第22話 風評リンチ
俺とチンチラが宿に入ると、入口のロビーで姉さんが眼帯を付けた四十台ぐらいの男性と会話をしていた。
眼帯の男性はチョイ悪おやじ風のダンディなおっさんだけど、雰囲気はやくざ。姉さんと同種だと思う。
「やっほー。チーちゃん、レイちゃん。おかえり」
俺達に気が付いた姉さんが声を掛けると、チョイ悪おやじが振り向いて俺を上から下までジロっと見てから、姉さんに話し掛ける。
「この方が?」
「ええ、そうよ」
姉さんが頷くとチョイ悪おやじが俺に近づいてきた。
「今回の活躍は聞いています。何かある時は是非いらしてください。できる限り協力します」
チョイ悪おやじは丁寧に礼を言うと俺の顔を見て笑顔になった。
意味が分からない。何となく力量を観察されている気がするけど、俺はおっさんに興味はない。ケツなら他を当たれ。
「……誰?」
「昨日行った盗賊ギルドのマスターよ。今回の事で協力してもらったの」
俺の質問に姉さんが教えてくれた。
チョイ悪おやじは普通に極悪おやじだったか。関わるのは避けよう。俺はあくまで一般人。老い先短い人生で望むは、平平凡凡なエロ生活。
「昨日は姉さんと月を見に散歩に出かけただけだけど、一体何の事だ?」
「……そうですか。でしたらそういう事にしときましょう」
俺が肩を竦めてとぼけると、盗賊ギルドのマスターがニヤリと笑って頷いた。
「それではコートニー様、これで失礼します。今回の件は本当にありがとうございました」
「ええ、こちらこそありがとう。また、何かあったらよろしくね」
盗賊ギルドのマスターは、姉さんに礼を言うと宿から出て行った。
誰か、やくざに礼を言われる姉を持つ弟の気持ちを理解して欲しい。
「それで、お姉ちゃんは一体何をしたの?」
今まで経緯を見ていたチンチラが姉さんに尋ねる。
「ぷっ!」
チンチラの「お姉ちゃん」を聞くたびに、これほど似合わない物はないと心の中で笑う。
「そうね、話が長くなりそうだからサロンへ行きましょう」
姉さんは俺を軽くにらんだ後、サロンに入ったので俺達も後を付いていった。
サロンに入ると義兄さんが死んでいた。実際はどこか遠くを見て死んだようにソファーでひっくり返っているだけ。時折、乾いた笑い声が聞こる様子は詐欺にあった直後の被害者。
「まあ、やったのは情報のリークだけなんだけどね」
俺達が適当な場所に座ると、姉さんが笑いながら今回のあらましを教えてくれた。
まず姉さんがやったのは情報の整理ということで、深夜の打ち合わせが解散した後、俺が持って帰った書類を一人で全部調べ上げた。今朝、姉さんが珍しく起きていたのは、徹夜明けだったらしい。
そして、俺とチンチラが出た後にベイブさんはメス豚の見張り。他のメンバーは、昨晩俺と姉さんが行った潰れかけの盗賊ギルドへと向かった。
盗賊ギルドで先ほど居たギルドマスターと交渉して、姉さんは調合ギルドとスキル高騰の元凶であるギルド庁の不正暴露と国が関係者を逮捕すること。盗賊ギルド側は調合ギルドと組んでいたライバルである別の盗賊ギルドの壊滅と、お互いの利益が合意して組むことになる。
姉さんはギルドマスターに資料を見せて、汚職者リストの情報を汚職に関わっていない官僚と、アーケインのマスコミに盗賊ギルド経由でリークした。
姉さんが極悪なのはその先で、マスコミリークだけだと国は直ぐに動かないと考えて、中央通りに溢れていたプレイヤーにスキル高騰の原因を公開、それを汚職リストにはなかった、生産ギルドと冒険者ギルドに訴えればスキルが安く手に入る可能性があることを示唆した。
やっていることは暴動を誘発させるテロリストと同じだと思う。
