第26話 チョイ悪おやじからの依頼
……話がクッソ長げえよ。
略すとヘタレている間に縄張り奪われたってだけじゃねえか。
「あの人……死んだのね。私を実の娘の様だって言ってくれた良い人だったのに」
ギルドマスターが語った後、姉さんが前のギルドマスターが死んだ話を聞いて溜息を吐いた。
姉さんを娘に持ちたいとかなんて勇気ある男だな。俺の父さんは姉さんを娘に持ったおかげで、四十代なのに既に総白髪だぜ。姉さんが嫁に行くときなんて涙を流しながら魂抜けてたし。
「それで、今回の依頼の内容は?」
ベイブさんがギルドマスターに尋ねると、一度頷いてからその場に居る全員を見回す。
「依頼の件に戻そう。今回の汚職事件で捕まった盗賊ギルドのメンバーにおやじの息子は居なかった。おそらく事前に逃亡したんだろう。そして、元手下を捕まえて尋問した結果、あいつ等の居場所が分かった。奴等はこの街の外れにある元貴族の屋敷をアジトにしているらしい。
明日の晩、そこで取引があると情報を掴んだ。俺達が正面から襲撃すると同時に、お前達には背後から襲撃しておやじの息子を捕らえて欲しい」
「そっちの人数と敵の人数は?」
「俺達からは十五人、これが今の俺が動かせる人数だ。敵の数は騎士団に捕まった人数から逆算して恐らく三十人前後。しかしお前達が相手にするのは十人前後だと思う」
「報酬は?」
「一人10gでどうだ?」
報酬の大きさに全員が驚く。
ジョーディーさんに至ってはにへらと笑いを浮かべているけど、まず俺に金を返せよ。
「羽振りが良いわね」
姉さんが金額の多さに何かがあると警戒した。さすがは山ガール、登山では危険感知が重要。
「それなりに危険な依頼だし、奴等を捕らえることができれば十分安い投資だと思うが?」
ギルドマスターの話が終わると、全員が依頼内容と報酬について各自で考え黙り込む。ちなみに俺はもう考えが決まっているから黙っているだけ。
「俺はこの依頼を受けたいと思うが、皆はどうする?」
最初に義兄さんが賛成に一票入れる。どうやら依頼に乗り気みたいだ。経験値が欲しいだけとも言う。
「私も賛成です。この依頼受けましょうよ」
「俺も問題ない」
「私も賛成。報酬も良いし♪」
チンチラ、続いてベイブさんとジョーディーさんも賛成に票を入れる。
「コートニーとレイは?」
義兄さんから問われて、姉さんが手を顎に添えて首を傾げていた。
「うーん、そうね……何か引っかかるんだけど、あの人の仇は討ちたいわね。レイちゃんはどうするの?」
俺は姉さんに答えず、にやけ面のギルドマスターを見ていた。
「チョイ悪おやじ、一つ質問がある」
「チョイ悪? おやじ? まだ親父って年じゃねえよ。で何だ?」
自覚しろよ。年齢は知らないけど、どこからどう見てもおっさんじゃねえか。しかも眼帯なんてして厨二病か? いい年して恥を知れ。
「報酬は要らない。その替わりに奴等が取引する予定の荷物を全部貰うという条件だったらどうする?」
それを聞いた途端、笑顔を浮かべていたギルドマスターが真顔になって俺を見た。同時に先ほどまでの穏やかだった空気が一変して緊迫した空気が部屋を包む。
その様子に俺とマスターを除いた全員が驚いていた。
「その荷物をどうするつもりだ?」
ギルドマスターは再びにやけ面に戻ったが、内容次第では敵になるぞと目が語っていた。これでこいつも麻薬について把握していると確信できた。
「それはこっちが聞きたいな。先ほどまでの会話で重要な話をしなかったのはわざとか?」
ギルドマスターが一つしかない目で俺を見つめる。
「何のことだ?」
「今回の汚職事件……汚職は事件の一部でしかない。奴等の真の目的は麻薬を使った街の支配だったはずだ。違うか?」
「…………」
麻薬という言葉に全員が驚くがそれを無視して、被っていたフードを勢いよくまくり素顔を晒してギルドマスターを睨み返す。
「ハッキリ言おう。もしあんたが麻薬を使って商売をするのならこの依頼は断る。俺は犯罪の片棒を担ぐつもりは一切ない」
俺とギルドマスターが睨み合って一触即発の空気が2人の間を漂う。
うーん。冒険者ギルドでメンチスキルを取っとくべきだったな? ネタスキルだと思っていたけどこの場では一番使えそうだ。あ、スキルスロットが無ぇ……。
それでも威圧で負けたつもりはない。長い睨み合いに屈したのはギルドマスターだった。
「まずは詫びよう」
「……ん?」
「正直、お前をなめていた。凄いのはコートニー様で、弟のお前はただのおまけ程度だと思っていた。短期間でよくここまで情報を入手できたな。感づいたのは何時だ?」
どうやら雑魚だと思われていたらしい。確かに戦闘では雑魚だから反論できない。ぐぬぬ。
「薬が犯罪に絡めば麻薬と相場は決まっている。少し考えれば誰だって気づくだろ」
だよね? と皆を見ると全員首を横に振っていた。あるぇ? 気が付いたの俺だけ?
