♯5 いいわけないじゃん
するとそこにはリィンベルの制服を着た四人の少女がおり、一人は地面に膝をつきながら頭を下げ、他の三人が座り込んだ彼女を見下ろして威圧していた。
「うっざ! アンタってすぐ謝ってばっか。はー、なんでこんなグズがリィンベルにいるのよ。迷惑だからさっさと辞めてくんない?」
「ご、ごめんなさい……」
「だるっ、またそれじゃん。アンタ謝ればいいと思ってるワケ? あーもうどうでもいいわよ。それより次の試験、アタシとやってわざと負けてね」
「……え?」
呆然と顔を上げた銀髪の少女に、威圧的な態度の少女がその赤い髪を指にくるくる巻き付けながらけだるそうに言う。
「アンタのせいで成績下がったんだから責任とるのは当然でしょ? は~またベアに叱られるじゃん。うざうざ。それともなに? 文句でもあるワケ?」
「で、でも、あれは、わたしのせいじゃ……」
「はぁぁ~? なにそれ責任転嫁? つーかクラス最下位の落ちこぼれがなに逆らおうとしてんの? 魔術の世界は実力主義。ムリヤリ辞めさせてやってもいいんだけど? 学院にいさせてやってるアタシらの優しさがわかんないワケ!?」
「ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」
声を荒げて詰め寄る少女に、座り込む銀髪の少女は反射的に謝罪して身をすくめた。
険しい顔で詰め寄っていた少女はため息をついて屈むと、銀髪の少女と視線を合わせてその表情をにこっと柔らかくした。
「ね、アンタみたいなとろーいグズと付き合ってくれる〝友達〟なんてアタシらしかいないんだよ? 入学時からの付き合いなんだし、困ってる〝友達〟を助けてくれるよね?」
「……とも、だち……」
「そ。これからも仲良くしたいじゃん?」
そう言ってニコニコ笑う少女に、銀髪の子もまた小さな笑みを浮かべ、
「……う、うん。わかった……いい、よ……」
と、相手の要求を受け入れてしまった。
「――いいわけないじゃん」
そこで乱入したレナの第一声に、少女たちがバッと驚いた顔を向けてきた。
「は、はぁっ? アンタだれ? つーかいつからいたのよっ!」
「通りすがりの留学生。あなたがこの子を怒鳴っていじめてたとこからいたけど。ていうか、試験があるんだから実力で勝てばいいだけなのに。あなた、よっぽど自信ないんだね」
「なっ――」
淡々としたレナの発言に、その〝怒鳴っていじめていた〟少女の顔が髪色と同じようにじわりと赤くなる。
それからその少女はレナの姿を見てハッと気付いた。
「ア、アンタ! その制服! 聖都からの留学生でしょ!? よそ者が口出してくんなようざっ!」
「同級生いじめて良い成績とろうとしてるあなたたちの方がうざいと思うけど。いや、うざいよりダサイ、かな? リィンベルの子って育ちが良い貴族の子供ばっかりって聞いてたけど、みんなこうなの? レナの友達の方がずっとかっこいいよ」
「んなっ、な、なっ……!」
正直なレナの言葉にさらに顔を紅潮させていくいじめっ子メンバーたち。
それが原因か、とうとう赤髪の少女が実力行使に出た。
「……うざ! うざうざうざっ! あーうざすぎっ!!」
激怒する彼女が両手に持ち出したのは口紅。それらを振り下ろした瞬間、両の手に魔力で形作られた二本の
「――《
その鞭の先は本物の蛇の頭部のようになっており、牙を剥いてレナを威嚇する。それを見て赤髪の少女についていた二人の少女が慌てて声を掛けた。
「ちょ、ちょっとレベッカ!」
「さすがにやりすぎじゃない!?」
「アハハいーんだよ! 常識も礼儀も知らずに噛みついてくるカワイイ留学生にちょぉっと〝躾け〟してあげるくらいは務めでしょ? ま、この子たちに噛みつかれたら……魔力の毒でレベッカ様の下僕になっちゃうけどさぁ!」
赤髪の少女――レベッカは両手の鞭を自由自在にしなやかに振るい、左右から凄まじい速度でレナを襲う。それでもレナは鞄を抱えたまま身動き一つしなかった。
銀髪の少女は思わずぐっと目を閉じて――それからおそるおそる開き、愕然とした。
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