ちなみに、プレイヤーに接する際、女性には義兄さんを男性は姉さんとジョーディーさんを宛がった。プレイヤーにとって良い情報なのに加えて、美男美女。おまけのロリに言われたら、誰だって一度は話を聞くと思う。
その結果、ナンパ扱いされたり、逆にナンパされたりで、精神的に疲れた義兄さんはボロボロになったらしい。ジョーディーさんもぐったりと疲れて先にログアウトして逃げていた。
「なるほどね。調合ギルドと比べて生産ギルドと冒険者ギルドのスキルの値段が低かったのは、汚職に汚染されてなかったって事か」
「その通りよ」
俺の質問に姉さんはお茶を飲みながら答えて、話を続ける。
プレイヤーへの情報リーク後、彼等はそれはもう怒ったらしい。プレイヤーからプレイヤーへ、さらには公式掲示板、外部掲示板へと情報は広がって、運営側はGMコールが鳴りやまない状況に陥り、公式掲示板では「現在調査中ですのでお待ちください」と、深夜にも関わらずプロデューサー自ら書き込んでいる状態になっていた。
それと同時に、多くのログインしているプレイヤーが生産ギルドと冒険者ギルドに押し寄せた。
その間、盗賊ギルドでは姉さんの指示に従って、落ちぶれているとはいえ辛うじて残っていたギルドのネットワークを駆使し、アーケインの街に住んでいるNPCに調合ギルドとライバルの盗賊ギルドが行った人身売買の話を広めた。
特にスラムでは実際に人身売買で家族を奪われた人が多く居て、大勢の市民が立ちあがり調合ギルドを取り囲んだ。
プレイヤーが生産ギルドと冒険者ギルドに押し寄せ、アーケインの市民が調合ギルドを取り囲み、暴動寸前のところで事態を重く見た国王が騎士団を動員。汚職に関わった全員をその場で更迭、逮捕。全部のギルドを一時封鎖。
プレイヤーにはスキルの価格を下げる事を、NPCの市民には人身売買で売られた市民の救出に加えて、不正に関わった側の盗賊ギルドの解体することを約束したらしい。
それとベイブさんが見張っていた調合ギルドのメス豚、改め、ジョリア・コーネックは、NPCの市民が調合ギルドを取り囲んだ時にどさくさにまぎれて逃げようとしたが、ベイブさんが大声で「豚が居るぞ!!」と叫ぶと、直ちにスラムの住人に取り囲まれて今までの恨みを込めてぼこぼこにされたところを、騎士団に捕獲された。
その時、メス豚の額には「肉」の字が書かれていたとか……。
「これで、事件のあらましは以上かな。どう? すっきりした?」
姉さんがチンチラに顔を向けて笑う。
「あははははは。えっと……どうしよう」
俺に聞くな、知らんよ。事件の大きさに動揺しているけど、姉さんが切れた時点でもう手遅れだ。
だけどこれでスキルは安くなると思うし、一件落着かな。後は……。
「チンチラ、手を出して」
首を傾げて手を出すチンチラに10gを渡す。
「何これ?」
チンチラは不思議そうに10gを見てから俺に尋ねた。
「調合スキルに奪われた金」
「え?」
「これは昨日の夜にギルドから拝借した金だから、俺のじゃないし」
「えええ、悪いよ~」
「気にしない、気にしない」
慌てるチンチラをおかしく笑うと、姉さんがジト目で俺を見ていた。
「レイちゃん。一体幾ら取ってきたの?」
「ん? 2P程かな?」
盗んだ金額を聞いたチンチラが驚いて、姉さんは呆れた様子で肩を竦めた。
「駄目でしょ。人様の物を取っちゃ」
「あれだけ働いたんだから当然の報酬だな。例え姉さんからの依頼だとしても、ただ働きはごめんだからね」
今度は俺が肩を竦めて、それを見た姉さんが苦笑いをする。
「あははははは。やっぱり、この姉弟は怖ぇ」
あ、義兄さんが居たのを忘れてた。
姉さんの話が終わると、俺以外の皆は部屋に戻ってログアウトをした。
義兄さんは物凄く疲れている様子だったけど、明日の仕事に影響はないのだろうか。パン屋って朝早くないのか?