「話さなかった理由は知る必要がないと考えていたからだ。麻薬について知っていたのなら全てを話していた」
「そろそろ、その麻薬について教えてくれないかしら?」
姉さんが俺達の間を割って会話に入って来たから、皆に俺が掴んだ麻薬に関する情報を全て話した。
それを聞いた全員が想像の範疇を超えた被害内容に驚く。
「ひどい話ね」
「一般市民を麻薬漬けにして、金がなくなったら奴隷として売り払う? やることが下劣過ぎる!!」
話が終わると、姉さんや義兄さんを始めとして、他の皆も酷すぎる内容に憤りを隠せないでいた。
「俺からは何も付け加えることはないな。見事な情報収集能力だ、うちのギルドに欲しいぜ。暗殺ギルドの目的はどうやって気がづいた? この情報はこっちが長い間調べてやっとわかったことだぞ」
「そうなの? 証拠なんてないよ。何となく気が付いただけだけど、合ってた?」
それを聞いてギルドマスターがガクッと首を落とす。あれ? 何で皆も呆れているの?
「勘かよ、勘弁してくれ。こっちはその情報を得るために一体どれだけ犠牲を払ったと思っているんだ?」
「知らないよ。それで麻薬をどうするつもりだ?」
俺の問いにギルドマスターは鼻で笑う。
「もちろん破棄だ。こっちはおやじの後を継いで元の盗賊ギルドに戻すつもりなのに、麻薬で商売なんてした日にはおやじが蘇って殴りかねん。お前はどうなんだ?」
お返しにこっちも鼻で笑ってやる。
「こっちも破棄だ。元々あんたの本音が知りたかっただけで、麻薬なんてどうでもいい」
俺が言い返すとギルドマスターが天を仰ぎ、ソファーにぐったりと倒れた。
「お前、一体何者だ? 気が付いたら全部こっちのネタを曝け出しやがって」
「一応マスターと同じ同業者だと思ったけど……えっと先輩?」
「今頃になって疑問形で敬うんじゃねぇよ!! こんな後輩、死んでも要らねえ」
そりゃ酷い。女難に遭えとか呪ったけど、一応麻薬で商売しないって処は敬意を払っているんだけどな。
「それで姉さんは納得した?」
何か引っかかると言っていた姉さんに確認すると笑って頷く。
「ええ……そうね。話を聞いたとき何か裏事情がある気がしたけど、レイちゃんのお蔭でスッキリしたわ。私もこの依頼を受けることにするけど、レイちゃんもでしょ?」
「参加で」
「ちなみにひとつ聞くが、俺が麻薬のことを最後まで話さずにいたらどうしていた?」
ギルドマスターが俺に質問したけど、そこまでは考えてなかったな。
「さあ? 何となくだけど、皆が突入した後でそのアジトもろとも燃やしてたんじゃないかな……多分だけど、それが一番手っ取り早いし」
皆は死んじゃうかもしれないけど、俺達プレイヤーは生き返るし、悪人は焼却ってことでって……あれ? 皆、何で俺を見てドン引きしているんだ?
