鳴Side
O山の遊歩道を鳴海は女を追いかけながら歩いていた。
「副長に褒めてもらう」
彼は今それを理由に行動していた。自分が893に入ったのも彼がいたからだ。
死んだはずの女を見つけたのは偶然だがこれは好機だ。
突如女は草むらの中を突っ切った。よく見るとそれは獣の通った跡だった。
女は迷いのない足取りで獣道を突っ切る。
その歩調はどんどん早くなっていく。
「どこへ向かう気だ」
鳴海が女が進んだ後を追っていく
突然体が宙に浮かんだ。何が起こっているのか理解する前に鳴海は闇の包まれた。完全に覆われる前に彼は女が自分を見ているのが見えた。
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かすかな話し声が聞こえる。一人、二人…三人の人間の声だ。
「こいつどないすん?」
「えエイチのことをつけてたんだよね」
「あーもー喋んな。集中させろ」
うっすらと目を開けると地下室がみえた。
副長が言ってた白鏡 輪と中島が女殺害を依頼したやつがみえた。
例の女はといえばあぐらをかいて目を閉じている。
よく見ると女の背からは獣の尻尾が生えていて先が女自身の影の中に沈み込んでいた。
「てめー生きてたのかよ」
女に向かって言うが返事をしない。
呼吸しているのかすら定かではないほど微塵も動かなかった。
「あーあかんで。エイチは今精神が影の中におるさかいね。話しかけても聞こえへんで。それにお気に入りの安楽椅子取られて拗ねてんや」
悪運…といったか。やつはヘラヘラと笑いながらこっちを覗き込む。
自分はと言うと青いビニールシートを被せた安楽椅子に黒い膜で縛り付けられている。
「さてと893さんには色々吐いてもらわないとね」
悪運は振り向いて白鏡を見た。白鏡にはさっきのおどおどとした雰囲気がない。
「…そうだな。いっぱい楽しませてくれ。鳴海さんよぉ」
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