかびくびくしながら待っていたらしばらくして「これでだいたいいいですけど冒頭だけ修正お願いします」って返信が来た(本当はもっと細かい文面だったよ)。「あーなるほどなるほど冒頭気に入ってたから元のままにしてたけどウェブ版は「日当たりのいい家」というタイトルの通り場所の物語の側面が強いのに対して書籍版は主人公夫婦の人物をもう少し前に出しているので、冒頭っていう一番わかりやすい部分でもその違いを出していけってことですかね!?」みたいなメールして書きなおした(たいした修正じゃないように見えるけど特定の部分を印象を変えたうえで読者に同じぐらいの情報量が伝わるようにするのって結構難しいね! と思いました。)らOKが出た。編集さんが私の圧に負けたのかもしれない。

 それから「一か月時間あげるから細かいところとか見直しして完成原稿にしようね(意訳」と言われたのでゆっくり見直しした。データ送る前にざっと見直ししたとは言え元の原稿を切り貼りしてるから前後の辻褄合わなくなってるところとかあって……はあ……まーた店で注文したものがどこかに行ってるよ……やだやだ……。

 ここでがらっと変わる人もいるのかもしれないけど私は細かいところの辻褄と自分で見てわかる程度の誤字脱字を直して文章をちょっと弄ったぐらいで完成原稿として送った。十一月末の出来事だ。


 一番肝の部分が終わったので正直もう書くことあんまりない……。そういえばこぐまが幼稚園に行き出したんですけど朝家のすぐ近くでバスに乗せたらお昼にバスに乗って帰ってくるとか「え……すご……!」って感じなんですけど。お名前つけ大変! なんなんだこれは! って言ってたけどいや全然……幼稚園様が私たちにしてくださることに比べたら全然……しばらくしたらお昼も園で食べて午後まで見てくれるとか……え、何? 神の所業か?(人間のしてくれることなので感謝を忘れないようにしましょうねでもやっぱりお名前つけもうちょっとぐらい楽にならない?)

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