「冗談だよ」
「それ冗談に聞こえないからな」
直ぐに義兄さんから突っ込みが飛ぶ。
ギルドマスターは俺を物凄く嫌な目で見ているし、他のメンツはさらに引いている。冗談なのに……いや、多分やっていたと思うけど。
「まあいい、明日の夜だ。場所は元貴族の屋敷の近くに俺達の隠れアジトがある。そこに来てくれ」
「分かった。明日の夜だな」
その後、ギルドマスターと義兄さんが詳細を確認して、後は解散するだけになったところで、ギルドマスターが俺に振り向いた。
うっ、何か嫌な予感がする。
「そうだ、レイ」
「何?」
「明日の夜来るときはアサシンとして参加してくれ」
「はぁ?」
コイツ、何言ってるの?
さすがにこれ以上偽物を演じるのはまずい。確実に本物に殺される。いや、もう殺されるのは確実だけど……。
全力で首を横に振って拒否するが、その様子にギルドマスターが本当に嫌な笑顔を浮かべた。
「相手は元盗賊ギルドと暗殺ギルドだ。こっちも盗賊ギルドだけではなく、異邦者から暗殺集団を雇ったように見せかけたい。頼んだぞ」
どうやら、俺を外部からの助っ人として、牽制の道具として使うつもりらしい……。
理由を理解して手で顔を覆い天井を見上げて恨むように溜息を吐く。
「……追加料金はもらうぞ」
「期待しておけ」
そう言うと、ギルドマスターはサロンを出て行った。
ギルドマスターが出て行ってからの俺達は慌ただしかった。
全員が欲しいスキルを手に入ったとしても如何せん、取ったばかりだとレベル1なので弱い。
俺以外の皆は木人でスキルを上げようと、急いで練習所へ向かった。久々に登場した木人さん、ご苦労様です。
訓練所へ行く必要のない俺は薬と毒を作成することにした。そもそも上げるスキルがない。
だけど考えてみたら調合ギルドは閉鎖中、この宿屋では女将さんが嫌な顔をする。そして今の時間は夕方前だから、街の外で作成しようにも作る頃には夜になる。今から街の外に出るのはさすがに遠慮したい。
ふむ。いざ作ろうと思ったら、作成する場所がドコにもねえ。
諦めようと思ったけど少し考えたら調合できる場所がピコーン! と脳裏に浮かんだ。
そうだ! 婆さんの家で器具を借りよう。何時でも遊びに来いって言っていたし、ついでに婆さんのアレンジレシピも教えてもらおう♪
俺は宿を出ると、夕暮れ前の街を婆さんの家に向かって移動した。
婆さんの家の前まで足を運ぶと、今度は何で呼ぼうか考える。正直、毎回ネタを考えるのが面倒くさい。
だけどネタが思いつかないからという理由だけで引き返すのもアホなので、扉を叩いて婆さんを呼んだ。
ドン、ドド、ドンドンッ、ドンドン、ドンッ。
「誰じゃ?」
おや? 前回までと比べて反応が早いな。糞が詰まってトイレに入れなかったか? クラ○アンにでも頼んで直してもらえ。
「いらっしゃいませ。本日のお勧めは毒入りダージリンティーに毒入りモンブランで御座います。一口食べれば天国に行く事間違い御座いません。扉を開けてください」
ウェイターみたいに言ってみた。
しばらくすると家の中から「……うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」と婆さんの笑い声が聞こえた。これで三連勝、もう敵じゃないな。
笑い声が止まると、扉が開いて婆さんが出てくる。
「相変わらずじゃな、お主は笑わせないと気が済まんのか? まあ、入れ」
「いや、別にそういう訳じゃないんだけどね。自分でも何で笑いを取ってるのか正直、分からん」
うーん、一度やったら後に引けないって感じ?
「ふむ、まあ良い。とっととお上がり」
「お邪魔します」
婆さんの後に続いて中に入る。婆さんは腰を摩りながらキッチンへ消えて行った。
前回笑いすぎで椅子から転げ落ちた腰がまだ痛いらしい。自分で薬を作って治せよ。
相変わらず整理された奇麗な部屋で、何時もの指定席と化した椅子に座る。フードは脱いで横に置いた。
「ほれ、毒入りじゃないが何時もの茶じゃ」
「おお、ありがとう。戴きます」
ズズズッ。
茶がうめぇ。
そういえばこの前もらった茶はまだ飲んでない。ログインしてから忙しかったのが理由だが帰ったら自分でも入れよう。
「しかし、この時間に来るのも珍しいのう」
「別に夜這いに来た訳じゃねえぞ」
「うひゃひゃ。そりゃ残念じゃ」
何ドキドキしてんだよ、ババア!
