第12話 頭隠してケツファイア

 部屋に入ると、部屋全体が蜘蛛の糸で覆われていた。

 床、壁、天井、全てに白い糸が張り巡らされていて、床を踏む度にべとつく感じが気持ち悪い。


「新宿にある24時間経営の居酒屋に入った気分だな」


 義兄さんが足の裏を見ながら呟くが、もうちょっと良い店で飲め。


「ふふふ。そう言えば学生時代って、安い店にしか連れて行ってくれなかったわね」


 義兄さんに向かって姉さんが笑うが、その彼女の目は笑っていなかった。

 よくこんな顔だけの男と結婚したと思う。


「……今度、豪華なディナーに連れてくよ」

「期待して待っているわ」


 ザマァ。


 そして、義兄さんと姉さんのやり取りを見ていたジョーディーさんが、ベイブさんの袖を引っ張る。


「……連れて行っても良いが、同人作成の代金から引くぞ」

「じゃあ止めとく」


 どうやらジョーディーさんは夫婦の団欒よりも、己の欲望を優先したらしい。

 唯一独身の俺はそんなやり取りを横で聞きながら探索を始める。

 部屋の隅を見ると、蜘蛛の糸で巻きつけられた塊がぶら下がっていて、大きさから中身は人間の死体と思われた。

 それを見てアイテムが取れないかを考える俺は、既にゲームに毒されたと思って良いだろう。


「行き止まりか?」

「みたいだな」

「じゃあ、さっきの蜘蛛がここのラストか?」


 義兄さんがベイブさんとの会話で、ボスが上から降りてきそうなフラグを立てた。

 思わず天井を見上げたが、ボスらしき敵は居らず安堵の溜息を吐く。

 視線を戻すと、義兄さんを除いた三人も天井を見上げていたことから、俺と同じく義兄さんのセリフにフラグを感じていたらしい。


「とりあえず依頼のネックレスを探すとするか」


 俺達の考えを全く理解していない義兄さんの指示で、俺達は部屋を調べ始めた。




「いやーん。糸でベトベトー」


 ロリババアの実年齢に突っ込む気はないが、ムカつくから止めろと思う。

 検索スキルを使っても中央の罠以外は特に反応はない。

 ちなみに中央の罠は義兄さんが言っていた通りトラバサミだった。ただし、ステルスの魔法が掛かっていて、罠に引っ掛かるまで見えないというオマケ付と、墓地で罠を仕掛けるという狂った設計者の嫌らしさが伝わった。


 いくつかの通貨などを死体から見つけたが、ネックレスは見つからなかった。

 そんな中、壁を調べていた姉さんが何かを見つけた。


「カート、ここだけ壁の色が違うわ。壊せないかしら?」


 姉さんが入口と反対方向の壁を指差して義兄さんに話し掛ける。

 姉さんが示した壁に全員が近寄って確認すると、確かにこの場所だけ壁の色が違っていて、少しだけ亀裂もあった。


「よし、やってみよう。ベイブ、力を貸してくれ」

「分かった」


 義兄さんとベイブさんの二人がスクラムを組んで、壁に向かって何度か体当たりをするとガラガラと音が鳴って壁が崩れた。

 二人の後ろから壁の向こう側を覗くと、さらに通路が続いていた。墓地に隠し通路を作る製作者は、エジプトに憬れていたに違いない。




 壊れた壁を潜り抜けて隠し通路を先へと進む。

 道中、二回程スパイダーが単体で襲ってきたが単体相手なら余裕で倒せた。

 戦っている最中、義兄さんが学習してヘイトを奪うと立ち位置を反対にする。

 それで、スパイダーの背後から姉さんが放った魔法が命中して、ケツから腹に向けて風穴を開けていた。ちなみに、ケツから串刺しの様にぶっ殺す姉さんの表情は悦に入っていた。


