28:ギャリリ#抜歯手術した話をしよう

 俺ことP.N.『水縹みはなだF42(@Mihanada_f_42)』は婚活しようと動いている。だがそんなことはどーでもいいんだ。



 ドリルの前ではなぁ!!!!!!!!

 (カウント0)



 言っておくが今回、

 抜歯手術だからね、しかたないね。



ツライ>('A`)ノ

  ノへ)へ



 手術は09:00をもって開始される。麻酔などを考えると08:30には所定位置びょういんについているのが望ましいだろう。だって『チャリで来た』するし。勿論歯の手術だから朝食をとったあと、歯磨きと歯間ブラシでケアしておく。


 だがこの時点で胃が痛い。


 お前に分かるっていうのか、この痛みがさあああ! 洗面台の前、歯ブラシでシャコシャコ磨く俺が一言『おうちかえりたい』っていう弱々しいつぶやきが! お前にッ!! お前にぃいいっ!!



 途中で離脱して闇落ちした仲間っぽい二枚目の感じで脳内再生してください。CVはおまかせします。



 しっかしマジこええよ……歯の治療はまだ我慢できるが、手術だぞ手術。コトによっては顎骨削るとかほざきよる。あー、つらい、おうちかえる……。

 

 だが行かねばならない。俺は男の子である。九州男児じゃないけど、一応は男の子である。ほら、よく言うだろ勇者王も『成功率1%じゃよ→あとは勇気で補え!』ってさ。ひとっかけらでも勇気があったら『押すなよ! 絶対押すなよ!』である。


 故にやたら土埃が積もってうんざりするロードバイクをキコキコこいで病院に向かうわけだ。


 え? 病院前でこの長ったらしさはなんだって?



 正に手術前に書いてるからだよォ、チクショウメェェェェ!

 あああああああああおうちかえるうううううううう!!!!




<※以下術後です※>




 病院のロビーというのは清潔だ。とても清潔だ、憎たらしい。これから俺の歯をベキリバキリゴギャアしてくれるんだろォ? 俺は詳しいンだ!


 受付で診察券を出して待つこと30分ぐらい……俺は緊張を通り越して眠くなっていた。だって抗うつ剤(アドレナリン低下系)に加えて、頭痛外来で肩こり対策による葛根湯で身体ポカポカなんや。もはや俺だけ小春日和の木漏れ日のしたに居るも同じ。超おねむになるのも致し方ない。そう……俺は緊張以前に眠気と戦っていた。


 このまま行くとストンと墜ちる。やべえ、名前呼ばれても寝ちゃうかも……そんなときだ、名前を呼ばれたのは。



(*゚ー゚)「みはなださーん」

(;'A`)「あ゛いっ!!」



 このときばっかりは可愛らしい看護婦さんの声が地獄の番人に思えたよね。でも一步前に出ないと何とも成らないからね。俺は行くよ……世界を救いに行くような心持ちで、ビビった俺は病室へと足を進める。


 そこは先日診察を受けたのと同じ、青の座椅子……。紙エプロンと何故か血圧計を付けられた俺は鎮座して待った。しかしなんだ、何故血圧計が必要なんだ? よくあるあのギューってされるアレをまかれつつ、俺は首を傾げた。


 そして現れる若い先生。爽やかな笑顔が悪魔のように思える。



(;'A`)「きっきょうはよりょしくおにゃがいしまう」

(´・ω・)「はい、じゃあ麻酔しますね~」



 麻酔は慣れているから大丈夫だ。ただビックリしたのが、表面麻酔。


 苦えなぁ……と思いきやなのである。


 俺ァ思ったね、この先生……気を使ってくれてるって。俺が心底ビビってるのを感知して、子供向けの甘い麻酔薬を使ってくれたんだって。そこからもう全信頼ですわ。


 だから俺は感謝の気持ちをこめた。



(´・ω・)「麻酔苦かったでしょ?」

(*'A`)「いえ! わざわざメロン味の麻酔ありがとうございます!」

(;´・ω・)「……えっ? メロン?」

(;'A`)「えっ?」



 先生は困惑した。俺も困惑した。……どうやら緊張のあまり俺の味覚は狂っているようだ。でも甘かったんだよ。ちょっとペロペロしたい。


 その後の本麻酔の針はまぁいつもどおりの痛みだ。糸ようじかけるときの歯茎の痛みっていったらいいのかな。まぁなんてことはない。



(´・ω・)「じゃあ麻酔が効くまで待ちましょうね」

('A`)「ふぁい」



 手持ち無沙汰な俺はふと隣を見た。右手側、先生が扱う凶悪な医療器具ごうもんきぐ達だ。ははっ……これからドリルなんだろ? 俺は詳しいン……うん?



