第11話 ズルで卑怯な泥棒の天才

「強かったな」

「ああ、βの頃よりも動きが早かった」


 義兄さんとベイブさんは、武器をしまいながらスケルトンについて話していた。どうやらこの二人は、お互いの妻の行動は見ていなかったらしい。

 俺も告げ口して離婚問題に発展されても面倒だから、黙っていることにした。


「でもレイちゃんが抑えてくれたら、最後は楽勝だったわ」

「だよね。レイ君って予想を超えた行動をするから面白いね~~」


 ジョーディーさん、それは褒めているのか? 俺から見たら、お前の性癖が人として予想外だと思う。


 スケルトンが砕け散った床には、ぼろぼろの剣と盾、それに布袋が落ちていた。

 ……布袋? 戦っている最中、どこにも付けてなかったぞ。もしかして股間にふぐりが付いていたか? 布袋を拾って中身を見ると、10sの小銭が入っていた。


「ベイブさん、ドロップ品」


 ベイブさんに布袋を渡すと、彼は中身を見てニヤリと笑った。待て、コイツは餌じゃない!!


「おう、纏めて後で分配しよう……やはりβの時と比べてドロップ品の額も多めだな」

「ほう。だったら全部の部屋を回って殲滅した方が良いか?」

「いや、そこまでの額じゃない。移動途中の部屋を覗くぐらいで良いだろう」

「分かった、それで行こう」


 義兄さんとベイブさんの意見の通り、俺達はクエストのクリアを優先して先へ進むことにした。




 廊下の壁の左右は、扉のない部屋が並んでいた。

 地下墓地だからコンセプトとして、埋葬室だと思う。もしパーティー会場だったら設計者の精神を疑う。

 廊下から部屋の中を覗くと、入口を除いた三方向の壁には棺が三段ずつ配置されていて、静寂な空気を漂わせていた。


「何か雰囲気あるね」


 俺がそう言うと姉さんがニコリと笑った。


「でしょ。だけど宝の山なのよ~」


 姉さんの返つに首を傾げる。宝の山?


「レイ。この部屋に罠はあるか?」

「いや、ないけど?」

「分った。皆で手分けしよう」


 義兄さんが言うそばから、全員がズカズカ中に入ると棺を開けて物色し始めた。

 おい、お前ら、俺達は遺跡荒しか? 少しは罪悪感を持て。


「レイ君、ポーションあったよ~」

「マジデ!?」


 俺はローグだから別にいいよね!!


 俺も彼等に加わって金目の物を探した。後から聞いた話だと、ダンジョンのドロップ品はランダムで、たまにマジックアイテムも手に入るらしい。


 よし、頑張ろう。




 その後、廊下を奥へと進む。

 道中に部屋があれば中に入って、調査という名の金品回収。スケルトンに出会ったら戦闘を繰り返した。世の中、想像していたよりも、露出プレイヤーは多いらしい。


 スケルトンは弱点さえ分ってしまえば楽勝だった。

 義兄さんとベイブさんが攻撃している間に、俺がステルスで背後にそっと近づく。

 俺が背後に回ったのを確認した二人がスケルトンの逃げ道を塞ぐ。

 道を塞がれたスケルトンが後ろに下がるのを、待ち構えた俺が背後から肋骨を掴んだ。

 パターン入った! 後は全員でタコ殴り。


 掴んだスケルトンが暴れると、尾てい骨のチョト先生前で言うところの前立腺の辺りを優しく撫でる。

 そうすると面白いことに、暴れていたスケルトンが動きを止めて、ビクン! ビクン!! と体を跳ねらせ無抵抗になった。そこを義兄さんが、ロングソードで頭蓋骨をバーン!!

