「そんな過去があるなんて、知りませんでした」

「でも、、、 放っとけなくて、、、」

「放っとけない?」

「ヨシキさんって、すごく不幸な星の下に生まれてるじゃないですか」

「不幸?」


、、って、いったいどういうこと?


「ああ見えてあのお方は、寂しがりやの甘えん坊さんでしょ? それを癒してさしあげるのも、肉奴隷のわたしのおつとめだと思ったんです」

「寂しがりやの甘えん坊?」

「ヨシキさんって中学生の頃、お父さんの不倫が原因で、ご両親が離婚されたじゃないですか。

全然家庭を顧みないアンマイホームパパで、休日でも家にいたことがなくて、子供の頃からパパに遊んでもらった記憶がないって、ヨシキさん言ってました。

離婚したあとも、お母さんはヨシキさんを引き取る経済力がなくて、しかたないからしばらくはお父さんと暮らしてたものの、完全にネグレクトされて、家の中に居場所がなかったそうです。

それで、ある暑い夏の日の昼下がり、お父さんが仕事でいないうちに、自転車の荷台に勉強道具とか本とか、持てるだけの自分の荷物を積んで、うちから逃げ出したっていうじゃないですか」

「…」

「だけど、お母さんの元に逃げ込んで、ふたりで暮らしはじめたものの、まだ若くて美人のお母さんも、ただの女。すぐに愛人ができちゃって家にいづらい状態になって。

お母さん的には自分の力だけじゃ生きられないから、男の人に頼りたかったんでしょうけど、それでヨシキさん、義理父が家に入るのと入れ替わりに、また家を飛び出しちゃって、今のワンルームマンションで一人暮らしをするようになって。

高校も大学も、ずっとひとりで生活しながら、そこから通ってるわけじゃないですか。きっとごはんにも愛にも、飢えてるんだと思うんです」

「…」

「ヨシキさんが女の人を、、、

ううん。

愛を信じないのは、そんな過去の辛く悲しいトラウマがあるからなんだと思います(≧Д≦)ゞ」

「愛を、信じない、、、」


それって、ヨシキさんがよく言ってた言葉。

桃李さんは、話を続けた。


「だけど、どんなに『信じない』って口では言ってても、きっと心のどこかで、ヨシキさんは本当の愛を探してるんだと思います。

でも、そんなの簡単に見つかるはずがないじゃないですか。だからヨシキさんが、たくさんの女の人とお試しでおつきあいするのは、しかたないんです。

大勢の女の人のなかから、ヨシキさんもきっと、自分のトラウマを乗り越えて本当に愛せる、トゥルーラブな赤い糸でつながった素敵な女の人を、いつかはきっと見つけられると思うんです☆

そんな素敵な彼女に、わたしなんかがなれるはずないですけど、ヨシキさんが求めてくれるなら、つなぎのコンビニエンスでも肉便器、、、あっ、すみません;; それでもわたしはいいんです。

いつか必ず、ヨシキさんには最高の愛を手に入れてほしいし、幸せになってほしいです」

「…」

「そしてとうとう、ヨシキさんに来るべきときが来たんです!!!キタ━━━(° ∀゚° )━━━!!

そうっ! 美月姫っ!!!!

美月姫こそがヨシキさんにとって、究極にして至高、愛の終着駅!

最後の恋の相手なんじゃないかと、わたしは確信しちゃいました!!!

わたし、嬉しいんです。

美月姫がヨシキさんとラブラブになってくださって ♡( ᵕ̤ૢᴗᵕ̤ૢ )♡

なのに愚かなわたしは、それを邪魔するようなことしちゃって、、、、」

「……………知らなかった」

「はい?」

「ヨシキさんにそんな過去があるなんて。わたし、少しも知りませんでした」

「え? ぁ、、、あっ??? わわわ、、、((((*´・ω・。)!!!」


わたしの言葉に、桃李さんは動揺して肩を震わせた。


つづく

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