前夜

O山麓の駐車場にはたくさんの車が止まっていた。その一つに副長が横山と乗ってた。

「この山に鳴海がいるんだな」「へい。で、でも奴らもいるんでしょう?」

 横山は怯えたように言った。

 致死量の毒を飲んでも死なない男とあの中島を殺した奴のことだろう。

「組全員の機関銃で穴だらけになるんだ。流石に奴らもあの世行きだ。」

 それでも死なないのだったら我々は化け物に喧嘩を売ったことになるが…

 この世界にはそんなものは一人しか存在しない。

「…行くぞ」

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 10人、20人…いや50人か。全員武装してるな。

 影という影が目となり、駐車場を見つめていた。彼らは見られているということに気づいてない。本当に愚かでクズで…

 引っ張られるような感覚。精神体が元いたところに帰ろうとする。



「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 体に戻ってから最初に聴いた音がそれだった。

 四角い部屋に置かれた安楽椅子に悪と白が群がっていた。その前にはさっきの男が血まみれで破れた服を着て拘束されてた。しかし体のどこにも傷はない。

「何かあったのか?」

 悪運が振り返るとその服は血にまみれていた。

「あ、おかえり。鳴海君、なんも話してくれへんから結構手間取っとるんや。潜ってた時間は3時間58分やで」

「随分と持つな。そんなに高井のこと守ろうとしてんのかね」

 未だに鳴海を拷問にかけていた白は副長の名に反応した。

「高井?あいつがここにいるのか?」

 すっかり理性を吹っ飛ばせた白はファイティングナイフを持ったまま振り返った

「あいつはどこだ。僕を殺したあいつは!」

 ナイフを振り回すとまだ固まってない血があたりに飛び散る。このままだと片付けるのが面倒だ。

抜刀刻印スティグマ 二の型」

 そう判断したエイチの影が無数に分裂し、他の影に飲み込まれる。

影封神ダークディヴァイン

 その影からまた布状の影が瞬時に飛び出して白の体を拘束した。

「離せ!奴を殺させろ!」

 白の頭に手を当てて撫でる。こうすれば少しは落ち着いてくれるだろう。

「白、落ち着いて。高井は絶対殺すさかい。ね?」

「っ…ごめん…」

 ナイフを回収したほうがいい。また暴れられたくない。

「ちょうどいいことに奴らはO山麓に集まってる。誰かさんのおかげでな。今探し回ってるところだろうよ。」

 二人の顔を見回す。疎外されたもの同士。種族も年齢も違う我々が一緒に居られるのはその点と共有しているからだろう。


「さあ楽しいマッド・ティ茶会ーパーティーを始めようじゃないか」

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