 相手がアンデットだとしても、俺達がやっている行為は酷いと思った。


 スケルトンを倒すことで経験値を取得して、俺を含めて全員がレベル6になった。

 そして、ただ背後から肋骨を掴んでいただけなのに、盗賊攻撃スキルがレベル6になる。どうやら掴んでいたのが攻撃判定になったらしい。

 強くなった実感は全くなし。つぼマッサージ師は継続中である。




「あれ? 鍵が掛かっている」


 扉のない部屋が並んでいる中、扉のある部屋を見つけて中に入ろうとしたが扉に鍵が掛かって入れなかった。

 この部屋はパスだと諦めようとしたら、姉さんが針金よりちょっと頑丈な金属の棒を俺に渡した。


「はい、ロックピック♪」


 条件反射で受け取ったロックピックを見て、首を傾げる。


「レイちゃんのために買っといたよ。頑張って開けてね」


 開ける前に、お前が何処で犯罪道具を買ったのかを知りたい。


「使ったことないよ。それにスキルだって持ってないし」

「大丈夫、レイちゃんならできる♪」

「はぁ……」


 また姉さんは根拠のない事を言う。だけど、姉さんの勘は今まで外れたことがないから恐ろしい……ああ、実の姉が魔女で怖い。

 皆が注目する中、扉の前にしゃがむと、左右に一本ずつロックピックを持ち鍵穴に入れて適当に動かしてみた。

 確かに、VRのスニークアクションゲームで鍵開けをやった事があるけど、こんなので開くのか? ……ん? 何か引っかかりがあるな。これを右で固定させて、いや、違う。左で固定させた方が良いのか? で、右の方の窪みに引っ掛けて、これで回るか?

 適当に弄ったら扉からカチャっと音がして本当に開いた。


「さすが、レイちゃん。二十秒で開いたね♪」

「「「おーー」」」


 皆も感心している。だけど、俺が一番驚いていたりする。鍵開けで褒められるとか、間違っているし犯罪な気がするけど。俺はローグだから許されるのか?


「昔、知恵の輪やった時、簡単に解いてたもんね~♪」


 姉さんが大丈夫だと言っていた根拠は知恵の輪らしい。だけど、知恵の輪に必要なのは器用よりも知能だと思う。

 確かに昔、病院のVRの中で見舞いに来た姉さんから貰った知恵の輪をその場であっさり外したことがある。

 その後、元に戻して姉さんに返したけど、姉さんがチャレンジしても外せなくて、もう一度渡されて、またあっさり外した。

 最近だと体が動かなくて自覚していなかったが、どうやら俺の器用ステータスは思ったよりも高かったらしい。




 鍵を開けた扉を開けて部屋に入ろうとしたら、危険感知スキルが足元の床の罠を見つけた。油断したところを殺しに来る仕掛けに悪意を感じる。

 慌てて下がろうとしたら、後ろから押されて罠を踏んだ。

 思わず背後を振り返ると、ワクワクした様子の義兄さんが早く部屋に入ろうとして、俺を押したらしい。


 クソ野郎、代わりに死ね!


 とっさに義兄さんの手首を掴んで、引き倒し自分の体勢を立て直す。逆に犠牲になった義兄さんは罠のある床へと倒れた。

 あばよ。今度生まれ変わったら、豚になれ……そして、調合ギルドのあの豚女と幸せに暮らせ。


「おわあぁぁぁぁ!!」


 発動した落とし穴が開く。そして、義兄さんがその穴に落ち……。


「ふぬ!!」


 俺が手を合わせて合掌している横で、ベイブさんが義兄さんの足を掴んで落下を防いだ。

 落とし穴を覗くと……おお、これは危ない。穴の中は剣山だらけで、落ちていたら義兄さんは間違いなく死んでいた。


「早く! 早く上げてくれ!」

「皆、手伝ってくれ!」


 義兄さんの足を掴むベイブさんを皆で引っ張り、義兄さんを助けた。


「レイ!! 危ないだろ!!」

「いや、今はカートが悪い」


 義兄さんが呼吸を荒くして怒鳴るが、その直ぐ後でベイブさんがお前が悪いと指摘する。ナイス、犬。

 姉さんとジョーディーさんもベイブさんの意見に、うんうんと頷いていた。

 俺も心の中では頷くけれど、俺がそれをやったら気まずくなるから落ち込んだ振りをした。


「……確かにその通りだな。レイすまん」


 騙されたオッケー!