(;'A`).o0(ドリルがない?!)



 道具は次のとおりだ。


 ・やっとこ

 ・やっとこ

 ・やっとこ

 ・やっとこ

 ・やっとこ

 ・注射

 ・アイスピック


 やっとこ多すぎねぇ……? っていうかなんでそんな種類あるんだやっとこ。そしてアイスピック、お前は何故其処にいる? おめぇはアレだろ、コーヒー・カフェやオシャレなバー、或いは火サスの凶器として活躍すべき存在であって、医療現場に鎮座するタマじゃねぇだろ。


 っていうかドリルはどうしたドリルは。削るんじゃねぇの? 顎骨を。首を傾げつつ、ついに抜歯手術に入る。


 手術は手術なので、この時医療ドラマでよくある『術部以外を隠す青いアレ』をかけられる。しまった、視界が遮られて何をされているか分からねぇ! でもドリルじゃないことは分かる……そこは安心だ……。



(`・ω・)「じゃあ抜きますね~」

('A`)「ふが」



 先生の爽やかヴォイスが耳に届き、俺は元気にサムズアップした。で、なんかガチャガチャされているのだが麻酔がかかっててなんもわかんない。


 そう、なーーーーーんもわからない。


 ただこう、頭を押し付けられて『ミシミシ』とか『ミヂミヂ』という音が届くぐらいで……。どうもやっとこで引っこ抜いてるらしい。それも痛くないし感覚もないので『ほえー』とかぽんやり考え――。



(´・ω・)「はい、抜けましたよ~」

(゚A゚)「ファッ?!」



 え、施術初めて2分もないんですが? 嘘やろお前。え、うっそやろ?


 でも抜けてるらしく縫合施術にはいる。なんか二針くらい縫ったら止血作業にガーゼを噛んだ。その間に抜糸の予定も入れてしまう。


 ……え、まじで抜けたの? 俺は目を丸くしてずっと丸くして丸くして丸くして丸くした。たぶんここが漫画世界だったら目玉がこぼれてたと思う。


 だが抜けた。抜けたのだ。俺の親知らず1本目は。いとも簡単に、俺のビビりを通り越して、麻酔含めてたかだか2~30分の出来事で。



(*゚ー゚)「手術後は注意が必要なので読んでくださいね~♪」

(;'A`)「アッハイ」



 手渡された注意書きを読んだ。それはもう読んだ。お風呂とか食べ物の注意とか書いてある。クスリの注意とかも書いてある。なるほどまぁ守ろう。うん。


 それより俺の親知らずは実際どうだったんだ? 隣を見たら歯が居た。見た俺は相当なショックを受けた。



(;'A`).o0(これじゃなくてじゃねえか)



 ちょっと参考写真に乗っけるのを躊躇うレベルで暗黒に染まり、深遠なる穴がぽっかりとあいて、素人が見ても『アッこれヤバイやつ』と分かる虫歯であった。


 芸術的なまでの虫歯過ぎてちょっと飾りたいぐらいの虫歯だ。


 なに、これはアレか。最初に診察した歯医者かかりつけさんが気を使って『軽い虫歯』って言ってくれたのか? 興味深すぎて資料用に貰ってきちゃったよ……。


 俺はもう正直、SAWの頭拘束する奴くっつけられて、超凶悪なドリルでガリゲイゴリ削られる覚悟だったんだよ? 俺の悲壮な覚悟のやり場はどこにやったらいいんだ……。


 そんなわけで今まさに術後の俺は『アッ……ハイ……』となんともいえない気分になりつつ、親知らずの撤去を終えたのであった。


 たぶん抜糸手術ともう一つの親知らずもそんな感じなんだろうな……。そう、世の中の親知らずを抜く諸君。ビビってもなんも良いことはないぞ。これは実録実況エッセイだ。信じてもらって構わない。




 ではコンゴトモヨロシク。




=補遺:麻酔が抜けた後=========


 痛え、なにこれ痛え。


 偏頭痛と比べるとぜんぜん甘ちゃんで我慢できる程度だが、無視できないという絶妙なラインをなぞってくる職人芸。

 緊張性頭痛と比べると若干緊張性のほうが痛みは柔らかいが、体調的には緊張性頭痛のほうがヤバイので痛いだけの術後痛は完全に『拷問パーティータイム』としか言いようがねぇ。痛え。辛え。おうちかえりたい。


 これがあと1回かよ。おうちかえりたい。

 あとおうちかえりたい。


 そしてありがとうロキソニン。お前だけが救世主ヒーローだッ……!

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