第46話 「姉だからって調子こいてんじゃねよ」と心の中で叫ぶ弟

「そう言えば、クララとアルドゥスの爺さんを見てないけど、あの二人はどこに行った?」


 フランの作家貧乏、違う、作家志望の話から話題を変えて、ログインしてから一度も見ていないNPCの二人について質問する。


「クララちゃん? 今日はカートさん達と一緒に行ったわよ。あの子も好奇心旺盛な子よね」

「わがままとも言うけどな」

「あの年頃だとあれが普通よ」


 フランは孤児院で年下の面倒を見ているから、あのわがままも余裕で対処できるらしいが、どう見ても全員がクララを過保護に甘やかしている。

 それもクララが可愛いから許されるのだろう。女性は美人でも幸せになるとは限らないが、人生はイージモードだと思う。




 俺とフランがクララの話題で盛り上がり始めると、玄関から大勢の声が聞こえてきた。どうやら祠に行ったメンバーが帰ってきたらしい。

 現実の時間で既に0時を過ぎているので、今日の反省会と今後の予定について会議をした後、解散すると思う。

 フランはリックを呼びに食堂から出て行ったが、俺は一人で皆を待つことにした。


「おかえり」

「おう。遅くなったが戻ったぞ」


 最初に入ってきたベイブさんに手を上げると、その後からぞろぞろとニルヴァーナのメンバーが入って食堂に集まった。

 そして、姉さんが食堂に入り俺の方を見た途端、驚いた様子で話し掛けてきた。


「レイちゃん。頬の傷を消したの?」

「……え?」


 嬉しそうな姉さんに言われて、アシッドが残した頬の傷跡触ってみると、つるりとしていた。男なのに美肌だったけど、別に嬉しくない。

 ……傷が消えている? 思い当たるのは教会でお祓いをした時だけど、あのシスター何してくれちゃってるの? キャラ設定がグダグダになるじゃねえか!

 除霊は失敗しているのに、何で思い出として残していた傷を消すんだ、あのビッチ。


「やっぱりレイちゃんは傷がない方が良いわ」


 喜ぶ姉さんとは逆に、俺は額に手を当てて溜息を吐いていた。




 ニルヴァーナの後から、アルドゥス爺さんも食堂に入って来た。


「おや? レイ殿じゃないか。話は聞いたぞ、昨日はご苦労じゃったの」

「まあね。それでクララは?」


 爺はどうでもいいよ。今日はヨツシーの連中のせいで精神的に疲れたから、クララたんで俺を癒やしてくれ!


「うむ。クララ様は帰りの途中で疲れて寝てしまったぞい。今、フラン殿が儂の代わりにベッドに運んで寝かせておる」


 ウガーー! 癒しが営業時間外だった!!

 俺もファンクラブに入って生写真を貰うかな……いや、別に入らなくても自分でスクリーンショットを取れば解決か……。


 そんな事を考えていたら、フランがリックを連れて食堂に入ってきた。

 二人が入って来た時、リックの目が赤く腫れていて、それに感づいたジョーディーさんが涎を垂らす。何となく彼女の妄想が予想できたけど、その内容は間違いなく18禁だから語るのは止めよう。


「ご苦労じゃったな」

「たいしたことないわ。だけどクララちゃんが寝言で『ママ』って言っていたわ、そろそろ両親に合わせないとダメかも……」

「うむ。クララ様の両親も心配しているだろうし、早く合わせたいのう」


 アルドゥス爺さんとフランの会話を聞くと、クララたんはホームシックになりかけているらしい。

 あの年頃だと、両親と一緒が一番だから早く合わせて、飛び切りの笑顔を見せて欲しい。by シリウス




 全員が席に着くと、義兄さんが立ち上がって全員の顔を見てから話し始めた。


「今日は皆ご苦労だったな。トラブルもあったけど何とか祠へ指輪を収めることができた。これで荒れていた海峡も落ち着いて、ブリトンへ渡れると思う」


 昼に予想した通り、ただ指輪を祠へ納めるだけじゃ済まなかったらしい。


「チンチラ、何があった?」

「えっと、祠に指輪を収めたまでは問題なかったんだけどね。指輪を収めたら持ち主の幽霊が出ていて大泣きするのと同時に土砂降りの雨が降り始めて、大勢のモンスターが現れたの。