 そして、俺達は通路の行き止まり、最後の部屋の前に立っていた。


「義兄さん」


 検索系スキルが部屋の中の生物を感知して、義兄さんに話し掛ける。


「なんだ?」

「多分、ラスボスだと思う」

「敵は見えないが……上か?」

「当たり。部屋の上からビリビリ感じる」


 最後の部屋だと思ったのは、俺の危険感知スキルがもの凄く反応していたせいだ。

 いつもの敵が赤の感知なのに対して、部屋の上に居る敵は赤黒く感じていた。

 赤がやんちゃしちゃっている中学生なら、赤黒いのはチョーヤクザ。それぐらい違いがある。


「あそこを見ろ。奥の台座に置かれているのが、恐らく祝福のネックレスだろう」


 ベイブさんはワーウルフ族だからヒューマンの俺より目が良いのか、彼が指す部屋の奥を目を凝らして見ると、台座の上に光る何かがあるのを確認できた。さすが犬。


「レイ。他に何か感知したのはあるか?」

「床や壁に敵や罠の反応は見当たらない。天井はボスの危険感知が大きすぎてよく分からないけど、雑魚が居そうな気配はない」


 適当に答える。


「そうか。皆、レイの話だと部屋で待っているのは恐らくラスボスだ。強力なのが一匹出てくると思う。

 俺が全面に立つから、皆は左右に散って攻撃してくれ。絶対に正面に立つな。範囲攻撃があったら俺の巻き添えを食らうぞ」

「「「「了解」」」」


 義兄さんの指示を聞いて全員が頷くと、俺達は部屋の中へと突入した。




 部屋の中央手前まで進むと、天井から全長7,8mぐらいのジャイアントスパイダーが、ドシンという音と共に義兄さんの目の前に落ちて来た。

 演出も事前に分かっていたら驚きも半分。だけど上から象位の大きさの蜘蛛が落ちてきたら誰でも驚く。

 俺も驚いたけど、危うく蜘蛛の下敷きで即死していたかもしれない義兄さんが、一番驚いていた。

 もし義兄さんが潰されて死んだら、その間抜けな姿を撮影して、SNSで世界中に公開したかった。


 ジャイアントスパイダーが俺達を見て叫び声を上げる。蜘蛛って叫ぶのか?

 だけど挑発に乗った虫けらの義兄さんが、盾を構えてジャイアントスパイダーを『挑発』をする。虫の挑発に乗るアホ確定。

 ベイブさんとジョーディーさんが左へ、姉さんが右に、俺は右回りにジャイアントスパイダーの後ろへ移動。


 ジャイアントスパイダーの背後から攻撃をしてみたが、全く効いていなかった。

 普段は邪魔で隠しているログを試しに表示させて確認すると、ダメージ一桁とか泣けてくる。

 ならばと、ダメージアップを狙って『バックアタック』を発動させて攻撃したが、今度のダメージはゼロだった。

 どうやら最初の攻撃はクリティカルだったらしい。目から涙が少し出た。


 そして、俺の攻撃でステルスが解除されるのと同時に、ジャイアントスパイダーが俺に向けて尻を上げた。

 おいおい、誘っているのか? 哺乳類ならまだ可能性はあるけど、虫はねえよ。


 ジャイアントスパイダーのケツが膨らみ、嫌な予感がして横に飛び退く。

 その直後、ジャイアントスパイダーのケツから糸が発射されて、俺の横を掠めるように飛ぶと背後の壁に当たった。初対面でぶっ掛けプレイは、エロ動画の見過ぎだと思う。

 ジャイアントスパイダーがぶっ掛けた壁から音がして振り返ると、シュゥゥゥゥと音を立て煙が漂っていた。

 うおぉぉぉ、危ねぇ。酸の攻撃か? そんなプレイはお断りだ!


