独白みたいに

 もうだいぶ歩いてきた。

 春先、それは街が封鎖されるなんていう、あまりにも理解しがたい理由。結局、街の外の世界の方がはるかに広かった。

 街で出会った歌うたいたちは元気にしているだろうか。彼らなしではいられないと思った私のことを、願うことならどうか忘れてほしい。私は元来、あの街で歌うことに向いていなかったのだ。

 どうしてこんなことを思い出したのだろうと、ふと考えてみる。この街は、少しだけあの街に似ている。似ているとも思いたくない。過ぎ去った過去を憎みがちな私にとって、それはあの街ですら例外ではないのだ。

 それを許す語り部の街だ。私は歌うたいをやめた。

 全く似ない似た者同士の不思議な街。私の周りの友人が、必ずしも人の形ではないような街。

 物言う人形、変幻自在の青年のような化物、高貴なドレスの少年、疑わせない液体動物。

 誰が何なのか、彼らが人の形をしていたことはあるのか、服の下に隠す傷跡はまだ痛むのか。私は何も知らない。そしてこの街で初めて気がついた、私の服の下の傷跡。

 私ももう、人ならざる者になっているのかもしれない。私は私を騙っている。それが許された街なのだ。それで十分。騙った理想はもう私だ。


 そしていつか私も


 もうじき時間がなくなっていく。語り部の語れない話は、これまでにしようと思うのだ。

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