俺は皆がログアウトした後、スキルをもらいに婆さんの家へと向かった。
現実だと深夜の1時半頃だから、俺もスキルを手に入れたらとっとと寝る予定。毎晩ゲームで夜更かしは生活習慣が乱れている証だと思う。引きニートまっしぐらで親も泣く……いや、親の教育が悪いから子供がニートになるのだろう。
婆さんを呼ぶときのセリフを考えながら、まだ騒動の影響が残る街を歩いていると、何時の間にか婆さんの家の前まで到着していた。
スラムの路地奥に建っている小さな家は相変わらずひっそりとそこにある。その殺風景な入口の前に立つとドアを叩いた。
ドンッドンッ! ドンッドンッ!
「……誰じゃ?」
ドアを叩くと前回と同じように少し間があってから、婆さんの声が聞こえた。相変わらず長いクソでもしていたか?
「お嬢様、毒の修行を終えたイケメンで御座います。どうか扉を開けてください」
執事風に言ってみた。
しばらくすると家の中から「……うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」と笑い声が聞こえた…………勝った。
長い笑い声が止まると、扉が開いて相変わらず不気味な笑みを浮かべた婆さんが顔を出した。
「久しいのう。まあ、入れ。お嬢様なんて言われたのは子供の頃以来じゃ。ひゃひゃひゃ」
おや? この婆さん、実はお嬢様? それが何でスラムに居る? まあロクな人生じゃなかったのは確かだろう。
「お邪魔します」
家主と違ってクラッシックな雰囲気の奇麗なお家。
「適当に座れ」
「あいよ」
前回と同じ椅子に座って婆さんが出す茶をずずっと飲む。相変わらず無駄にうめえ。
「婆さん、俺もこの茶が欲しいんだけど。これってどこで売ってるの?」
「なんじゃ気に入ったか? これはわしの友人から毎年もらっている自家製だから、ここらじゃ買えんぞ」
聞いてがっくり。
緑茶の清涼感に紅茶の香り、それに何のハーブか分からないけど飲むと喉がスッとする。現実でも売ったらきっとセレブの間で人気になるだろう。その時はもちろんぼったくり価格で売るけどな。
「それは残念だ」
「まあ、一人じゃ飲みきれんから、少し持ってけ」
「おお、ありがとう。代わりにこれ上げる」
ごそごそと鞄からゴブリンの洞窟で手に入れた調合の材料が入った袋を婆さんに差し出した。
「ほう、赤クルミにビンチョウの葉、それにこれはサントの根か、ここらじゃ少し遠くに行かないと取れない品じゃな。遠慮なく貰っとくわい」
中身を見て婆さんが喜んでいた。素材の使い道は名前を聞いてもさっぱりだけど、喜んでいる様子から全部が毒の素材だと判断する。
「お気に召したようで何より」
本当に毒好きな
「それで、修行は終えたのか?」
「うん、終わった」
「そうか、それじゃあスキルをやろうかね。わしの前に掌を上にして両手を出すのじゃ」
言われるままに両手を差し出すと婆さんがその手を握った。少しひんやりする。実はゾンビとか?