「コイツ、後から酸の攻撃をしてくるぞ!!」

「「「「了解」」」」


 俺が報告すると、全員戦いながら返答した。




 ……ジャイアントスパイダーは今の俺達のレベルでは倒せない敵だった。

 義兄さんは防御に徹するのが精一杯で、盾で防いでも一発でかなりのダメージを喰らっていた。

 スパイダーの弱点だったおなかも固くなっていて、姉さんの魔法とベイブさんの攻撃は僅かなダメージしか与えられずにいた。

 俺もこのダンジョンに入ってから初めて武器で攻撃しているが、所詮つぼマッサージ師、あえて何も言うまい。

 そして、ジャイアントスパイダーが後ろに数歩下がる。


「義兄さん! 突進が来る!!」


 俺が叫ぶのと同時に、ジャイアントスパイダーが義兄さんに向かって突進を開始した。

 義兄さんが横へ跳び寸前で回避する。ジャイアントスパイダーは義兄さんの横を通り過ぎて、壁にぶつかると尻を振り始めた。


「次、酸の攻撃よ!」


 今度は姉さんが叫ぶ。

 ジャイアントスパイダーが尻を上げて、酸の糸を義兄さんに向けて飛ばした。


「チッ!」


 今度は地面を転がるようにして反対方向に避けて酸のぶっかけ攻撃を避けるが、義兄さんは少し食らって顔をしかめていた。

 MPがなくて回復に専念しているジョーディーさんの代わりに、俺がポーションを取り出して『蓋を開けてから・・・・・・・』、義兄さんに投げて回復させる。


 糸を出して動きを止めたジャイアントスパイダーに対して、姉さんが魔法の攻撃、ベイブさんが武器で攻撃を与えるが、ジャイアントスパイダーは平然とした様子で再び義兄さんを攻撃しようとしていた。


 ……俺達は次第に追い詰められていった。




 このままだと全滅しかない、どうしたら良い?

 いくら考えてもジャイアントスパイダーを倒す方法が思いつかない。

 クエストアイテムはジャイアントスパイダーが守っているし……あれ? 守ってる? 守っているのか? ……守ってねえな。


 蜘蛛は戦闘に夢中になって、クエストアイテムを無視して義兄さんとガチ勝負していた。

 確かに蜘蛛がネックレスを欲しがる理由が分からねえ。

 ただ単純に、このジャイアントスパイダーはクエストアイテムがある部屋が住処なだけで、別にネックレスなんてどうでもいいと思ってるんじゃね?

 試しにほら、俺がクエストアイテムの祝福のネックレス取っても、全く気にしている様子がない。

 このまま逃げても良いのか? 別にボスを倒せと依頼されてないから、どうやらいいらしい。


「ネックレスを取ったから撤収しよう!」


 叫ぶと全員が「コイツ何を言っているんだ?」という顔で俺を見ていた。そこの蜘蛛、お前まで見るな。

 たけど、俺が手に持つネックレスを見て、自分達が何のクエストをやっていたのかを思い出したらしい。

 全員、戦闘を中断すると、出口に向かって走りだした。

 コラ、待て! 俺を置いて行くな!!


 俺も皆の後を追って、慌てて出口へと走り出す。


「避けろ!!」


 義兄さん達が部屋を抜け出して、最後に残った俺が部屋から脱出する残り5mの所で、目の前のベイブさんが叫んだ。

 背後からの危険を感じて、後ろを見ずに横へ飛び退く。

 突進したジャイアントスパイダーが入口に突入して、部屋の中を物凄い音が響いた。


 出口を塞がれた! マズい!!

