第10話やっぱり幼女の魅力ってあれだよね
「おばさん、この子に決めました」
「あんた――変わった趣味しているんだね。てっきり真ん中の子を買うのかと思ったよ」
う~ん、買いたいけど……その子を買う為には、今持っている魔石を全て売り払わないといけなくなる。
それでも良いけど、この先何があるか分らないからね。
所詮、俺1人で出来る事には限りがあるんだから。
「それじゃ~今、契約書を持ってくるからお茶でも飲んで待っておいで」
女主人は。執事なのか用心棒なのか見かけでは分らないゴツイ女に、お茶を入れるように指示して部屋を出て行った。
俺が購入をしなかった女の子達は、ホッとした様子で奥へと戻っていった。
一方、俺が購入を決めた幼女風の子は――。
相変わらず、睨んだままだ。
俺、失敗したかもしれん。
もし、隷属の首輪とか無かったら後ろから刺されて逃げられてもおかしくは無い。
俺は、エルミューラに聞いてみた。
「なぁ~何でそんなに俺の事を睨むんだ?」
「…………睨んでなんかいないのだわ」
声が小さくて聞き取れなかった。
「はい?」
「だから!睨んでなんていないのだわぁ~!」
今度は、はっきりと聞こえた。
大きな声を出すのに慣れていない様で、エルミューラは白磁の様な白い顔を真っ赤に染まらせていた。
へぇ~良く見ると可愛いじゃん。
肌は真っ白だし、金髪も肩より長いし――瞳が赤いのは慣れないけど、なんつーか、そう!うさぎの様な可愛さで抱き締めたくなる!
「ごめん、ごめん。そこまで大きな声を出さなくてもちゃんと聞こえてるから」
幼女の目がきついのは元かららしい。
だが、あえて言おう!
そのギャップに萌えますと――。
お茶を啜っていると、女主人が手に羊皮紙と判子の様な物を持って戻ってきた。
「指先にこの判子を押し当てて、羊皮紙のサイン欄に押しておくれ。その判子は個人の魔力を判別出来る魔道具になっているから偽のサインを書かれる心配は無いわ。あたしと、あんた、そしてその子3人の判を押したら契約は完了だよ。後は、隷属の腕輪だけど――どうする、付けるかい?うちに来る大抵の客は付ける様にしているけどね――。あたし個人としちゃ~女を奴隷の様に扱う腕輪なんてものは必要ないと思っているのさ。どうせ逃げ出しても、門で捕まるから逃げ出せない。そんな物が無くても女達は自分の立場を痛いほど理解しているからね」
俺は少し考えてから……。
「じゃ~腕輪は無しでお願いします」
「へぇ~単なるスケベな男じゃないって訳だ。腕輪を付けないって事は女の子から抵抗されても文句は言えなくなるんだよ。それでもいいんだね?」
おぃおぃ、あんたが言ったんだろうに!
「はい。問題ありません。腕輪で言いなりにした女性よりも素の状態の方が、きっと楽しくなりますから」
「分ったよ。それじゃ~これで契約は終了だ。隷属の腕輪が無くてもこの羊皮紙があるから奴隷なのは変わらないけどね。もし、奴隷から解放したいならこの羊皮紙を持って行政監督署に行けばそこで開放の手続きはやってくれるよ」
そう言われ、羊皮紙を受け取った。
俺は、女主人に礼を言って屋敷を後にした。
勿論、俺の隣には身長120cmの幼女が奴隷商で貰った厚手の大きなシャツを着て付いてきている。
並んで歩くと頭は俺の胸の辺りにあり、会話をするのにちょっと難儀しそうだ。
「寒くは無いか?」
「うん、平気なのだわ」
「そっか。そのなのだわって言うのは口癖か何かなのか?」
「昔からこの話し方なのだわ。他の話し方は知らないのだわ」
そか――。
ちょっと変わった子だけど……楽しくなりそうだ。
「今日から宜しくな!俺の名前はキラだ」
「――宜しくお願いしますわ」
「取り敢えず、服がそれだけじゃ大変だから今から買いに行こう。服を買ったら靴屋と――風呂も入った方がいいかな?風呂から上がったら飯を食おう」
「お任せしますわ」
彼女と歩いていると、俺がパパさんになった様な気分になってくるから不思議である。
彼女の方が俺よりも104歳も年上なんだけどね!