「ひゃひゃひゃ。若い男と手を握ると元気になるのう」
婆さんが俺の手を握ると変な事を言ってきた。聞いた途端に何となく生気を吸い取られた気がする。やはりゾンビだったか。
「婆さん、俺に惚れるなよ」
「残念じゃがとっくの昔に惚れとるのう」
俺はマダムキラー改め、ババアキラーの称号を得た。マジいらねえ。
「そうか……俺があと三百年歳取っていたら求婚したんだがな」
激しく嘘。
「そこまで歳はとっとらん」
「ロリコン相手だったらちょうど良い歳だろ」
「ひゃひゃひゃ。お主は年下好みか」
「いや、マダムキラーだから歳下には興味ないね」
「ひゃひゃ、面白いのう。そろそろ、いい加減にスキルを渡したいんじゃが、いいか?」
「え? 何時でもどうぞ?」
こっちはずっと待っているのに何をやっているんだろう。早くしてくれ、生気を吸い取られて干からびる。
「では行くぞ」
婆さんが目をつぶり集中すると婆さんの手から何かが流れ込んだ気がした。嘘、実際には何も感じない。何となく雰囲気だけでそう思った。
譲渡が終わったのか、婆さんが目を開ける。
「これでスキルが手に入ったはずじゃ」
婆さんが一息つくと俺の手を放した。コンソールで確認すると確かにスキルが手に入っていた。
しかも修行のおかげで調合士スキル、毒作成スキル、薬草学スキルが最初からレベルが5だった。それと、事前に取っていた生産スキルも一気に5まで上がっていた。
久しぶりのレベルとスキル、はいドン!
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レイ Lv9
アイアンスティレットAGI+3
取得スキル
【戦闘スキル<Lv.10> VIT+1】【生存術<Lv.10> INT+1】【危険感知<Lv.10> INT+1】【盗賊攻撃スキル<Lv.10> AGI+1】【盗賊隠密スキル<Lv.11> DEX+1】【生産スキル<Lv.5>】【サバイバルスキル<Lv.5>】【調合士スキル<Lv.5>】【毒作成スキル<Lv.5>】【薬草学スキル<Lv.5>】
アクション
生存術・危険感知・ステルス・目くらまし(唾吐き)・バックステップ・バックアタック・足蹴り・薬作成・毒作成
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「さて、これで終わりじゃ。御苦労だったのう」
「ういうい」
婆さんの話だと毒作成スキルを持っている奴はそんなに居ないらしいから、これで俺もチート持ち。
ベタでありがちだが、異世界転生チートハーレム勇者様小説のテンプレ俺TUEEEEになるってことだ。
例えば……。
武器に毒を塗って攻撃すれば、気が付かない間に相手の体力が減っていた。
毒に気付いた敵が……。
「くっ、卑怯な。このチーターが!!」
そして、俺が……。
「わははは。どうだ気が付かない間に死にそうになった気分は、このままあがいて死ぬがよい!!」
とか言うと、相手が悔しそうに顔を歪める。
きゃー鬼畜! だけどそんな俺が好き。なんて妄想していたら、婆さんがとんでもない一言を言い放った。
「ちなみに毒は武器に塗れんぞ」
「…………え?」
あ れ ? こ い つ 何 言 っ て る の ?
「……パードゥン?」
「どういう意味じゃ?」
「もう一度言って」
「じゃから、毒は飲み薬じゃ」
俺のチーターとしての妄想はガラガラと音を立てて崩れていく。思わず手で顔を覆って天を仰いだ。
「ホーリーシット!! マジですかーー!」
「うむ。ポーションの様に相手の体に投げても効果はない」
正直に言おう。もし飲み薬と始めから知っていたら、俺はこんなスキルは要らなかった。戦闘中にどうやって飲ませれば良い? 戦っている最中に「粗茶ですがお一ついかが?」とか……馬鹿か!!