 そのモンスター達が指輪を奪おうとしたから、プレイヤーとモンスターの間で大乱闘が始まって大変だった」


 隣に座るチンチラにこっそり尋ねると、小声で詳細を教えてくれた。

 運営も必死だな。そこまでしてプレイヤーを先に進ませねえつもりか? ネットゲームはコンテンツを大量に用意してから開始しろ。


「へー。だけど皆無事っぽいから、大した事はなかったみたいだな」

「ううん。プレイヤーはほとんど死に戻りしていたよ。私達が無事だったのは、私達が良い装備だったのと、昨日レイ君からもらったポーションとステータスUPの薬が有ったおかげで生き残れたんだと思う。全員、最後の方はMPが尽きかけていたし……」


 ステータスUPの薬……アレを飲んだのか……。


「……お、おう。それは良かったな」


 未成年の少女に疑似とはいえ、スカ○ロプレイは倫理的にマズい気がするけど、もはや手遅れである。


「そこ、そろそろいいか?」

「あ、ごめん」

「ごめんなさい」


 気が付けば周りの皆が俺とチンチラの話を聞いていて、義兄さんが俺達の会話が終わるのを待っていた。


「今後の予定について話をするぞ。道中でチンチラからも相談を受けたが、学生組は明日から試験一週間前と聞いた」


 義兄さんの話を聞いて、そう言えばそうだったなと思い出す。

 正直言うと、毎週のように出される課題の多さに比べれば、試験なんて屁である。それに、試験一週間前から課題が出ないから、普段と比べて逆に楽な期間だったりもする。


「うへ」

「はぁ」


 俺とチンチラが平然としているのとは逆に、ブラットとステラが落胆していた。バカ発見。


「そこで、学生組は試験が終わるまではログイン禁止……と言いたいところだが、このゲームの加速時間システムと外部リンクに接続する機能を使えば、ログインしていても勉強ができる」


 義兄さんの話にブラッドとステラが落胆から一変して喜んでいた。コイツ等、どう考えても勉強せずに遊ぶ気満々である。


「だけど、それも親を説得してからだ。レイを除いた高校生の三人は、明日、親を説得してからログインするように」

「「「ヤッター!」」」


 俺以外の高校生三人が喜ぶ。俺の親? 短い命だから自由にして良いと言われているから問題ない。

 ただし、金はあまり使うなとも言われている。悲しい事に病気で倒れて10年過ぎると親はケチになる。


「喜ぶのは良いけど、ゲームの中で勉強をしろよ。頑張り次第で息抜きにどこかへ連れて行ってやるからな」

「「「ハイ!」」」


 元気良いなオイ! そこまでしてゲームをしたいのかと思ったのは俺だけか?


「そして、学生組の試験が終わるまでに、コートニーとローラはアビゲイルを手伝って、保険会社を何とか形にしてくれ」

「はーい」

「了解です」


 義兄さんに指名された姉さんとローラさんが頷く。


「保険会社設立のめどが付いたら、船に乗ってブリトンに……」

「あ、待ってください!」


 ゲーム中でもネットの閲覧を止められないネット中毒患者の誉れでもあるシリウスさんが、義兄さんの話を中断させた。

 最近、この男が話を止めると碌な事がない事に気付く。そして、その予感は当たっていた。


「今、公式ページで運営から最新情報が出ましたが、木曜日までプレイヤーはブリトンに行けない仕様にしたらしいです」

『え?』


 その内容を聞いて全員が驚き、一斉にネットジャンキーに視線を向ける。


「本当か?」


 義兄さんが確認すると、シリウスさんが返答替わりにネット情報を読み始めた。


「記事の内容をまとめるとですね。ブリトンは再来週のアップデートに合わせて開放予定なので、それまで海峡は渡れないらしいです。もし渡ろうとしても……プレイヤーだけ強制排除されて、コトカのセーブポイントまで戻すと書いていますね」