服は、当然中古で狩りにも連れて行ける様に、動きやすいタイトなスカートと上は長袖の麻のシャツを購入した。
靴はこの世界では一般的な、何かの魔物の皮を編んだ物を買った。
そしていつもの湯屋にやってきた。
俺は銅貨6枚を支払って、女湯と男湯に分かれようとしたのだが――。
彼女が俺と一緒でいいと言い張ったので一緒に男湯に入る事にした。
脱衣場で服を脱ぎ、お互い裸になると――。
この子。ちゃんと出ている所は出ていた様で……。
無理矢理、女湯へと追いやった。
買う前に薄着のネグリジェで確認したんだろうって?
冗談言うなよ。
どう見ても幼女だったから、体系とか気にしなかったんだって。
いや、本当だから!
小学低学年の女の子を見てさ、その女の子の胸とか見ますか?
普通は見ないでしょ!
それと同じですよ。
胸を直視するって言うなら――あなた相当やばいですよ!
そして俺はいつもの様に湯気が漂う浴場へ――。
「いらっしゃ~い!」
今日は、男の子の日だったようです。
小学生くらいの少年が、寝そべっている客達の体をゴシゴシ洗っていました。
え?
あっちの処理ですか?
少年相手にする訳ないじゃないですか!
戦国時代の小姓でもあるまいし……。
綺麗さっぱり洗ってもらった俺は、湯船に漬かり直ぐに出た。
昔から長湯とか苦手なんだよね……。
落ち着き無いからさ、ジッとお湯に漬かっているだけとか――どんな苦行ですか!そんな感じだもん。
脱衣場で着替えをしていると、番台のお婆さんから俺が上がった事を教えられたエルミューラが素っ裸で飛び込んできた。
そういえば、彼女の着替えはこっちだった。
もうタオルで水滴は拭取った後らしく、直ぐに買ったばかりの服に着替えた。
湯屋に来る前にはくすんだ色だった金髪も今はキラキラ輝いている。
きっと成長したら、美人になるんだろうな。
そんな事を思いながら、一緒に手を繋いで外に出た。
何故手を繋ぐって?
仲の良い親子みたいで微笑ましいでしょ?
はい?
誘拐犯に連れられている幼女にしか見られないですか?
あなた、羨ましいからって僻んじゃダメですよ。
腹も減ったし、この前の大衆食堂に入った。
「何でも好きなものを食っていいぞ!」
「エルはこれがいいのだわ!」
そう言って、肉と野菜を焼いた野菜炒めを選んでいた。
俺は、この前と同じステーキを頼んだ。
今日のお勧めでは無かったけど、お勧めがシチューだったので――。
これでいい。
それにしても、フォークの使い方が綺麗だな。
元々は何処かの貴族の子だったりしてな。
美味しそうに頬張る顔を横目で見ながら、俺もステーキを頬張った。
明日からエルミューラを連れて狩りをする予定だ。
えっ?
彼女は何処に泊めるのかって?
そりゃ…………。
すみません。
何も考えていませんでした。
この子だけ宿を借りて泊らせるとか大丈夫かな?
う~ん……。
あ、そうだ――。
その前に聞いておかないとな。
「エルミューラのユニークスキルと魔法に関して聞きたいんだけど……」
エルは小首を傾げながら――。
「旦那様は何をご覧になったのかしら?」
彼女の話し方が変わった。
「えっと――俺のスキルに鑑定がある」
それで通じた様だ。
「成る程……それで私をお求めになったのですね」
「まぁ~それもあるけど、一番は白磁の肌と赤い瞳に萌えたからだ!」
「旦那様は変態だったのだわ~」
また雰囲気が戻った。
「別に、歳とかスキルがどうとか重要じゃないからさ――あんまり警戒しないで欲しいかな」
「ふっ、そういう事にしときますわ」
「ああ、助かる」
「それで旦那様は、何処の国の勇者様なのかしら?」
「そんな事まで知っているのか?」
「これでも――歳ですわ。鑑定でご覧になったのでしょう?」
「うん。見た」
「エッチですわ~私のあんな事やこんな事まで全部ご覧になられたのですわ」
「いやいや、そこ勘違いだから。何を言っているのかまったくわかりませんねぇ~鑑定で見える範囲なんて少しだから。3サイズとか分らないし――種族も何も表示はされないんだから」
「それでは――能力値だけしかご覧になっていない?」
「うん。その通り――」
「それ本当に鑑定なのですか?」
「ちゃんと観察眼って書いてあるけど……」
「それ鑑定じゃないじゃないですか!」
「えっ?違うの?」
「違いますよ。鑑定はその物の使い方まではっきりと分ります。観察眼は表面上しか分らない。その程度なのですわ」
糞、鑑定眼と観察眼ではかなりの差があるらしい。
俺のは、鑑定の劣化品じゃねぇかよ!
