第24話 盗賊の流儀
『スイート・チン・ミュージック』を喰らった猿は10m近い距離を飛んで地面に転がり落ちた。
猿は地面にうつ伏せになってビクビクと痙攣していたが、顔と胸の辺りから血が広がり地面を赤く染めて、ようやく息の根を止めた。
「あばよ、エテ公、
俺が別れを告げている間、テクノブレイカーがずっと叫んでいた。
(抜いて! 早く、抜いて! キモイ、チョーキモイから!)
(お前、ボストロールの生首が刺さった時も同じ事言ってたな。動けるんだから自分で抜けばいいじゃん)
(あの時も今も魔力が切れて動けないの。お願い、早く抜いて!!)
「仕方ねえな、一発抜いてやるよ」
猿を仰向けにして、テクノブレイカーをぶっこ抜く。
(うう、あるじー。ありがとー)
「その媚びた仕草が最低だな」
(やっぱり、酷っ!)
『スイート・チン・ミュージック』で踏みつけた地面を見ると、地面にヒビが入っていた。
「うは! 相当ストレスが溜まってたんだな……やっぱ一度、ブラッドと一緒にあの歯並びの奇麗なゴリラを夜討ちするか?」
殺った後にどうやってブラッド一人のせいにするかを考えながら、落とした武器を回収してジンの側に近づく。
「おい、大丈夫か?」
声を掛けながらポーションをぶっ掛けると、ジンが意識を取り戻してゆっくりと起き上がったと思ったら、キョロキョロと辺りを見回していた。
(ブレイカー解説を頼む)
(んー多分、意識がぼーっとして現実を見る事が出来なかったんだけど、猿との戦いを思い出したから、慌てて確認しているんじゃないかな?)
「なるほど、確かにそんな様子だな。猿なら倒したぞ」
倒れた猿の方を顎でしゃくると、ジンが猿を見て驚き、直ぐに俺の顔をジッと見つめていた。
(だめだ、コイツが何を考えているのかさっぱり分からん。ブレイカー、解説頼む)
(あるじが倒したのか知りたがっているね)
テクノブレイカーの解説に「なるほど」と頷く。
「ああ、俺が倒したよ」
そう答えると、ジンが驚きと称賛の眼差しを俺に向けていた。
「後、45分か。こりゃ駄目だな」
猿の戦闘で15分、出口は遥か天井。出たとしてもビートのところへ戻るまでの時間は不明。完全に諦めモードに入っている。
その俺の様子を見てジンがシュンと頭を下げていた。
コイツも何かがおかしいな。俺より年齢が上に見えるが、どうも精神が幼児化している気がする。見た目は大人、心は子供……どこぞの名探偵っぽいけど内容は逆。それにそんな大人は沢山居るし、周りに迷惑をまき散らしている。
帰ったら姉さんに調べてもらうか……。
ちなみに、姉さんは大学で臨床心理学を研究していたらしい、しかも趣味で……。自分のサディストな深層心理を研究したかったのか?
「ほら、落ち込んでないで別の出口を探すぞ」
ジンが頷き俺に近寄ろうとする。
「だから寄るな。臭えん……ん!?」
ジンから離れようとしたその時……『スイート・チン・ミュージック』でヒビの入った地面が崩落した。
「うおっ!」
「!!」
避ける余裕もなく、俺とジンは崩落した床と一緒に下へと落ちていった。
ザバン!
「何だ!? ってうわぁぁ!」
堕ちた先は水の流れる急な坂だった。俺とジンは水の中に落ちると同時に激流を下へと流される。
「ウォ、ウォータースライダーは女と一緒に滑って、取れる水着を……ブクブクブク……ガハ! オッパイ最高!!」
アカン、ボケる余裕がない! あ、ジンは?
「ジン、ジン、どこだ!?」
流されながら叫ぶがジンからの返答がない……って、アイツ喋れないんだった!
