第17話:2025年問題の老人部会の創設(202011)
高齢者が急増している現状の対策協議会として、政治家、産業界(不動産、建設、医療、銀行)福祉協議会ができた。これに対し、対象の高齢者が協議会を作ろうという動きが自然発生的に現れ始めた。加藤と山下、北山、木島も老人シェアハウスを見てきて自分たちの問題なので積極的に関わっていきたいと考えていた。
東京と横浜で財界、銀行、商社、学者のOBたちが母体となる組織をつくりメンバーを募っていた。その時、加藤ら4人が老人シェアハウスを見学した事が知られて、加藤と北山が東京老人部会、山下と木島が横浜部会へ来る様に要請があった。その後、彼らが東京と横浜の老人部会にメンバーとして加わる事になった。高齢者急増の問題は差し迫っており月2回の会合が開かれる様になった。そして加藤達4人は月一回ずつ会議に参加すると協議会に伝えた。翌月、山下と木島が横浜部会に参加要請があり出かけていった。午前10時から対象の高齢者や建設、不動産、葬儀社、銀行、政治家などが全員参加する全体集会が始まった。最初に政治家から現在の高齢者の人口と病院、葬儀場のアンバランスで危機的状況にあるという状況報告が発表された。
次に、具体的に「末期老人病院」についてのテーマについて話し合った。いろんな質疑応答があった後、突然、山下さんに議長から指名で、高齢者として、どの様な施設を望まれますかと聞かれた。それに対して、末期老人病院の収容人数の問題もあると思いますが、末期癌病院みたいに暗い雰囲気ではなく花壇に花が、壁に絵がかけてあり、音楽が流れている、ホスピスの様な方が良いと思いますと答えた。
続けざまに基準としては、延命治療を必要としない老人で余命3~4週間以内と言う事で良いですかと問われた。それについては施設の数と対象者の数で、仕方ないかも知れませんと答えた。更に、場合によっては廃校、病院、工場の後を改修した古い建物になるかも知れませんが、どう思いますかと言われた。それも現状を考えると仕方ないかも知れませんが、極力、綺麗に改修してもらいたいと言った。
お隣の木島さんにも、同じ質問ですが、お答えいただきたいのですがどうですかと聞かれた。木島は女性として綺麗な施設で愛情をもって看取ってもらいたいと言った。
いろいろ厳しい条件がある事は、わかりますが、しかし、この問題は、私たちのせいではなく私たちが生まれた戦争中の軍部と政府の「産めよ殖やせよ」の政策の結果、団塊の世代と呼ばれる突出して人口の多く世代が生まれたわけです。我々は、むしろ被害者なんですと、毅然と言い切った。この発言に会場の団塊の世代の人達から、そうだ、そうだと大きな声と、そうだ被害者なんだぞと大声が聞こえ、やがて大きな拍手となった。
議長が確かに言われる通りかも知れません。しかし現在の首都圏の状況を考えると、やむを得ないです心苦しいのですが、ご理解下さいと言った。木島が最後に、そういう事で、できるだけ綺麗な施設で敬意を払って私たちの世代の人達を看取って欲しいものですと涙ながらに訴えた。すると会場が水を打ったように静かになった。
会場から手が上がり議長がその人をさして、どうぞと指名した。不動産会社に勤務している石島と申します。今の話を聞いて、我々、不動産、建設、に携わっている人間は、きちんと、ご要望に答える様な立派な仕事をしたいと言い、多分この会場の関係者もそう思ったことでしょうと言った。その時、会場から大きな拍手と、そうだ頑張っていこうと声が飛んだ。議長が、これで総会は終了しますと言い、この後、病院の設計や、葬儀場の事などを分科会で話し合って下さいと言った。
終了後、木島と山下さんと不動産会社の石島さんが食事行こうと近くのレストランに入った。そこで石島さんが木島さん、すごいね、説得力がある御意見でビックリしました、いや感動しましたと言った。説得力があって素晴らしい。確かに団塊の世代の人は、その時代の政治のせいで、大勢生まれたのは確かです。
今年の冬は、厳しい寒さもあって、亡くなる老人が多くて首都圏では、葬儀場が足りなくて、他県に援助を求めて車で一時間以上もかけて葬儀場へ運ぶケースも珍しくはない。そこで東京都、横浜市などは、多くの葬儀業者、建設業者、不動産会社と協力して山間の土地に大きな末期老人病院と葬儀場を作る事にした。
その後、末期老人病院は、余命4週間以内と考えられる人の看取りを目的にした、介護と緩和ケアのための病院であり医師と看護師の数は少なく介護士と多くのボランティア補助員によって成り立つ施設となった。
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