第4話 かぼちゃスイーツ三変化
秋、馬肥ゆる秋、嘉穂は肥えない秋(動きすぎる)。
街中に芋、栗、南瓜がお出まししている。コンビニのスイーツの棚を占め、パティスリーのショーケースはショートケーキとチョコレートケーキを隅に追いやってモンブラン(栗だけではない。橙色と紫色が茶色の横に並んでいる)と南瓜ムース(プリン、ババロア)の天下となり、可愛いカップに入ったハロウィン仕様の甘い誘惑が、お財布に魔術をかけている。
負けられぬ。
これらすべての商品を食べていたら(食べたいけど)嘉穂の家賃が払えない(そして家中がハロウィンカップで埋め尽くされる。それも楽しそうだけれど)。
デパ地下のスイーツ通りを後ろ髪を引かれながら去り、近場のスーパーで南瓜と薩摩芋と対峙する。逡巡したが南瓜である。君が主役だジャック。
嘉穂は秋のスイーツに弱い。チョコレートが南瓜風味だろうとマフィンに薩摩芋が入っていようと。何故。一年中、今の時代となってはいつでも手に入る食材なのに何故。秋憎し。
お菓子の悪いところ(良いところ)は、一度に大量に作るのが一番楽ということだ。しかしそれでは飽きるし芸がない。そこで、南瓜ペーストの活躍。
買ってきた南瓜の種を除き、ザクザクと切り、軽く水で湿らせてラップで包んでレンジへ。チーン、といい音がたったら即座に取り出し、柔らかくなった橙色の鮮やかさから緑色の皮を取り除く。もちろん捨てない。スープに入れるから(カロチンと繊維たっぷり。半分はトースターで塩をふって焼いておつまみ)。
そこにクリームチーズと少しの牛乳、蜂蜜を投入。
この後、昔は時間をかけ、大きいフォークで滑らかになるまで何度も何度も潰していたが…昨今、強力なツールを手に入れたのだ。ふふふ〜。バイト代を貯めたかいがあったというもの。思わず顔がほころぶ。
そう、ハンドブレンダーである。
大きめのボールに入った南瓜(これ重要。飛び散るんです)に密着。スイッチ・オン。ヴィー。
ラム酒投入。ヴィー。
うーいい香り。これだけでも十分おやつになるんだけど!
しかし、ここで終わってなるものか。四つ切りで買ってきた南瓜のペーストがあっという間に出来上がると、三等分する。
一つはさらにココットへ二等分。ザラメを上からかける。さあ行ってらっしゃいオーブンへ。
もう一つはビスケットにスプーンで乗せ、こんもりたっぷり。上からそっと蓋をする。さあ行ってらっしゃい冷凍庫へ。
残った三分の一には牛乳をさらに追加。トロトロになったところで日にかける。鍋に戻してふつふつ。沸騰間際で止めてゼラチン、即冷却。そして昨年、ケーキ屋さんから連れて帰ってきたおばけと黒猫のハロウィンカップへ。さあ遅ればせながら行ってらっしゃい、冷蔵庫へ。
三つすべてを所定の位置へ配属し、ブレンダーも鍋もボールも洗ってキュッと蛇口を占める。
ピーー
ちょうどオーブンも仕事を終えた。
ふぅ。これで数日分のおやつとデザートが出来た。
スイート・パンプキンは粗熱が取れたら冷やそう。
ちょっと経ったら、パンプキンアイスサンドで課題の休憩。
デザートはパンプキン・チーズムースにしよっかな。
あ、南瓜どら焼き用のペースト、残しておくの忘れた…。また次回にリベンジ決定。
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