「ダーー! アイツどこに行った?」
大声で叫ぶと水中で何かが足に当たった。水の中に潜って掴むと腕だった。
おや? ジンさん、いつの間にこんな毛むくじゃらになったのかな? それに立派な体になって……ってシャムロックじゃねえか!
猿を蹴飛ばして再びジンを探す。ダメだ暗くて分からねえ。そうだ、生存術!
目で確認するのを諦めてスキルでジンを探す……居た!
俺の後方で激流に身を委ねながら流されるジンを見つけた。
流れに逆らって泳ぎジンを捕まえる……って溺れんの早ぇよ!
「ジン! ジン!」
ジンの頬をペチペチ叩くが、一向に起きる様子はなかった。テメエはどこぞの眠れる森の美女か? 女々しいのも大概にしろ!
水の流れに任せていたら前方で大きな音が聞こえた。今度は何だ? ……って滝かよ!
「クソ! クソ! クソ! ここに来てから全てがクソだらけだ!!」
大声で叫んだ後、両手をジンの腰に回して絶対に離さないようにする。
そして、ジンを抱きしめると俺達は滝つぼへ落下した。
高所から滝つぼへ落ちる。
水面に出たくても洞窟の中だから当然視界は暗く、俺が水面を向いているのかすら分からなかった。
(ブレイカー、今すぐ水面に上がれ。そして誘導しろ!!)
(わ、分かった。待ってて!!)
鞘からテクノブレイカーが飛び出て慌てた様子で水面へと向かう。
(水から出た! あるじはそのまま泳げば水面に出れるよ)
(サンキュー!)
(あ、あるじが初めてぼくを褒めた……信じられない……)
いや、俺だって助けてくれる奴なら、デブの独裁者でもテロリスト相手でも礼は言うぜ……言った後で殺すけど。
「ブハッ! はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
水面から出るのと同時に空気を吸い込む。水の流れは滝から落ちる前と比べて緩やかになっていた。
左腕に抱きかかえるジンを見れば、ぐったりして意識がなかった。
(ブレイカー、近くに上がれる地面はないか?)
(あるじの右側、急いで! もう魔力が限界……)
(分かった)
ジンを抱えて地面へ上がる。
すぐにジンの状態を確認したが、水を飲み過ぎて息をしていなかった。
「マジかよ……」
慌ててジンの胸をはだけさせて人工マッサージで胸を押すが、一向に目覚める様子がない。
「クソ、こうなったら」
ジンを抱えると……腹を思いっきりぶん殴った。
「ゴハッ!? ゴホ、ゴホ、ゲホ!」
ボディーブローを喰らったジンが息を吹き返し、口から大量の水を吐き出し腹を抱えて地面に呻く。
鞄からペンライトを出してジンを照らすと、俺を恨めしそうな目て見ていた。
人工呼吸? 男相手にするわけないじゃん。
床に座ってコンソールを開き時刻を確認する。後30分か……今の場所が何所か分からない時点で完全にアウトだろう。
まあいいや、時間が切れたら義兄さん達に向かいに来てもらえば、もう面倒くせえし……。
「ジン、服を脱げ」
そう言うと、ジンが驚いて俺を見た。
「別にお前のオチンチンなんか興味ねえよ。服を乾かすから脱げって言ってるんだ。ついでにまだ臭せえから、そこの川で体を洗ってケツ穴に溜まったザー〇ンタンクを空にしてこいや」
俺の命令に頷くと、ジンが服を脱いで川の中に入った。
その間にジンの服と俺が着ている服を全部鞄に入れてから再び取り出す。
さすが1000ガバスの裏テク。鞄から取り出した服はあっという間に乾いていた。
座って待っていると、ジンが川から戻ってきた。
「タオルなんてないから、そのまま服を着てくれ」
そう言って服を手渡すと、乾いていることにジンが驚いていた。
「裏テクだ。知りたかったら1000ガバスよこしな」
首を傾げるジンを無視して、サバイバルマッチに火をつけスキルをセットし直す。
