8人目:警察
「本部! 本登録済みの宇宙座標へ
「……うわ、え、先輩!? なんすか、いきなり? 通信できるようになったんすか!?」
「詳しいことはあとで説明する! いいからとっとと送れ!」
「りょ、了解っす!」
相模の体が二重にダブって見えたかと思われた次の瞬間、その片方が弾き出され壁に叩きつけられる。同時にその姿は急速に元の宇宙人の姿へと戻っていった。
金属製のチューブが口から生えたような異形の顔が、その意識を取り戻そうと頭を左右に振った。
「くそ、妨害だけでなく同位まで全て解除されただと!? あの女、本当に地球人か? 規格外が過ぎる……」
次の瞬間、その背後で空気を震わす轟音とともに爆発的な閃光が辺りを包み込んだ。
「私の教え子だからな」
光の中心から流線形のフォルムを基調とした細身の甲冑に似た金属性のスーツが鋭い足音と共に近づく。
「将来有望ではあるがまだ成長途中だ。申し訳ないが」
鋭く宙を薙いだ私の手の先から赤い光が伸び、刃の形に凝縮する。
「貴様の相手は私だ……倉重!」
「は、はい!」
突然、名前を呼ばれたマジカルチカがビクッとステッキを抱き締める。
「相模を連れてこの場を離れろ!」
「わ、分かりました! ……ん? 倉重?」
倒れた相模の体を抱え上げつつ、飛び去ろうとしたマジカルチカが途中で私の言葉に気づいたらしく慌てて振り向く。
「あ、ちなみに私、その倉重さんって人とは別人ですから!」
「いいから行け!」
「え、お前、倉重なのか!?」
「嘘、相模くん、気が付いてたの!?」
「いや、お前が倉重なわけないよな……だって……」
「ちょっと、どこ見てんの!? もー! 大人しくしててよ!」
「ちょ、待て、く、首を締めるのはやめ」
2人と2匹の影が上空へと遠ざかって行き、残された私たち2人は互いに空気の距離感をつかみかね、しばらくのあいだ無言で向かい合った。
そのとき、遠ざかって行く上空からマジカルチカたちの呟きが聞こえた。普通であれば到底聞き取れるような音ではなかったが、本来の姿に戻った私には造作もないことだ。
「なんか大変みたいだけど警察は呼ばなくて良かったの?」
「警察なんて呼んでどーするのよ。ああいうのはプロに任せておけばいいの」
「え、でもあれ轢き逃げで女の子が死んだ事件と関係あるんじゃないの? あの事件、警察に任せたほうがいいとか言ってなかったっけ?」
「そんなこと言ったっけ?」
「ほら、轢き逃げが迷宮入りしそうだったから手伝わなくていいのかな、って言ったら『ああいう変なのが関わってる事件は、ふつーの警察に任せておけばいいのよ』って言ってたよね?」
「あー、あれ。聞き間違えてたのね。違うってば」
あのマスコットの1匹が頭上でこっちを指したのが見えた気がした。
「ああいう事件は、
その通りだ。
相手の体を貫いた赤い刃を引き抜く。敵の体は光の粒子となって今度こそ確実に原子単位まで崩壊した。そして煌めく光の中で私は上空を見上げ、空から漏れ聞こえた声に心の中で答える。
これが私たち、
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