第9話大金と鍛冶屋と幼女?
俺はスライムを全部で23匹倒し、昨日と合わせて24個の魔石を持ってギルドにやってきた。
時間が、もう昼を少し回っていた為ミリーさんはもう帰った後で、初めて見る中年の女性がカウンターにいた。
「いらっしゃいませ、冒険者ギルドへようこそ」
俺を登録にきた人と間違えた様だ……。
うん。おばさんだしね――あるある。
「えっと、依頼を達成してきたんで確認をお願いします」
「あら、その若さで冒険者なの?凄いのねぇ~」
「いや、それ程でも……」
俺の格好は、髪は妹と同じショートボブ。茶色い瞳が付いている顔は、この世界では12、3歳に間違われる位に童顔だからおばさんが間違ってもそれは仕方がない事だ……。
俺はカウンターの上にスライムの魔石15個と、午前中に来た時に新しく渡されたCランクのギルドカードを提出した。
「へぇ~あんたその若さでもうCランクなのかい?将来有望なんだね~冒険者を辞めたくなったら教えとくれ!娘を紹介するからさ」
へっ?
あなたの娘さんですか!
見た所、35歳位に見えるから……20歳前後?
年上は嫌いじゃ無いけど――むしろ大好物ですけど。
それでも、見ても居ないのに、はいそうですか!
なんて言える筈もなく、苦笑いで誤魔化した。
「ほぉ~スライムの魔石が15個かい。丁度金貨3枚だね。こんなに稼げるなら今からでも娘を紹介しちゃうよ?」
「いえ。まだまだ若輩者ゆえ……」
「そうかい?残念だねぇ~家の娘は12歳なんだけど、これからきっと私に似た美人になると思うよ?」
あんた何歳だよ!
そんな突っ込みを心中でするが、おばさんも本気では無い様で――。
「はい、大金だから落とさないようにね!」
そう言って金貨とギルドカードを渡して、他の冒険者の接客に移って行った。
12歳ね……。
いや、俺幼女趣味じゃないし!
それにしてもスライムを半日狩るだけで金貨3枚――。
旨すぎでしょ?
これ異世界ものでは定番の奴隷とか買えちゃうんじゃ?
今の手持ちは、金貨11枚。
これで奴隷が買えるのか?
気になるとどうしようも無い。
昔から、気になった本は――大人が読む本でもネットで取り寄せて買った。
ギルドを後にした俺が向かった先は……武器屋。
俺が扉を開けると、いつもの親父さんではなく――幼女がいた。
「いらっしゃいませ」
まさか、おっさんの娘とか言わねぇ~よな?
9歳位で、青み掛かった銀の髪を肩まで伸ばして黒い瞳を輝かせながら挨拶された。
「えっと、親父さんはいるかな?」
多分、親父さんの娘と当りを付け、そう言ってみた。
「えっと、パパは今出掛けています」
流石に、幼女に奴隷の話をしても仕方がない。
「じゃ~親父さんがいる時にまた来るよ」
そう言って店を出たのだが、出る時に、また1人で留守番をするのか……といった悲しい表情をされたんで後ろ髪を引かれる思いがした。
他に誰か話せる人が居ればいいのだけれど……。
この世界で、知り合ったのは親父さんの他だと、女性ばかりだ。
諦めて、色々なお店を回って見る事にした。
何か硫黄の様な臭いがする店の前を通り、しばらく歩くと――。
『カァーン、カァーン、カァーン』と金床を叩く音が聞こえてきた。
俺にとってはリアルな鍛冶屋を見た事が無かったので、そこに入る事にした。
扉を開け中に入ると、痩せた長身のお兄さんが鞴を足で踏みながら、炉の火力を高め、はさみで素材を掴んで炉の中に入れ、素材が赤くなったら出して、小槌で叩いては、また炉の中へを繰り返していた。
しばらく眺めていると――。
「おや、ごめんよ。気づかなくて……」
そう言って、俺の方に向き直った。
「いえ、勝手に入っちゃってすみません」
「もしかして鍛冶屋は初めてなのかな?」
「はい!初めて見ました。凄いですねぇ~何を作っているんです?」
「これかい?」