「まあ、気にするな。いずれ役に立つ時が来るはずじゃ。ひゃひゃひゃ」
婆さんは騙しが成功したかのように笑っていた。やっぱりこの婆さんには叶わない。
婆さんに向かって肩をすくめる。このモーションの意味は「良くも騙したなクソババア」だ。
「最後に騙された気もなくもないが、ありがとう。あのメス豚のせいで大変だったけど、婆さんと出会えたのはラッキーだったよ」
確かにあのドワーフはロクでもない豚だったけど、唯一良かったのは婆さんと出会うきっかけを作ってくれた事だと思う。留置所で達者に生きろよ。
「ふぉふぉふぉ、あのドワーフにも感謝じゃの」
「まあ、今頃は豚箱に入っているだろうけどね」
「おや? 何かあったのか?」
俺の返答に婆さんが首を傾げた。可愛くない、むしろ醜い。
婆さんに聞くと今日の出来事を知らなかったので、ギルドの閉鎖や逮捕劇を教えてあげた。
「ほう。そんな事があったのか。どうも今日は騒がしいと思ったわい」
引きこもりババア、少し散歩でもして歩かないと寝たきりになるぞ。
「まあ、これも俺と姉さんのせいなんだけどねぇ……」
遠い目をしてしみじみと言うと婆さんが興味を持ったらしい。その目が笑っていた。
「面白そうな話じゃのう。ほれ、話してみい」
「面白い話かもしれないけどドン引きするよ。前に聞かせた人達は明らかに引きつっていたし」
「最近は他人の話だけが唯一の楽しみじゃ。とっとと話さんかい」
まあ、婆さんだったら平気だろう。それに秘密主義の人だから他人にホイホイ話すこともないと思う。茶を一口ずずっと飲んでから、昨晩からの騒動の裏事情を教えてあげた。
メス豚の落書きの場面では椅子から転げ落ちるぐらい笑っていた。
爺の話になると笑いすぎて本当に椅子から転げ落ちて、危うく殺しかけた。
姉さんの話になると、今度は真剣に聞いていた。聞きながら腰を摩っていた。どうやらコケた時に痛かったらしい。
話が終わると婆さんはお疲れ様と言って、新たに茶を入れてくれた。
「お主も面白いが、お主の姉も面白いのう。ひゃひゃひゃ、一度会ってみたいわ」
「姉さんが毒に興味を持ったら紹介するよ。まあ存在自体が毒だけどね」
「シャルイのおやじは立派な人物じゃったのにのう。素人が作った薬でも「これからも頼む」と言って喜んで買い取ってくれたのに、あの馬鹿息子が」
シャルイ……ああ、あの調合ギルドマスターのクソ爺か。
「仕方がないよ。親が立派でも子供まで立派だとは限らないし。親が立派過ぎると大抵のガキは馬鹿に育つものさ」
ちなみに俺の親父は立派な人。
さて、そろそろ遅いしこの辺で帰るとするか。
「それじゃあ、婆さん世話になったな。また暇な時に遊びに来るよ」
「うむ、もうこんな時間か……面白い話を聞かせてもらった礼をしよう。少し待っとるがよい」
そう言うと婆さんは奥に引っ込んで行った。茶かな? それならうれしいな。
「持ってけ」
婆さんが戻ると、俺に茶の入った袋と封筒を渡した。
「この封筒は何?」
「もし、毒スキルを今後も鍛えるつもりなら、アース国のコトカから南の海峡を越えてブリトン国に行くがよい。ブリトン国のシャルエット町まで行ったら西にゴドゾームの村がある。そこに住んどるシャドウという男にそれを渡たすのじゃ」
シャドウ? 名づけ親は低学歴のヤンキーか?
「そいつに渡せば良いんだな」
「うむ。会えばお主が欲しがっていた、武器に毒を塗るスキルが手に入るはずじゃ……多分な」
最後の多分が気になるが、なんとビックリ。俺の、俺の妄想はまだ生きていた! ずっと遠い話だけど、まだ希望はある。
「おおーありがとう。本当に何から何まで世話になったよ」
「うむ、元気でな。たまには顔を出せ」
「またね」
婆さんに見送られて家を出る。辺りは薄暗くなり始め、昼間の事件が嘘の様に通常の街に戻っていた。
スラムを抜けて中央広場まで移動するとゲームからログアウトした。
ゲームからログアウトをしてバーチャルな世界から現実に戻る。
ゲームの世界と異なり体力のない俺は起き上がることすらできない。我ながら情けないと思う。
だけど、不思議なことに何か体に違和感がある。ゲームに入る前と比べて少し体に力が入る気がする。原因を考えたが思い当たる節はなかった。
「……まさかな」
頭の隅にちらっと浮かんだ考えをあり得ないと払いのけ、俺は本当の眠りに就いた。
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