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こんな風になっているのか、知らなかった。
石畳のように組み合わされた歩道、左手には店が並び、右手の階段を降りると小さなグラウンドと少しの遊具があった。一言で言えば今どきのスタイリッシュな空間だけど、それだけじゃなくてちゃんと“共存”している感じがする。
速水の店は真ん中より少し奥の方らしい。公園にも人が多いし、一番手前のカフェにも結構人が入っている。思っていたよりも客入りはいいのかも、なんて。別に心配とかしてねぇし。
「いらっしゃいませ、お一人様でしょうか?」
シンプルな作りの扉を開けると、髪を一つに結んだ若い女の子が出迎えてくれた。店内は混んでいるようだが、どうやらランチを食べて帰れそうだ。
「すみません。私、花菱と申しますが速水浩輔さんはいらっしゃいますか」
「マスターですか?」
「はい」
「少々お待ちください」
女の子はにっこりと微笑んで去って行った。案内されたのは窓に向かって作られたカウンター席の一番端だ。子供が元気よく遊んでいる姿がちらりと見える。きっと夜には歩道に置かれた照明が石畳を照らして綺麗なのだろう。なんかもっと流行ってもいいだろうに、もったいない。なんて。
「あ、本当に想太じゃんっ」
背後から心なしか嬉しそうな声が聞こえた。振り返る間もなく壁と俺の間にスッと入って来る。
「なになに、どうしたの」
「ニヤニヤすんなよ」
「しっしてねぇし」
なんで嬉しそうなんだよ。オープンして一年経ってやっと店に来たからか? お前は俺の店が開店した日に来てくれたって言うのにな。
「これ、ちょっと早いけど」
「え、まじで」
「一周年おめでとう」
ちょ、なんで固まってんだよ。一年間で一度も来てなかったけど、俺だって祝いたい気持ちくらいあるんだよ。そんなに俺冷徹じゃないわ。
「あ、ありがと」
「あ、後ランチ食わして」
「え」
ニッと笑ってやると少しだけ怒った風にしてすぐに微笑んだ。
「しかたねぇなぁ。そんなに食いたいなら食わしてやるよ」
「作んのは奥さんだろ」
「ばっ俺だって手伝いくらいするわ」
手伝いかよっ。
「んで、一杯くらい飲んでくだろ」
「お任せで頼むわ」
速水は両手で花かごを持って奥へ入って行った。
ずっと前からお前の事、認めてたっつーの。
同い年だけど一年遅くバーテンダーの世界に入った速水とは、修行時代のライバル的存在で。まぁ主に修行先のバー同士、だったんだけど。師匠同士が言うから何となくライバルっぽくなっていたけど、正直いろいろ嫉妬するところもあって。
もちろん俺の方がカクテルを上手く作れる自信がある。けれど速水にはセンスがあったから。あとお客様の扱いとか。敵わないところもあった訳で。
それを本人に言うつもりはこれからも一つもないけどな。
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