IN
【盗賊窃盗スキル】
【ボルダリング】
【盗賊隠密スキル】
OUT
【クロスボウ攻撃スキル】
【クロスボウスキル】
【遠距離命中スキル】
魔力が切れてぐーすか眠るテクノブレイカーを回収してから、出口を探しに川沿いを歩き始めた。
「しかし、ここはどこだ?」
俺の呟きに隣のジンが首を横に振る。意味は「俺も知らない」だろう。
元から回答なんて求めていなかったから無視して歩く。
「おっ、横穴発見!」
歩く先の壁にある横穴を見つけて、中に入る。
横穴は先に進めば進むほど狭くなって、こりゃ外れかなと思い始めたら案の定、行き止まりになった。
「ダメか……」
腹いせに行き止まりの壁を蹴飛ばすと、ガラッガラッと音がして赤い光が差し込み洞窟を照らした。
「……マジで?」
「…………」
俺とジンは驚き、呆然と壁から差し込む光を見ていた。
「取り敢えず確認だ」
そう言うとジンが勢いよく頭を縦に振る。
そっと崩れた壁から外を覗けば、今の場所はロックストーン監獄の内庭で、見覚えのある場所だった。
しかも、倉庫の裏の茂みの崖に出たらしく誰も気づいていた様子もない……もしかしてこっちが隠し通路の本当のルートだったのか?
「よし、ジン! まだ運は俺達に味方している。あの荷馬車が見えるか?」
ジンの方へ振り向けば、彼は頷いて荷馬車を見ていた。
時間を見れば残り5分。外は夕日に染まり荷は既に積み終わって後は出るのを待つ状態だった。
「あの荷馬車の樽に潜り込めば後は勝手に外に出れる。まずはこれを着ろ」
俺が羽織っていたフードを渡すとジンが慌てて羽織る。
「いいか、これがラストチャンスだ。盗賊隠密スキルであそこまで行くぞ。失敗したら、死ぬまで守衛のザー〇ンタンクだ。付いて来い」
俺が姿を消すとジンも同じように姿を消す。
ジンのステルスはフードの盗賊隠密スキル+6の効果で、アイテムのない俺と同じぐらい消えることができていた。
透明なシルエットに手招きするとジンが頷き、俺の後を付いて来る。
そして、俺達は見つからない様に物陰に隠れながら荷馬車へと近づいた。
「なんだ、まだ出ないのか」
「ああ、もうすぐ出るから心配するな」
どうやらビートは俺達を待つためギリギリまで粘っているらしかった。
あの老人も顔はブスッとしているが、根は良い奴なのだろう。ただし、バイセクシャル。ファンキーなリベラル爺さんだ。
ビートと話をしていた守衛が去るのを待って、見つからない様に空の樽に入った。
隣に居たジンも俺の行動を見て同じように隣の樽の中へと入る。
ビートに声を掛けたかったが、今はまだ危険だと判断してジッと樽の中で動かないでいた。やがて溜息が一つ聞こえた後、荷馬車が動き始める。
そして、門を通り抜けると荷馬車はロックストーン監獄を後にして、キンググレイスに向けて動き出した。
「結局、間に合わなかったか……」
「それはどうかな?」
樽の外からビートの呟きが聞こえて、蓋を少しだけ開けて小声を出した。
「なっ。お前、戻っていたのか」
「こっちみんな。まだ監獄から近いだろ」
「あ、ああ。それで、お前が探していた男は?」
ビートの質問に隣の樽からゴトッと音が聞こえて、ジンが少しだけ顔を出す。
「本当に連れてきたのか……信じられねぇ」
ジンの姿を見てビートが本当に驚いていた。
やがてロックストーン監獄が遠のき、安全が確保できると俺とジンは樽から出た。
「いやー本当にスゲエな。お前を手助けした事は一生の自慢にできるぞ」
「おいおい、内緒にしてくれよ。そのために金を渡しているんだからな」
「ああ、でも死ぬ前に婆さんに話す事ぐらいはいいだろ」
ビートの願いにニヤリと笑い返す。
「隣の家の爺さんでもいいぜ」
「ははははっ」
俺の返しにビートが腹を抱えて笑っていた。