「それで今日は何の用じゃ」
ポン! 俺はひとつ手を打ってから要件を思い出した。
「おお、そうだった。婆さん、薬と毒を作りたいから機材を貸して」
「ん? 調合ギルドで借りられたはずじゃが?」
「それが……」
俺は調合ギルドの閉鎖や、素材屋のメス豚の妹さんから聞いた麻薬の惨状について婆さんに教えた。
「ふむ、成程。そんな事情なら仕方がないのう。良いぞ、勝手に使うがよい」
「ありがとう、さすがは婆さんだ。後千歳若かったら求愛していたぞ」
もちろん嘘だけど。
「……お主はわしを何だと思っとるんじゃ?」
すかさず突っ込みが入ったけど少し照れているね。まんざらでもねぇなババア。
「しかし、あの娘も姉のおかげで不幸な人生じゃのう。少し助けてやるか」
あの娘というのは素材屋の店主だろう。
確かにあんな姉を持ったら人生狂うか……あれ? 他人の人生に影響を与える存在と考えると俺の姉さんも同類か? ……これ以上考えても落ち込むだけだからもう止めよう。
「それが良いと思うよ。あの人も頑張っているけど、やっぱり一人じゃ荷が重い気がするし」
婆さんが手伝ってくれるならあの人も少しは楽になるだろう。
「何じゃ? お主は助けてやらんのか?」
「助けてあげたいんだけど、それがねぇ……」
婆さんなら話しても大丈夫だろう。明晩予定の襲撃について話した。
「なるほど。それで早急に薬と毒が必要なのじゃな」
毒は要らねえよ。
「まあね。やっぱ根本を絶たないと患者は増える一方だし、治療はそっちに任せるよ」
「うむ、それがええじゃろう。病気は根本を絶つのが基本じゃが、それが医者以外の場合も時にはある。そっちはお主に任せるとしようかのう」
さすが年寄りの言う言葉には含蓄が含まれているね。義兄さん達も本能で生きるんじゃなくて、少しはこのババアを見習ってほしい。
「それにわしも盗賊ギルドの先代には命を助けてもらった事があるからのう。どれ、あまり時間もないし、わしも手伝おう」
「助かるよ」
俺と婆さんは茶を一気に飲み干すと、薬と毒の作成に取り掛かった。
「ほれ、そうじゃない。もう少し火の勢いを落とさんかい。それじゃ効果が減少するぞ!」
「わっとっと。こんなもんかな」
「うむ。その火加減を維持するのじゃ」
現在、俺は婆さんの指導の下、薬と毒を作成している。
やはり今まで大ざっぱに作っていた練習とは違い、実際に使う物を作成するとなると丁寧に作らないと駄目らしい。
今は魔力毒に挑戦中だが、火力が強すぎて婆さんに怒られていた。
「それで、このキコの実は何時入れるんだ」
「うむ、そろそろ頃合いじゃな、準備は先にしておけ。実を砕いて種を取り出し、その種だけを砕いて使うんじゃ」
俺は作業台の上に固いキコの実を置いて、婆さんから借りた木槌で叩く。
殻は砕けたが、力を入れ過ぎたのか、汁がピッ! と飛んで右目に入った。
「目が!! 目があぁぁぁぁ!!」
汁がしみて目が焼けるように痛い。とてもじゃないが目が開けられない!
俺はどこかの元王族で、名前が糞長い秘密工作員の様に目を押さえて暴れまわった。バ○ス!
「何をしとる! とっとと目を洗わんか、つぶれてしまうぞ!!」
「水、水はどこ? 目が見えない!!」
「暴れるな! おぬしの右手前にある!」
右手で目を抑えながら左手を伸ばして水の入った桶を寄せると、桶に顔を突っ込む。
ブクブクブク
洗ってもいまだに視野がぼやけてじりじりとした痺れが残るが、何とか失明は免れた。
教訓! 顔射は目にぶっ掛けたら駄目だ!