俺の方へ今まで鍛えていた素材を見せてくる。
「これは風車に使う歯車の素材さ」
「あ~あの王城に付いている最新式の風車ですね」
「あぁ、あれの部品だね」
「風車の数を増やすんですか?」
「いや……あの風車のギアは消耗品でさ、1ヶ月に1回はギアを交換しないと直ぐ壊れてしまうんだよ。それの交換用だね。お陰で忙しくて、他の仕事に手が回らなくてね……困ったものだよ」
いくら何でも鉄のギアを使った風車が1ヶ月で壊れるのはおかしい。
俺は、ギアの完成品が無いか聞いてみた。
「予備の出来上がっている完成品は無いんですか?」
「あるけど――それがどうかしたのかい?」
「いえ、俺も技術を少し齧った事がありまして……ギアが1ヶ月で壊れるのはちょっとおかしいなと……勿論、お兄さんの腕が悪いとかじゃ無いですよ。もしかしたら設計段階で間違っているのでは?」
フォローしながらも完成品を見せて貰えるように頼んでみた。
すると、部屋の隅にあった棚から掌に乗る大きさと、頭位の大きさの歯車を出してきた。
「これが完成品だよ。何か分かるのかい?」
「ちょっと見せてもらいますね」
俺は歯車のフラット面に差が無いか?、両歯車のモジュールは等しいかなどを確認した。フラット面は歯が噛み合う突き当たりの部分で、モジュールは歯と歯がかみ合う部分の事だ。
これにバラつきがあると負担がかかり簡単に歯車は壊れる。
だが、流石は職人技である。
目視で見た限りでは誤差は感じられなかった。
続いて、歯車の数を数えてみた。
「あ~なるほど……」
「何か分かったのかな?」
「ええ。歯車の数が互いに素になっていないから、劣化し易い歯同士が何度も繰り返し当たる事で、耐久性が薄れ1月で壊れたんですよ」
「互いに素。なんだいそれは?」
あ~そこからか……。
「例えば、この歯の様に、12個の歯で24個の歯をかみ合わせると――。
この大きなギアが1回転する間に小さな歯のこの部分は同じ場所に2回当りますよね?」
両方の歯車の1箇所に印を付け、それを回して実証する。
「確かにそうだけど……それが何か?」
「はい。歯車の様にずっと回転しているものはどうしても劣化し易い場所が決ってくるんです。劣化し易い場所同士が何度も噛み合う事で更に劣化が早まります。なので、劣化を遅らせる為には互いに素の関係を作らないといけません。
互いに素とは――簡単に言うと1以外に公約数を持たない事です」
本当に簡単に説明をした――。
えっ?
なんでそこを飛ばすのか?
だって作者馬鹿だよ?
そんなもん知る訳がないじゃん!
「う~ん、さっぱりわからないね」
「じゃあ、この歯車に近い組み合わせで、小さい方の歯は11。大きい方は29で作ってみてください。それなら互いに素なので壊れにくくなりますよ」
半信半疑な様だが、やってみるそうだ。
俺にはどうでもいい事だが……。
「所で、奴隷とか購入する場所とか知らないですか?」
まだ諦めてなかったのかよ?
そんな夢の無い――諦められる訳がないでしょう!
「えっと、奴隷商なら貴族街に向かう大通りにある靴屋の裏だよ。多分、赤い煉瓦の壁だから行けば直ぐ分ると思う」
「そうですか。有難う御座います。では」
「あっ……君の名は――」
最後にお兄さんが言って来たが、奴隷商の事が頭で一杯で……既に俺は鍛冶屋を飛び出した後だった。
「本当に、この組み合わせなら壊れないのか?」
まだ半信半疑ながら――このお兄さんは言われた通りの組み合わせで歯車を完成させる事になる。
やっほぉ~夢の奴隷だよ!
やっぱり若い子がいいかな?
それとも、ラミリーさんの様なお姉さん系も捨てがたい!
意気揚々と貴族街への通りを駆け、目印の靴屋を見つけた。
確か、靴屋の裏とか言っていたな……。
俺は、靴屋の脇の細い路地を奥へと入った。
すると赤い煉瓦の建物が見えた!