「今日が日曜日の夜だから、現実時間で四日間足止めか。酷いな」

「ええ、そうなります。他のプレイヤーもカートさんと同意見で、ネットの掲示板でもブーイングの嵐ですよ」




「想定外だったのかもね」


 シリウスさんの話を聞いて、姉さんが頬に手を当てて呟いた。

 俺も時々、アンタの行動が想定外だけど……うーん、人の事は言えないか……。


「ふむ。私達が指輪を祠に戻すのが、運営からしてみれば早すぎたのか……」


 姉さんの呟きを聞いたヨシュアさんが頷く。


「そういう事。多分だけど、運営は来週のアップデートに合わせるタイミングで既存ユーザーが海峡を開放できる難易度を設けたのに、私達が予想より早く指輪を手に入れて開放しちゃったから、慌てたんじゃないかしら?」

「となると、今日、祠で沸いたモンスターはもしかして?」

「確実とは言えないけど、運営が邪魔をした可能性もあり得るわね」


 姉さんとヨシュアさんが会話している間、他の皆はその内容について考えていた。


「だったらこんなイベントをゲーム中で作らないで、最初から規制すればいいのに、何で面倒な事をしているんだろうね」

「ゲーム会社の方針がプレイヤーとの直接干渉を避けているからだと思うよ」


 ジョーディーさんの質問にシリウスさんが答える。


「そうなの?」

「確かそんな事をプロデューサーのネットライブで聞いたことがあります」

「何でそんな回りくどいことをするのかな?」

「雰囲気重視とか言っていたよ」


 雰囲気重視にしては世界設定が滅茶苦茶な気がするけど、そこは無視ですか?


「どの道、俺達は保険会社を作らないとブリトンに行けないんだし、丁度良かったんじゃないか?」


 シャムロックさんがそう言って肩を竦める。


「その通りだ。すぐに会社が作れるとは思ってない。俺達はこのままのんびりと待つとしよう」

「そうね。木曜日に解禁と考えると、ゲーム時間で考えればかなり余裕があると思うわ」


 義兄さんの方針を聞いて姉さんも頷いていた。




 プレイヤーの俺達の予定が決まると、今度はNPCの予定の話に変わった。


「少しいいか?」


 最初にアルドゥス爺さんが手を上げる。


「話を聞く限りだと異邦人のお主達は海峡を渡れんらしいが、儂とクララ様はブリトンに行けるらしいな」

「ああ」


 義兄さんが頷くと、アルドゥス爺さんが少し残念そうな表情を浮かべる。


「お主達にはまだ何も礼をしておらんが、儂とクララ様は先にブリトンに向かおうと思う。

 もちろん、このまま何もせずに別れるつもりはないぞ、お主等がブリトンに着いたら一度城下のシャルロット邸まで来て欲しい。我が主もきっと礼を言いたいだろうからな」

「ああ、分かった。船の手配は大丈夫か?」


 義兄さんが確認すると、爺さんがドヤ顔で頷いていた。

 だけど待て、そうしたら、これからログアウトする俺はクララたんの姿を一度も見る事ができないじゃないか! せめて寝顔、寝顔だけでも良いから、あの天使の顔を見てからログアウトさせてくれ!