 俺は死ぬのを覚悟して、ジャイアントスパイダーの攻撃に備えた。




 ……永遠に続くかと思われる騒音の中、俺は一人静かに座って休んでいた。

 目の前で燃えるたき火が時々パチッと音を立てる。

 このダンジョンに籠ってどれぐらい経っているのか分からないが、疲れているのだろう。

 気だるさと多少の眠たさを我慢しつつ、先ほどから聞こえる騒音の元を見る。その先には……。


 ジャイアントスパイダーがたき火に炙られて絶叫を上げていた。


 そう、結局、ジャイアントスパイダーの次の攻撃は来なかった。

 このデカい蜘蛛は勢いよく突進したのは良いが、出口に胴体を挟まれて抜けなくなったのだ。

 何とか抜けようと暴れているが、建築オブジェクトは破壊不可能らしい。どう足掻いても抜けそうなそぶりはなかった。所謂、バグである。


 だけどこのままだと俺も部屋から出られない。

 攻撃しようにも俺はつぼマッサージ師。回復はできても攻撃は通じない。

 何か良い方法がないか散々悩んだあげく、駄目元で鞄の中を覗いたら、麻痺草を取った時に手に入れた大量の薪とサバイバルマッチを見つけた。

 火あぶりで殺すのもアリじゃね? 自分でも浮かんだ発想に鬼畜を感じたけど、このまま待っても帰れないからジャイアントスパイダーの下に火をつけた。


 蜘蛛って叫ぶんだな……。


 腹で火を消すこともできずジャイアントスパイダーは叫び声を上げてじわじわと焼かれていた。

 そして、地下でたき火をして一酸化中毒になるかもと心配したが、換気口はあったらしい。

 煙が天井の右へと流れていく。換気口がなければ一酸化炭素中毒で俺も死んでいた。ゲームの死亡理由がたき火による中毒死は、リアル過ぎて洒落にならない。




 薪に火を点けてから四十五分が経過。


「義兄さんそっちはどう?」

「今、全部の目と足を潰したところだ。頭は固くて潰せない。そっちはどうだ?」


 俺が叫ぶと義兄さんから返事が返って来た。

 この蜘蛛は楽に死ぬことも出来ずに、苦しみながら死ぬしかないらしい。


「こっちも足は全部潰した。後、そろそろ死ぬと思うから、そっちも適当に休んででて」

「分かった」


 暇だったから戦闘スキル上げ目的で足を潰した。

 スキルのレベルが上がってバックスタップの射程範囲も広がり、斜め後ろ横からでも攻撃にボーナスが付いた。アクションスキルは『足蹴り』を覚えた。

 一定の確率で、十秒の間、回避の低下と、移動速度を50%低下させるらしい。




 一時間半経過。

 体を揺さぶられて目が覚める。どうやら何時の間にか寝ていたらしい。


「レイちゃん。やっほ~」


 おはよう山ガール。

 上半身を起き上がらせて部屋の中を見ると、全員、ジャイアントスパイダーを避けて部屋に入っていた。

 入口のたき火は入るときに邪魔だったのか、消されて撤去されていた。


「蜘蛛は死んだの?」

「うん。全部の足を取られて、目玉を全部潰されて、火あぶりで死んだよ♪」


 姉さんが嬉しそうに言うけど内容が鬼畜。やったのは俺だけど。

 でも実際に焼き蜘蛛を見れば、全ての足が取られ火に当っていた箇所はどろどろに溶けて、見るも無残な姿をしていた。

 ……若干やり過ぎた感は否めないが、これもスキル上げのための犠牲者と言う事で、妥協する事にした。


「レイ、ありがとう。あの時の判断がなければ全滅だった」

「偉い、偉い」


 義兄さんが俺を褒めて、ジョーディーさんが俺の頭を撫でていた。


「しかし火で炙るとはよく思いついたな」

「攻撃が通じなかったからね。それに虫は火に弱いし」

「成程。良い機転だ」


 ベイブさんの質問に答えたけど、それしか手が思いつかなかったのが本当の理由。


「それでボスも倒したし、後は撤収?」

「その前にあそこを見て」


 姉さんが指差した方向を見ると、部屋の中央に宝箱が出現していた。




「あれ? 何時の間に出たの?」

「ボス殲滅の報酬だ。ジャイアントスパイダーを倒した後に出た」


 俺の疑問に義兄さんが教えてくれた。


「中は開けた?」

「いや、これからだ」

「じゃあ、開けよう」


 今度の宝箱に鍵は掛かってなかった。

 鍵が掛っていたら、ローグの居ないパーティーにとっては嫌がらせ以外の何ものでもないと思う。

 俺が近づいて蓋を開けると同時に背後から……。


「「「「ごまだれ~~♪」」」」


 どこかで聞いたことのある効果音を義兄さん達が口ずさんだけど、大人になったゲームマニアはアホで困る。

 宝箱の中を見ると、金貨といくつかの装備が入っていた。


「自然魔法ボーナスが付いているけど、これは私が使って良いかしら?」


 姉さんが手にしたのは青っぽい杖だった。自然魔法を使うのは姉さんしか居ないので、姉さんが皆の了承を得る前に装備した。なぜ確認した?