お兄さん!ありがとう!
赤い煉瓦の建物は鉄製の檻の様な柵で覆われており、如何にも怪しい佇まいである。
緊張しながら玄関のドアを叩く。
ここ普通の貴族とかの屋敷じゃ無いよね?
どう見ても……普通の屋敷なんだけど。
扉に付いている金具を叩くと――。
中から、40代位の化粧が厚く香水の臭いがキツイおばさんが出てきた。
「あら、ここは僕の様な子供が来る所じゃないわよ?」
「これでも冒険者で、お金もちゃんとありますよ!」
「へぇ~奴隷の相場を知っていて来たのかしら?」
「えっ、そんなにお高いんで?」
「そうさねぇ~うちで扱っている子達は、娼館に売れる様な綺麗どころだから、下は金貨10枚から上は金貨100枚はするよ?」
「えっ――そんなに高いんですか?」
「その金額を聞いて高いと思うなら止めとくんだね。安い女が欲しければ、貧民街の近くにある金物屋の裏にある奴隷商にでも行くんだね。あたしゃ~どんな病気を持っているか分らないから止めた方がいいと思うけどね」
「そうですか……ちなみに金貨10枚だとどんな子がいるんですか?」
「へぇ~若いのに金貨10枚は持っているんだ?」
「はい――」
「じゃぁ~少しだけ見ていくかい?」
「はい。お願いします」
俺は、中へ通された。
玄関を潜ると、真っ直ぐな廊下があって壁には花の絵が沢山飾られていた。
俺が絵を見つめていたからだろうか?
女主人が説明してくれた。
「ここは奴隷落ちした娘が集まる場所だろ?だから気持を落ち着かせる為にこんな絵を飾っているのさ。これでも無いよりは有った方がマシでね。飾る前は、怯えるだけだった子達も少しは自分の運命を受け入れる覚悟が出来る様だよ」
へ~自分の故郷に咲いている花でも思い出すのだろうか?
童貞の俺には分らないが……。
そんな話も終わり、奥まで進んだ女主人と俺は、一番奥の手前左側の部屋へ入った。
部屋の中には、3人掛けのソファーが置いてあり、俺はそこで待つ様に言われた。
待つ事5分位だろうか?
薄いネグリジェに身を包んだ、女3人が連れられて来た。
右から、茶色い髪をおかっぱにカットして薄い青の瞳からは輝きが失われ、ボーっとした表情で立っている。胸はネグリジェの上から透けて見えるが小さかった。
真ん中。くすんだ銀髪を胸の辺りまで無造作に伸ばした、青い瞳の女性で目は赤く充血しており、まだ連れられて来て間もない事がわかる。この子は、ネグリジェからでもはっきり分る位に胸が大きい。身長は最初の子と同じ位で160cm位だろうか……歳は、俺と同じ位に見える。
最後に左の子は……身長120cm位で金髪、赤い瞳は俺を睨んでいた。この子、女性じゃ無いよね、どう見ても幼女だろうよ!
面白そうなので鑑定眼を使ってみた。
☆エルミューラ
年齢――120歳
レベル――10
生命 ――280/355
魔力 ――340/340
力 ――25
敏捷 ――55
ユニーク――『魔物使役』『自然治癒』『……』
取得魔法――『催眠』『飛行』『なし』『なし』『なし』
えっ――何この子?
120歳?
ステータスバグっているのか?
試しに、他の子にも使ってみた
☆アメリージェ
年齢――15歳
レベル――1
生命 ――30/35
魔力 ――10/10
力 ――15
敏捷 ――8
ユニーク――なし
取得魔法――『なし』
☆エリン
年齢――15歳
レベル――1
生命 ――25/30
魔力 ――5/5
力 ――10
敏捷 ――5
ユニーク――なし
取得魔法――『なし』
バグってねぇ~よ!
あの子、何者なんだ……。
すげ~気になる。例の病気が始まった――。
他の子もここから出してあげたいけど……。
そんな金は無いからなぁ~。
同情はするけど仕方ない。
俺は、自分の興味を優先させる事にした。
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