ビートから離れると荷馬車の後ろに居たジンの近くに座って、ずっと着けっぱなしだったマスクを取る。
「……ふぅ……って何、見てんだよ」
そう言ってもジンは俺の顔から目を離そうとしなかった。
「そうか、俺の顔を見るのは初めてだったか」
その質問にジンが頷く。
「改めて、自己紹介しよう。俺がアサシンだ。宜しくな」
それを聞いて驚くジンを軽く笑った後、夕日に照らされた赤い荒野を風に吹かれながら眺めていた。
帰り道もビートはよく喋った。
最初に寡黙と言っていたのは、一体何だったのだろう。
「……でな、娘は俺の教育が良かったから、5歳で舞台に子役で出ていたんだ」
「そりゃ酷いな。俺は一度も働かないでここまで育ててもらったぜ」
ブスっとしたまま話すビートに適当に答えてやり過ごす。
ちなみに、ジンは後ろで外の景色を見ながらぼーっとしていた。
「娘は『キンググレイスの幼女』とまで呼ばれるほどの人気子役だったんだぞ……。それで娘が12歳の時、様子がおかしかったから娘が芝居小屋から帰るのを待っていると、俺と同じぐらいの年齢の男と娘が仲良く手を繋いで出てきたんだ」
どうやらビートの娘は早熟らしい。幼いころから仕事をしているとそうなるのか?
「それで娘とその男の後を付けたら、アイツら物陰でイチャイチャした後、男が俺の娘のケツにナニを入れやがった!」
凄げえな、親子そろってケツ好きか。
「その時の俺の気持ちが分かるか? 『キンググレイスの幼女』と言われた俺の娘が『ケツの恋人』になっている姿を見た俺の気持ちが!」
「何が『キンググレイスの幼女』だ、凶暴なメス犬じゃないか!!」
「そうだ! 娘が汚された怒りですぐに娘をヤってる男をぶん殴って、家に連れて帰ったんだ」
「……なんかその先が分かった気がする」
ついでに聞きたくない。
「さすがだな。ケツが好きなら思う存分味合わせてやるって事で、三日三晩奴のケツを拡張してやったぜ」
「……予想通りで涙が出るぜ」
ジン、頼む。俺と席を替わってくれ……。
「問題はその男が芝居小屋の支配人だった事だ。それで娘は舞台から降ろされて、今は寂れた店のウェイトレスをやっている……たしか店の名前は『ジェイソン』だったな」
「ブフォッ!」
「何だ? どうかしたのか?」
急に噴出した俺をビートが訝し気に見ていた。
「い、いや、何でもない……」
まさかここで、あの『ジェイソン』の煤けたウェイトレスが出るとは思わなかった。
その後もビートは下品なトークを俺に聞かせていた。
ジンとは夜に筆談で彼の経歴を聞いた。
コイツは元々孤児で教会の孤児院に居たけど、そこで神父から性的虐待を受けていたらしい。そして、8歳の時にジンをもらい受けたいという男に連れられて、一般家庭の息子になった。
だけどそれは表向きで、その家の仕事は貴族お抱えのフリーの盗賊だったらしく、夫婦も実際には結婚せずに仮想の夫婦を演じていた。
そこで盗賊の技術を仕込まれ、おまけに夫婦別々に夜の相手をさせられたらしい。
15歳の時、義父が仕事でしくじって衛兵に捕まると、義母はジンを置きざりにして逃げる。
ジンが家に一人で居たら、衛兵が家宅捜査で突入してジンを捕まえた。
しかし、ジンはまだ盗賊としての仕事を一度もしていなかったので釈放され、そのジンを貴族がフリーとして雇って今に至る。
ちなみに、ジンの年齢は19歳だった。年上なのに精神年齢は俺よりはるかに下とか、ダメな大人への道を確実に進んでいた。
「お前、泣かせる人生を歩んできてるんだな。しゃぶってやりたいくらいだ」
冗談を言うと、ジンが立ち上がってズボンを降ろそうとしたから、すぐに止めさせた。
「冗談も通じないのか? それと、ケツに突然二本目が入ったような顔をするな」
困惑な表情を浮かべるジンを見て溜息が出る。