「うむ、既に手配は済んでいる。5日後のブリトン行きの船に乗るつもりだ」

「そうか、寂しくなるな」

「全くもって同意見じゃ。お主達と一緒だと昔に戻った気分になって若返った気持ちになったぞ、ガハハハハ」


 そう言えば、この爺さんも脳筋の類だった。何となく義兄さん達、脳筋共の末路を見た気がした。


「私からもいいかしら? リック君とフランちゃんだけど、そろそろアーケインに帰らす必要があると思うの」


 クララとアルドゥス爺さんの今後の予定が決まったら、次に姉さんからリックとフランについて意見が出た。


「ああ、そうだな」


 義兄さんが頷く。

 当の二人は自分達の事を話題に出されて驚いていた。


「それでね。二人をアーケインに戻すにも子供二人だと心配だから、手が空いている人で送って欲しいんだけど」


 確かにコトカに来るときは子供二人だけで来たと聞いて、よく無事だったと驚いたが、帰りも二人だけで帰らすのは不安だった。

 それに、財宝だけ手に入れて、もう用済みだからと二人を放置するほど俺達は鬼畜じゃないと……思う。


「だったら、俺とシリウスで送ろう」


 話を聞いていたシャムロックさんが手を上げる。


「明日は仕事が休みだから、ログアウトせずにアーケインまで連れて行ってやるよ。シリウスも明日は特に用事なんてないだろ」

「え? いや、普通に仕事があるけど……」

「なら平気だな」


 シャムロックさんのジャイアニズムにシリウスさんは困った表情を浮かべたが、二人の子供に見つめられて仕方がなく頷いていた。


「あ、あの!」


 フランが声を出して席を立ち上がると、横のリックも一緒に席を立って、同時に俺達に向かって頭を下げた。


「皆さん今までありがとうございました。この御恩は忘れません」

「ありがとうございました」


 フランが俺達に礼を言うと続けてリックも俺達に感謝の言葉を述べる。どうやら二人が暮らす孤児院は躾が出来ているらしい。

 頭を下げる微笑ましい様子に、全員が優しい笑顔で二人を見ていた。


「それと、コートニーさん。ゴメンなさい」

「ん? リック君、どうしてあやまるの?」


 あれ? 突然、リックが謝ったけど、本当にどうしてかな? 何となく、もの凄い嫌な予感がするんだけど。そして、その心当たりが一つしかないんだけど……。


「えっと、コートニーさんのパンツを盗んで、カートさんの荷物にいれました。ごめんなさい」


 アバババババ!! ちょっ、馬鹿、お前、何で白状してんの?


「えっと……どうしてそんな事をしたのかな?」


 姉さんと被害者になりかけた義兄さんが顔を引き攣らせて、周りの皆も驚いていた。

 やばい、殺される。リックが詳細を語る前に逃げないと、確実にあの魔女に殺される。

 こっそりステルスを発動させて、ゆっくりと席を立ち、コソコソ逃げるように食堂を出ようとしたところで……。


「『アイスルート』!」

「ふぎゃー!」


 食堂の入口に差し掛かったタイミングで、魔女の魔法が発動。俺の足元が凍りついて身動きが取れなくなった。

 ステルス効果UPのマントを付けているのに、どうやって見破った? 我が姉ながら、ゲームの常識をブチ破る性格と行動は異常だと思う。


「レイちゃん。どこに行くつもりだったのかしら?」


 上半身だけで振り向くと、姉さんが笑顔で俺を見ていた。もちろん、その目は笑っていない。ついでに言うと、姉さんの背中から『ゴゴゴゴゴ!』と地響きに似た激しい効果音が付いているような気がする。


「えっと……トイレ」

「ゲームでトイレに行く必要がどこにあるのかしら? それに、レイちゃんは病院のベッドで管が刺さっているでしょ」


 お前、恥ずかしいからそれを皆の前で言うな。


「カート!」

「ああ、分かった」


 姉さんの命令で、義兄さんが動けない俺を捕まえ姉さんの目の前で土下座させる。

 そして、俺の横でリックの懺悔を聞いた姉さんが、土下座の下半身だけを凍らせて封じ込めた。普段の攻撃の命中率が悪いのに、なんでこういった細けぇ事は得意なのかな?


「さあ、レイちゃん。何でこんなことをさせたのかしら?」


 仁王立ちの姉さんが俺の前に立つ。その姿は裁きを下す閻魔大王。実の姉が鬼畜です。誰か助けて!