「それで、先程から何を悩んでいますの?」
「あぁ、俺が今寝泊りしている家は王城内にあるんだけどさ、そこだと」
「分りましたわぁ~」
ちょ、俺まだ話している途中なんだけど……。
「私の存在がお城の人に見つかると不都合が生じるのですわ」
「まぁ~ぶっちゃければそうなるね」
「大丈夫ですわ~これでも飛行魔法も使えます、いざとなったら……魔物を使役してこの国を」
「ちょっと、待ったぁ~!それはやっちゃダメだから。まだそんな時期じゃないし――」
「そうですの……久しぶりに楽しそうでしたのに……」
「所で、エルミューラって何者なんだ?色々詳しいし――かといってLV見る限りでは強くもないし」
「本当にエッチですわね!その質問は――禁則事項です!」
はぁ~何か謎多き幼女もどきだけど……仕方ない。
小屋に連れて行くか。
でも明日、あの貴族だかが小屋に来るんだよな~。
はぁ~面倒な事になったものだ……。
腹いっぱい食ったし、明日の朝飯でも買って帰るか……。
ここの食堂はお持ち帰りもやっていて、頼めば、専用の葉っぱの皿に乗せ包んでくれる。
2人前の冷めても美味しそうな料理を頼み、それを持って小屋へ帰った。
どうやって?
当然、暗くなったのを見計らって2人で夜空をランデブーですよ!
その言葉、古すぎ?
仕方ないじゃない!おっさんなんだから!
「へぇ~何時から勇者って豚小屋に住むようになったのかしら?」
「何を期待しているのか知りませんけどね……これでもちゃんと風呂もトイレだってあるんですよ!」
「さっき見させてもらったけど……ここ魔法使いが居ないと何も出来ない部屋だわ」
「えっ?魔石があれば何とかなるんじゃないの?」
「まずお風呂は浴槽だけ。これは魔法使いの火と水が使えないと意味が無いわ。それに台所は完全に火魔法で料理する方式だわ。魔石を収納する所が無いもの……トイレは用を足した後にお尻を洗浄する魔道具があった筈だけれど、取り外されちゃっているわ。これにどう住めというのかしら?」
「………………………………」
俺、何からなにまで騙されていたのかよ!
「多分だけど、メイドで日常生活用の火と水魔法を使える人を側仕えに選んで居た筈なんだけれど……旦那様、何か嫌われる事でもしたのかしら?」
「嫌われる様な事というか……ふざけて職業はヒモです!って言っただけだけど――」
「それは……ご愁傷様としか言いようが無いわ。勇者召還で呼び出したら、働きません。遊んで暮らしますなんて言われれば――こうなるのだわ」
「所で魔法ってどうやって覚えるものなんだ?」
「あら?旦那様の世界には魔法は無かったのね――魔法が使えない勇者っていうのも、笑えますわね」
「だからどうやったら覚えるのかを知りたいんだけど……旦那様はこの世界の活字は読めますの?」
「いや!まったく!」
「偉そうに、そんな事言われても困りますわ」
「だって、世界が違うんだから仕方ないでしょうよ?」
「それもそうですわね……では、魔道具屋さんで魔法のスクロールを購入するのが一番ですわ」
「ほぉ?そんな便利なものがあるなら、早く教えてくれたらいいじゃん!」
「そんなの無理ですわ。魔法を使えない勇者が居る事自体、寝耳に水ですもの」
そんな話をしていたが、夜も更けたのでそれぞれ別の部屋で眠った。
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