恐らくコイツは雇われていた貴族に捨てられるから、もうフリーとしての仕事はできないだろう。
そして、言葉が喋れないとなるとどうやって生きるつもりだ? ……ヤベエ、男婦しか思いつかねえ。
「お前、何時から喋れなくなったんだ?」
ジンが紙に文字を書いて俺に見せる。
『孤児院に居た時から』
「子供の頃に喋っていた記憶はあるか?」
『ある』
となると幼児期に受けた虐待の影響か……。
「……まあいい。しばらくは面倒を見てやる」
それを聞いてジンが頷いた。
バイセクシャルとホモセクシャルに囲まれた夜は、今まで経験してきたどのダンジョンよりも怖かった。
唯一の救いはジンが受け専門だったため、同時二本刺しだけはない事だろう。さすがに拡張もしてないのにそれは無理。痛くて死んじゃう。
行きと同じように樽に足を突っ込み、起きたらビートかジンのナニを咥えていたなんて事がないように、もう一つの樽を頭から被って完全防御で寝った。
それを見てジンが首を傾げて、ビートがさらに酷くなったと呟いていたが、俺だって好きでやってるわけじゃない。俺はお前らが怖いんだ、頼むから寝ている時は俺に近づかないでくれ!
二日目の晩にサバイバルスキルのレベルが上がった。
シャムロックさんが居ないからレベルは上がらないと思ったけど、そうはいかなかったらしい。
地面に座っていたジンの地面から突然、キャンピングチェアーが出てきて驚いていた。
その後、笑っていたビートと寝ていた俺の地面からもキャンピングチェアーが出てきて全員が驚いた。
特に俺は樽武装をしていたから、二人に襲われたと思ってマジでビビッた。
これでキャンピングチェアーは4脚。パーティを考えるとあと2脚は出るだろう。その後はテーブルか?
まあ便利だからいいんだけど……相変わらずこのスキルは俺の常識の範疇を超えていた。
最後にレベルが上がったから、ステータスを公開。
-------------------
Lv24
スティールレイピアSTR+3、AGI+6、痛覚倍増付与付
サバギンレーザーVIT+10
・筋力(STR)7+3=10
・体力(VIT)10+2=12
・瞬発(AGI)6+11=17
・知力(INT)5
・器用(DEX)3
取得スキル
スキル増加の指輪(+3)
盗賊隠密スキルのフード付きマント(盗賊隠密スキル+6)
【生存術<Lv.24> INT+2】【危険感知<Lv.24> INT+2】【戦闘スキル<Lv.24> VIT+2】【盗賊攻撃スキル<Lv.23> AGI+2】【盗賊隠密スキル<Lv.22(+6)28> DEX+2】【盗賊窃盗スキル<Lv.15> DEX+1】【盗賊戦闘回避スキル<Lv.15> AGI+1】【突刺剣スキル<Lv.23> AGI+4】【打撃スキル<Lv.19> STR+3】【格闘技スキル<Lv.19> STR+3】【軽業スキル<Lv.20> AGI+4】【サバイバルスキル<Lv.18> INT+1】【ボルダリング<Lv.10> STR+1】
控え
【生産スキル<Lv.20> INT+2】【調合士スキル<Lv.23> INT+2】【毒作成スキル<Lv.23> INT+2】【薬草学スキル<Lv.23> INT+2】【乗馬スキル<Lv.5>】【クロスボウ攻撃スキル<Lv.10> DEX+1】【クロスボウスキル<Lv.10> DEX+1】【遠距離命中スキル<Lv.10> DEX+1】
アクション
生存術・危険感知・ステルス・目くらまし(唾吐き)・死んだふり・足蹴り・バランス崩し・ホップ・ステップ・ジャンプ・サイドステップ・バックステップ×2・ダブルジャンプ・バックアタック・落下ダメージ減少・腕力UP(小)・早打ち・影縫い・スナイピング・薬作成・毒作成