「俺も義兄さんを身代わりにしたのは悪かったと思う。ごめん」


 でも「テメエが悪い」と、心の中では全く反省をしていない。


「いや、大丈夫だ。幸運にも回避できたからな。どうも俺はローグと一緒の行動に慣れてない。次からは気を付ける」


 まず脳筋から直すべきだと思ったけどあえて言わなかった。




 部屋の中央には開けて下さいと言わんがばかりの箱が置いてあった。整頓するなら部屋の隅に置け。この墓地の持ち主は片付けが下手だと思う。


「もう罠はないな」

「反応がないから大丈夫だと思うよ」


 義兄さんが確認してきたから適当に答える。

 宝箱に期待しているのか皆は悪巧み。違う、嬉しそうなその笑顔は墓泥棒……どっちも同じか。

 だけど、義兄さんが箱を開けようとしたが鍵が掛かっていて開かなかった。


「先生、お願いします」


 義兄さんがちゃかして箱の前を俺に譲る。

 肩を竦めて苦笑いで箱に近づくと、鍵穴にピッキングを入れた。

 多分さっきの要領でやれば……開いた。

 鍵の開く音に皆が拍手。そして、全員が注目している中、宝箱を開ける。

 箱の中は結構な量の金貨……多分20g位はあるかな? それと一振りの長剣が入っていた。


「マジックアイテムだ」


 箱から長剣を取り出して持ち上げる。

 マジックアイテムと言っても普通の剣。特に装飾品があるわけでもない。

 でもステータスを見たら、通常のアイアンロングソードの攻撃力に+4の追加ダメージボーナスが付いていた。


 長剣を使うつもりはないので義兄さんにそのまま渡す。

 義兄さんは受け取った武器を眺めてにんまり笑った。


「ベイブ、使うか? 攻撃力に+4だ。結構優秀だぞ」

「いや、俺はもう少し軽い方が好みだからカートが使え」

「レイは?」

「パス」

「じゃー遠慮なく戴こう」


 義兄さんが手に入れた長剣を装備してから、俺達は部屋を出る事にした。




「鍵開け二回にトラップ付きだから、さすがに報酬も良かったね」

「ああ、序盤でこんな良い武器が手に入るとは思わなかった。俺達だけじゃ間違いなく手に入らなかった。レイ、ありがとう」


 ジョーディーさんに義兄さんが頷いて俺に礼を言ったけど、物さえ与えれば何でも言うことを聞きそうだな、この俗物共は!

 だけどそんな気持ちを隠して、皆の視線を浴びた俺は照れ隠しに右肩だけ竦めて笑った。


 ちょっとだけローグをやって良かったと思う。


「あまり、カートを攻めないでね」


 部屋を出る時、姉さんが俺だけにこっそりと囁いたけど、この女、俺の心を見抜いてやがる。我が姉ながら恐ろしい。

 廊下の突き当たりまで行くと、地下二階への階段を見つけたので、警戒しながら階段を下りた。




 地下二階に下りると直ぐ先に部屋への入口があった。同時に部屋の中から敵の気配を感じる。


「義兄さん、生体反応だ。それに危険反応も感知。一階とは別の敵だと思う。それに敵は部屋の上に浮いている?」


 俺が小声で報告すると、義兄さんが口元に手を添えて思考する。


「多分、目当てのスパイダーだな。浮いているのは糸でぶら下がっているからだろう。どのぐらい居るかわかるか?」

「ここからじゃ部屋全体は分らない。ステルスで近寄って確認してくる」

「部屋には入るなよ」

「分かっている。入口手前で確認して戻る」


 ステルス状態で入口手前まで近づいて、さくっと確認してからとっとと戻った。


「手前に二匹、左右に一匹ずつ、奥に一匹。それと暗くて見えなかったけど、部屋の中央の床にに複数の小さな罠が仕掛けられていた」


 義兄さんが報告を聞いて考えをまとめる。


「罠の数とサイズから考えて、罠はトラバサミの可能性が大きいな。部屋の中央で動きを封じてから、上から降りて襲うつもりだろう」

「まともに行ったら四方を囲まれて逃げ場を失うわけか。罠と敵の配置自体が本当の罠だろう」


 義兄さんの考えにベイブさんが補足を入れる。何で墓場にトラバサミがあるんだ? ここは本当に地下墓地か?