「ふぃーー痛かった。ありがと婆さん」
「うむ、キコの果実は酸味があり目に入ると物凄く染みるんじゃ。そのまま放置したら目がつぶれるぞ」
洗っても右目はまだ開きそうになかった。仕方がないので右目をつぶったまま作業を再開する。背後では婆さんの講義が続いた。
「種には魔力を減らす効果があるんじゃが、果実は酸味があるだけで何の役にも立たん。普通のレシピでは殻を剥いてそのまま入れるが、それだと効果は低いし飲めば酸っぱすぎて飲めたものじゃない」
「でもこれだけ痛いんだから毒性はあるんじゃないの?」
「刺激があるから毒だと思うが酸味が強いだけじゃ。人間は刺激が強すぎるのを拒絶するからのう、痛いのはそのせいじゃ」
「ふーん、なるほどね~。あれ? 果汁が固まっているけど何で?」
何時の間に飛び散ったキコの実の果汁が、液状からやわらかいゼリー状に変わっていた。水分が多かった果実の方も触るとグミのような弾力感がある。
「それもキコの実の特徴じゃ。固い殻に閉じられた果実は空気に触れると一定の硬さに凝縮して固まる。それが目に入ると危険だと言った理由じゃ。また水に入れれば溶けるぞ」
毒がなくて目に入ると痛く、そしてグミ状に固まって水で溶ける……あれ? どこかで似たようなのを見た気がするぞ? 確か……。
「そうか!!」
ゲームにログインする直前まで見ていた動画の中にこの果実が使えそうなヒントを思い出した。
「婆さん!! この果実の酸味を消して刺激だけを残す方法はあるか?」
「ん? そうじゃのう。酸味は完全に消すことはできないが減らすことは可能じゃ。刺激に関しては酸味と関係するから、色々と弄る必要はあるが、できない事はないぞ」
興奮していた俺はその回答を聞いてさらに興奮する。
「だったら作り方を教えてくれ!」
「何に使うんじゃ?」
「この果実を使って……」
俺が興奮している理由が分からない婆さんが逆に質問してきたから、俺のやりたいことを教えてあげた。
「うひゃひゃひゃひゃひゃうひゃひゃひゃひゃひゃ……」
俺の考えた使い方を聞いて婆さんが腹をよじって笑っていた。
確実に二分以上笑って何とか収まったが、涙をぬぐっては時折「ぐふっ」と笑いが口から漏れていた。
「うひゃひゃひゃ。お主、わしを笑い殺す気か?」
「あ、ウケた?」
「ウケるも何もないわい! お主は馬鹿か天才のどちらかじゃ!! 実に面白い、お主の使い方なら確実に効果がある」
「じゃあ作っても良い?」
「うむ、そっちはわしがやろう。お主は他に必要な物を作ると良い」
さすが毒マニア。婆さんが凄くノリノリだから任せよう。俺はそれ以外の薬と毒の作成に取り掛かった。
夜遅くまで掛かったが、何とか予定数の薬と毒を作成した。
マナポーションは婆さんのアレンジでスポーツドリンクレモン味のマナポーションになったが、ジョーディーさん用に一本だけ通常レシピ通りに作った不味いマナポーションを作った。
マッドスープの仕返し、訂正、お礼はきちんとしないと駄目だろう。
姉さんの分? 山ガールの危険感知を舐めちゃいけない。この程度のいたずらだったら余裕でスルーする。
俺の考えたキコの実を使った果汁グミは、婆さんが試行錯誤の末、試作品を五個作成して今は俺の胸ポケットの中にある。この作り方も婆さんからレシピをもらったから次は自分で作成が可能だ。
「婆さんありがとう、おかげで助かったよ」
「うむ、わしも久々に楽しかったわい」
玄関先で婆さんに礼を言う。婆さんも笑顔で見送っていた。
「それじゃ、また来るね」
「明日は頑張るんじゃぞ」
「もちろん、あれを使った結果も報告しに来ないと駄目だしね」
「うひゃひゃひゃ、楽しみに待っとるぞ」
婆さんに見送られて夜のスラムを後にした。
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