-------------------
侵入ミッションで盗賊系のスキル、猿との戦闘で戦闘系のスキル共に上がっていた。
今回はクロスボウのスキルを強化目当てで使っていたから、遠距離系スキルも上がっていた。クロスボウ攻撃スキルのレベルが上がって、新しいスキルも手に入れた。
スナイピング……集中することで、飛距離と攻撃力が1.25倍上昇する。
立ち止まって攻撃する機会があまりない俺だと滅多に使わないから封印すると思う。
「済まねえな。中に入るとお前達を出す時間がないんだ」
「いや、気にしないでくれ。一時間も歩けばキンググレイスに着くし、ここまで付き合ってくれただけで十分だ」
キンググレイスまで歩いて後一時間という場所で、俺とジンは荷馬車から降りて歩くことにした。
「そうか、縁が合ったらまた会おう。じゃあな」
「ああ、次からはもっとデリケートなトークを頼む」
「それは無理だ」
無理なのか……。
ビートが荷馬車の上でブスッとした表情のまま俺達に別れを言った後、俺とジンを置いて去って行った。
「俺達も行くか」
それにジンが頷いて、俺達もキンググレイスへの道をのんびり歩き始める。
何の会話もなく歩いていたが、30分ぐらいした頃、ジンが紙に何かを書いて俺に渡してきた。
「何々? 『どうして俺を殺さなかった?』……お前、やっぱり死にたかったのか?」
そう言うと、再び紙を手渡される。そこには……。
『分からない』
とだけ書いてあった。
「ははーーこれは俗にいうあれだな。奴隷か何かで今まで他人の命令を受けるだけだった人生なのに、急に自由に生きろと言われて困惑するパターンだろ。
ベタなテンプレなんて見飽きたんだよ。そんなのは場末の小説を読めば巨万とあるぜ」
俺が両肩を竦めて笑うと、ジンが困惑の表情をしていた。
「大抵の場合、主人公が「ゆっくり自分の道を探せとか」言って放置するのが、これまた同じパターンで実に呆れると思わないか?」
振り向いてジッとジンの目を見る。
「ハッキリ言うぜ。テメエの生きた人生なんて知らないし、知りたいとも思わねえ。だけど、これだけは教えてやるよ」
話の続きを待ちながら、ジンがゴクリと唾を飲み込んだ。
「世の中は力だ。財力、権力、暴力、何でもいいから力を手に入れろ。そうすれば誰にも支配されることはないし、自由に生きることができる。そして、もし力がなかったら……その時は盗め。善人なんてクソ喰らえ!」
そう言ってジンの胸をポン! と叩いて話を続ける。
「自分の人生を盗まれたのなら、その盗んだ相手の人生を盗み返せ。それが俺達盗賊の生き方だ! ……こんな風にな」
そう言って、叩いた手からペンを取り出した。
「……!?」
ジンが慌てて胸ポケットを弄り、ペンがない事に驚く。
「ほらよ」
ペンを投げ返すと両手で受け取っていた。
「まあ、俺は今を自由に生きている。お前も生きている間に好きな事をやるんだな」
「…………」
再び歩き出そうとしたが、一つだけ言い残した事があったのを思い出す。
「おっと、一つだけ言い残した事があった」
「……?」
クルリと踵を返して再びジンの方へとツカツカと歩み寄り、胸を人差し指で押すと、その行動にジンがたじろぐ。
「これだけは言っとくぞ。俺はお前の性欲処理だけは手伝わないからな!」
「……!?」
そう宣言した後、驚くジンを無視して再び歩きだす。
歩きながら首から上だけを振り返ってジンを見れば、彼は思いつめた様子でその場に立ち留まっていた。
「考えるのはいいけど、歩けよ。日が暮れちまう」
そう言うと、ジンが再び歩き始める。
こうして俺達は残りの道を無言のまま、キンググレイスへと向かった。
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