 周りを見回して目で訴えても、誰も助けようとしない。ギルドの皆が優しくて涙が出る。


「色々な諸事情が御座いまして、仕方がなくやった訳で……」

「どうして仕方がなくて私の下着をリック君に盗ませたのかしら?」


 ああ、皆の視線が痛い。そして正座をしている足が氷で冷やされて痺れを通り越して痛い。

 俺から仕掛けといて、リックの前で盗賊にさせないためとは、さすがに言えない。だから姉さんを手招きして、彼女にだけ聞こえる声で説明する。


「リックが盗賊になりたいと言ってきたから、諦めさせるために無理難題を押し付けたの。だから、悪気はないから許して」


 俺の説明に、姉さんが呆れて溜息を吐く。


「はぁ……仕方がないわね。許さないけど」


 あ、仕方がないのに許さないんですか? そうですか……。


「取り敢えず、今日はログアウトするから開放するけど、罰として今日ヨシュアちゃんに貸したお金は没収するわね」

「……え?」


 俺が、聞き返すと姉さんがにっこりと笑う。


「小遣いなしよ」


 優しく告げたけど、その目はもちろん笑っていなかった。


「それ没収されると、俺の財産がかなりピンチなんですけど……」

「大丈夫よ。ブリトンへ渡る船賃は出すわ」


 上目で訴えたけど効果なし。


「ここの宿泊費も払わないとダメなんですけど……」

「……頑張って稼いでね」


 まさに外道。この姉は容姿が美人で言動は可愛いのに、なぜ性格はここまで鬼畜に育ったのだろう。


「ローラさん……これ……」


 それでも俺が恐る恐る領収書を差し出すと、姉さんがそれを横から奪って目の前で破り捨てた。


「諦めなさい」


 そう言い残して俺の前から去り自分の席に戻った。




 ……ブチ! 俺の中で何かがキレた。

 ゲーム開始からずっと金を搾取されていたけど、俺もそろそろ限界だ。特に、そこの悪魔、身内だからって調子こくな! ヘプシで膣内洗浄するぞ。いや、ヘプシじゃ物足りねえ! ストロングヘプシだ!! 

 確かに姉のパンツをリックに盗ませたのは悪かったと思うけど、これもリックのためを思ってやったことで、決して邪な気持ちで命令した訳じゃない。

 大体、弟が姉のパンツを盗んで一体どうするんだ? 俺が姉さんのパンツをクンカクンカするのか? 一体どこのエロゲーだ。


 金を稼ぐと言っても、いや、一度行ったことのあるセイレーンの呼び込みで稼ぐか? 休憩時間にお嬢様に囲まれてハーレムするのも……有りだと思います。

 いや、待て! 手っ取り早く稼げる方法があるじゃないか。

 だって、目の前に成金共が居るんだぜ、こいつ等から搾取しないでどうする?


「はーい。皆に報告があります!」


 突然、俺が手を上げて叫ぶと全員が訝し気に俺を見下ろした。


「ポーションの値段が今から上がります」


 それを聞いた途端、全員がギョッとしたけど構わず先を続ける。


「ノーマルポーションが10g、ステータスUP付きが15g、ノーマルマナポーションが20g、ステータスアップ付きが25gになります」

「な、ちょっと待て、高すぎるぞ!!」


 一番ポーションの恩恵を受けている義兄さんが慌てて抗議するけど、お前ら余裕で買える金を持ってるだろ。


「嫌ならいいよ買わなくて、別のところで売るから。ふふふん」


 全員からブーイングが飛ぶ中、口笛を吹きながら素知らぬ顔で太々しい態度を取る。


「コートニーさん!」

「くっ! 我が弟ながら卑怯ね……」


 ヨシュアさんに何とかしろと言われて姉さんが悔しそうに顔をしかめる。ザマァ!

 その理由は分かっている。ニルヴァーナは強い。だけど、その強さの裏に、俺のポーションの存在がある事は、姉さんも含めて全員が認めている。

 それを逆手に取るのは我ながら卑怯と思うが、金の為なら味方すら売る。それが俺のクオリティー!!


「……分かったわ。ローラちゃん、悔しいけどお金を払って上げて……」


 悩んでいた姉さんが皆からの懇願に負けてローラさんに支払いを命じる。

 勝った、初めてあの鬼畜姉に勝った!


「だけどレイちゃん。これで済んだとは思わないでね」

「え?」


 先ほどまでしかめ面だった姉さんの顔が笑顔に変わる。

 その笑顔が怖い。どうやら何か別の罰が浮かんだらしい。


「罰として、ジョーディーちゃんの料理を一生懸命食べてね♪」

「…………オワタ\(^o^)/」

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