 そのほかにも戦士回避スキルにボーナスが付いたハードレーザーはベイブさんが、MPが+10付いた指輪をジョーディーさんが受け取った。

 そして、姉さんが俺の前に武器を差し出す。


「はい」


 剣の見た目は包丁を研ぐ時に使う研ぎ棒。どう見ても、どこから見ても研ぎ棒。

 どうやら俺はつぼマッサージ師から、料理人にジョブチェンジするらしい。

 だけど実際はアイアンスティレットと名の付いた突き刺し専門の武器。

 受け取ってステータスを確認するとAGI+3が付いていた。


「もらって良いの?」

「突き刺し武器使っているのはレイちゃんしか居ないし、今回一番活躍したんだから、当然よ」


 俺は武器を上に掲げてスティレットを確かめる。

 刃は付いてないが突き刺せばかなりダメージが出そうだ。そして刃物もよく研げそう。


「これでやっと攻撃してもダメージが出せるかな?」

「別に戦いが弱くたって良いじゃない。それ以上にレイちゃんは皆の役に立っているんだから」

「ああ、攻撃が弱くても最初から戦力外なんて思ってないぞ。むしろレイが居なかったら俺達は挫折していた。けど、まあ、ちょっとは強くなって欲しいけどな」

「カート!!」


 姉さんに続いて義兄さんも俺を励ましてくれたが、最後の一言が余計だったらしく姉さんに怒られていた。

 俺はもう一度スティレットを見て、つぼマッサージは卒業なのだと思い武器を鞘に納めた。


 目指せ一流コック!!


「さて帰るか」

「「「「了解」」」」


 義兄さんの声に、俺達は元気よく返事をして地下墓地を後にした。




 ……外に出ると日が傾き始めていた。気が付かなかったが長時間ダンジョンに居たらしい。俺も戦闘を何度も……そういえば武器を抜いたのって、ボスの一回だけだった気がするが、とにかく疲れた。

 クエスト依頼所でクエストアイテムの祝福のネックレスを渡し報酬を受け取った後、『反省する猿』へと帰った。

 宿で今回の報酬を山分けしたところ、1人12G以上になった。凄く稼いたご褒美に晩飯は皆で豪華な食事をした。ベイブさんは全員に監視されて、酒を一滴も飲めずに一人、落ち込んでいた。




 ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ。


 昨日の疲れが取れない俺達は、翌日を休養日にした。


 ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ。


 地下墓地での戦いで結構レベルが上がった。特に最後のボスでは相手が無抵抗だったから、良い稼ぎになったと思う。


 ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ。


 義兄さんと姉さんはまだベッドで寝ている。ジョーディーさんとベイブさんはどこかへ出かけた。


 ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ。腕が疲れたので一休み。

 ついでに昨日のクエストで上がったレベルとスキルも公開、はいドン!


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レイ Lv8

アイアンスティレットAGI+3


取得スキル

【戦闘スキル<Lv.10> VIT+1】【生存術<Lv.9>】【危険感知<Lv.9>】【盗賊攻撃スキル<Lv.9> AGI+1】【盗賊隠密スキル<Lv.8>】【生産スキル<Lv.1>】【サバイバルスキル<Lv.4>】


アクション

生存術・危険感知・ステルス・目くらまし(唾吐き)・バックステップ・バックアタック・足蹴り

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 さて、今は何をやっているかというと、調合士スキル取得のために薬の材料を薬研で摩り下ろしている最中だった。

 婆さんに教えてもらった作り方は、効果は高いがその代わり時間が掛かるのが問題だ。

 毒でも薬でも最初に乾燥させなければいけないから、毎回作るたびに乾燥させていたら何時までたっても終わらない。


 そこで最初に全部乾燥する必要がある素材を摩り下ろし、一回で二十個分作れる分量を正確に計測して乾燥させる。

 二十個というのは、婆さんから貰った瓶十個と今日の朝に雑貨屋へ出かけて俺が購入した十個を併せた数だ。

 ちなみに、薬は分量を正確に作らないと効果がきちんと出ないし副作用が酷くなる。これは入院歴十年の俺が言うんだから間違いなし。


 ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ。

 ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ。

 ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ、ゴリッゴリッ。


 ……この日は深夜まで調薬作業を続けた。

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