「じゃあカートちゃん、入口で戦う?」


 ジョーディーさんの提案に義兄さんが頷く。


「だな。罠も事前に分っていれば罠じゃない。ジョーディーの言う通り、部屋の入口を挟んで戦えば向こうは入口で詰まって、一匹ずつしか入って来れない」


 義兄さんが部屋の入り口を見ながら、説明を続ける。


「そうすれば、こっちの方が数は有利だ。俺が中央でベイブは左、コートニーは俺の右後ろ側で魔法を撃ってくれ。

 狭いからフレンドリーファイアーだけは注意しろよ。

 ジョーディーは左側で待機、レイはコートニーの護衛を頼む」

「「「「了解」」」」


 義兄さんは普段の行動はアレだけど、戦闘に関してだけは優秀な指揮官だと思う。

 ベイブさんも酒さえ飲まなければ立派な補佐官だ。仕事はできるけど駄目な奴、典型的な例がこの二人だと思う。


 全員が配置に着いたところで、義兄さんだけが部屋の入口まで近づき、スパイダーの一匹を『挑発』してから戻って来た。

 俺達が廊下で待ち構えていると、追って来たスパイダーが現れた。そして、部屋の入り口を挟んで戦闘が始まった。




 近くで見たスパイダーは人の丈位の大きさで、横幅がちょうど部屋の入口と同じぐらい。見た目は巨大化した毛むくじゃらのタランチュラ。肉食昆虫特有のおぞましい様子に恐怖を感じさせる。

 蜘蛛は感情の分からない顔で捕食対象の俺達を見ていて、気持ち悪さを例えるならば、アソコが老化して女を捨てた毛深い脚の糞ババア。近づくなキモイ。


 蜘蛛は牙のある口をカチカチと鳴らして、義兄さんに襲い掛かった。

 狭い入り口に引っかかって、スパイダーは一匹ずつでしか廊下に入ることができず、そこを待ち構えていた義兄さんとベイブさんが道をふさいで攻撃をする。俺は見ているだけ。

 後ろに控えているスパイダー達は戦えないのが不満なのか、部屋の中で牙を鳴らして騒いでいた。

 義兄さんが噛み付き攻撃を盾で防ぎ、スパイダーの動きが止まると、横からベイブさんが攻撃をしていた。俺は見ているだけ。


「頭の方は固いが胴は柔らかい。コートニー、魔法を撃つなら胴だ」

「了解」


 ベイブさんが叫ぶと、姉さんは頷き詠唱を始める。


「『アイスボール』」

「ぬお!」

「……あら? 外れちゃった~」


 姉さんの魔法が義兄さんの顔のすぐ横を掠めて、動き回るスパイダーの足に当たった。今の「外れた」と言った、そのターゲットはどっちなのかチョイと聞きたい。


「コートニー! 危ないだろ!」

「次は気を付けてね」


 いや、そこはお前が気を付けるべきじゃないのか?


「コートニーちゃん。回復が面倒だから味方に当てないでね」


 回復が面倒だとほざくヒーラーはパーティーから出ていけ。


 スパイダーが上半身を反らすと、義兄さんに向かって両足を振り下ろした。

 義兄さんは攻撃を避けずに懐に入ると、スパイダーの頭を目掛けて下から剣を突き刺し、頭を貫かれたスパイダーが即死した。


「まず一匹目!」


 義兄さんが叫びながら死んだスパイダーを右へ蹴り飛ばすと、すぐに部屋から二匹目が襲って来た。


 武器を換えた義兄さんは強かった。

 今までもスキルの『挑発』、『シールドバッシュ』、さらにレベルが上がって覚えた盾による『シールドアタック』を使って敵のヘイトを集中させていたが、それに加えて攻撃ダメージによるヘイトも上昇し、安定した戦闘を繰り広げていた。

