5.一寸先は紅のくちづけ(三)

平成の世でも、会津と長州は今も仲が悪いとか、因縁、確執とか言われるけど、ハッキリ言ってそんな意識はない。


世間様のイメージを裏切って申し訳ないけれど。


気にしてる人がいるの?ってくらい。



時代はすでに21世紀ですよ。


このグローバルな世の中、未だにそんなこと言うのはありえない。


会津出身だからってそう思われたらいい迷惑だわ。


そんなことひとつも思ってないのに。


山口の人だって同じだよ!


…と、思う。



観光で山口を訪れる人もいれば、山口で暮らしている人だっている。


山口出身の友達もいる。


昔むかしは会津・長州カップルの結婚は一族あげて大反対されたって聞いたけど、今では結婚してる人もいるんじゃない?


会津の人と山口の人は友達になっちゃいけないわけ?


結婚しちゃダメなの?


そんなことありえるわけないでしょ。


他の都道府県の人と同じ!


錦帯橋きんたいきょう松下村塾しょうかそんじゅくも見てみたいし、下関でフグも食べたい。


吉田松陰も高杉晋作も日本の偉人だって思ってる。


桂小五郎と幾松のロマンスだってステキだと思う!



何て言うか、野球でいうところの東西オレンジ色のチームと黄色のチームみたいな感覚?


世間一般、表向きは敵のイメージが強いけど、選手もファンもお互いを憎んだり、嫌いだとか言わないし、選手の好プレーは敵味方関係なくたたえ合う。


そういう感じ?


一部過激なファンは嫌いと言うかもしれないけど…それは置いといて。



昔はイロイロあっても今は今。


わたしってばドライ?


現代っ子だもん。


思想も政治もわたしには関係ない。



とにかく、今すぐ未来に戻してくれれば何も文句は言わないわ。



とは言っても…帰れないこの現実。


もう、うんざり。



日常生活も桁違いに不便。


分かんないことだらけでストレスが溜まる。



まず、困っているのが時間の数え方。


これがよく分からない。


一刻いっときが2時間で、半刻はんときが1時間。


四半刻しはんときが30分。


これがまず第一の基本で、どうやら30分以下の何分何秒という細かい時刻の概念はないらしい。



こく”とか“うまこく”とか。


有名な“草木も眠るうし三つ時”とか。


その数え方はもちろん聞いたことがあるけれど。


12の干支ごとに1時間区切りで午前と午後それぞれ12時間ずつ、だと勝手に思っていたけど、それは間違いで24時間を2時間区切りで数えるらしい。



丑の刻というのは1時から3時の間の時間帯で…。


2時間区切りって…じゃあ2時はどうやって表現するのよ?!ってツッコみたくなるでしょ?


丑の刻の2時間をさらに4等分して『一つ時・二つ時・三つ時・四つ時』と数えるそうなのだ。


2時間を4等分すると、120分÷4=30分。



丑の刻・丑一つ時が、1時から1時30分。


丑の刻・丑二つ時が、1時30分から2時。


丑の刻・丑三つ時が、2時から2時30分。


丑の刻・丑四つ時が、2時30分から3時。


つまり、“草木も眠る丑三つ時”とは、2時から2時30分となるわけだ。


もうひとつ数で数える方法もあるらしいけれど、こんがらかりそうなのでとりあえず放棄しました…。



さらに何と一刻の長さは昼と夜、季節でも変わってくるとかで…


何でこんなめんどくさい方法にしたかな?


わたしの理解力が乏しいだけなのか?


現代でも価値のある和時計はお金持ちが持つもので、結局のところ庶民は“時の鐘”で時刻を知る人が多いみたいだから。


約束や待ち合わせをしたときに困るだろうけど、ゆっくり覚えよう。


今のところ、そんな相手も予定もないしね。



時の数え方が違うのだから、暦も違う。


先の世界は新暦、ここは旧暦。


約1ヶ月くらいの開きがある。



物価や金銭感覚も掴めていない。


手持ちのお金はもちろん使えず。



ペンや鉛筆じゃなく筆を使う時代でしょ。


文字もスラスラ~っと書いてあるから意味もいまいち分かんないし、ほぼ解読不能。


一応お習字習ってたから、楷書だけじゃなくて行書とか草書とか練習したし、書道は得意だけどね。


まるで古文書よね。



頭が付いていかなくて笑えてくる。


言葉遣いも敬語を飛び越えて古文の世界だわ。



すべて日常生活の中で早く覚えなきゃ。


自分で何とかするしかない。


こんな基本的なこと知らないなんて不自然すぎる。



それとも、記憶なくしたフリして聞いちゃう?


イザとなったらそれもアリかも。



毎日がいっぱいいっぱい。


分からないことが多すぎてパンク寸前。


完全に許容オーバー。



未知との遭遇、とはこのことね。



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