 体力が減ったら、いやいや顔のジョーディーさんがヒール。

 ジョーディーさんのMPが半分ぐらいになったら、俺がポーションで回復させて、ジョーディーさんを休ませる予定だけど、この勢いだと俺の出番はないと思われる。

 前衛の同時攻撃で義兄さんの剣がスパイターの頭、ベイブさんのダガーが腹を切り裂き二匹目が死んだ。


「二匹目完了。ベイブ。次は少し後ろに下がってくれ」

「OK」


 ベイブさんが少し後ろに下がると、義兄さんは二匹目の死骸を、今度は左に蹴飛ばして三匹目を迎えた。


「うーん、おなかに魔法を撃つのは、無理っぽいわね」


 前衛は順調だったが、スパイダーが弱点の腹を隠すように頭か足で防いでいるため、後衛の姉さんが放つ魔法のダメージは低かった。

 たまにスパイダーが体を浮かせても、そこに義兄さんが入り込んで攻撃するから、やはり魔法が撃てずに段々と姉さんの不満ゲージが溜まる一方だった。

 そうしている間に、ベイブさんが三匹目のスパイダーの右足を全部切り落とす。

 スパイダーが左足で義兄さんを攻撃しようとするが、義兄さんが潜り込んで、その場で体を回転させると、剣を腹に突き刺した。


 動きの止まった三匹目の死体を乗り越えて、四匹目が来る。四匹目は左へ移動して、五匹目も同時に来た。

 義兄さんの指示で俺達は全体的に後ろに下がると、二匹のスパイダーは仲間の死体の上から降りてきた。


「これからが正念場だ! ベイブ、後から来たのを頼む。レイも攻撃に参加してくれ」

「「了解」」

 

 二匹のスパイダーを義兄さんとベイブさんが正面から攻撃する。

 俺は義兄さんが戦っているスパイダーの背後に回り込むと、先に倒したスパイダーの死体によじ登った。


 さて、背後に着いたけど、どうしよう。

 この高低差で攻撃しても大したダメージを与える事ができない……いや、俺がどんな状況で攻撃しても無理。

 背中に乗って弱点の頭を狙う? 届かねえよ。だったら姉さんの魔法が当たるようにして、あの魔女のフラストレーションを解消させた方が良さげ。


「姉さん行くよ」

「えっ?」


 俺は死体の上から義兄さんが戦っていたスパイダーの左足を掴む。そして、踏ん張って足を持ち上げるとスパイダーの腹を姉さんに向けた。

 腹をむき出しにされたスパイダーが騒いでいるのを横目に、姉さんに向かって叫ぶ。


「魔法、魔法。早く、早く!」

「レイちゃん、ありがと~。……『アイスボール』」


 驚きから醒めた姉さんが魔法を放つとスパイダーの腹に大穴が開いた。

 怖え! レベルが上がって氷玉が雪合戦のレベルを超えている。


「次、行くよ」

「OK~♪」


 俺と姉さんの行動に唖然としている義兄さんを無視して、ベイブさんが戦っているスパイダーの左足を持ち上げた。

 ズボ! 姉さんのボディーブローを超えた魔法の一撃に、最後の一匹も即死した。

 ちなみに、戦闘に集中していたベイブさんは、突然、蜘蛛が持ち上がってドテっ腹に穴が開いたのを見て、目をギョッとしていた。


「レイちゃんおつかれ。助かっちゃった~♪」


 先ほどまでの不満顔が打って変わってスッキリした笑顔を見せたけど、その笑顔のために死体の山を築き上げたと思うと俺は笑えない。


「しかし、レイを見ていると真面目に戦うのが馬鹿馬鹿しくなってくるな」

「まあな。でも、俺達が居るからレイが機転を利かせられるんだろう」

「そうだよ。スケルトンだってカートちゃんが戦っていないと、レイ君が背後を取れないし、自信を持った方が良いわよ」


 義兄さんの弱音にベイブさんとジョーディーさんがフォローする。

 俺も義兄さんが居なかったらこのパーティーは無理だったし、しょげる必要はないと思う。だけど、偶に出る脳筋の行動だけは何とかした方が良いとは思う。


 戦闘を終えた俺達は、スパイダーの死体を乗り越えて部屋の中に入った。

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