♯333 お待ちかねのメインショー!
そうしてパーティーは続く。
「さてさて! お料理を楽しんでもらいながら、こちらのステージもお楽しみください! バニーガールたちによるロマンティックファンタジーイリュージョンショーでーす!」
ステージ上のニーナのそばには多くのバニースタッフたちが集まってきていて、そこから怒濤のショーが展開されることになった。
まずは大きな箱の中に一人のバニーガールが入り、他のバニーたちが次々にその箱を剣で突き刺す。客席からどよめきが起きた。容赦なく何本も突き刺される様子に、フィオナは思わず目を塞いでしまった。
「はっはっは! 心配すんなよフィオナちゃん。ああいうのは中で上手く避けてんだぜ。リゾート都市のショーで見たことあるわ」
「そ、そうなんですか? でも、見えない箱の中で避けるなんてすごいです……!」
「ネタを明かすのは興ざめというものでしょう。まったく無粋な男ね」
「どうやって避けているのか俺も知りたい……よほどの手練れだろう」
各々の視点でショーを楽しむクレスたち一行。
「それではごかいちょーう♪」
ニーナの声と共にゆっくりと開封されていく箱。
ヴァーンの言う通りに中のバニーが剣を避けていた――のかと思いきや、すべての剣がぐっさりと身体に突き刺さっていた。フィオナが「きゃあ!」と短い悲鳴を上げ、クレスやヴァーン、エステルもそれぞれに動揺する。他の客らも同様だ。
しかし平然としているバニーガールはそのまま外に出てきて一本一本剣を抜き取る。するとその身体には傷一つも残っておらず、血の一滴すら漏れてはいない。
少々過激だが強烈な印象のあるショーに虚を突かれた客たちは思わず拍手をし、バニーガールがペコリと頭を下げた。
クレスたちも手を叩きながら言う。
「すごいな……どうやったんだ……!」
「び、び、びっくりしました! 確かにちゃんと刺さっていたのに……どういうことなんでしょう!」
「はっはっは! オレ様の裏をつくたぁなかなかやるじゃねぇか! つーかこんなもんタダで観られるとか、やっぱアイツイイヤツなんじゃねぇの?」
「……どうもあのニーナという魔族は、よほどパーティーとやらにこだわっているようね」
それからもショーは続き、バニーガールたちが様々な出し物で観客をアッと驚かせ、喜ばせ、魅了する。
美味しい食事に見事なエンターテインメントショー。人々はカジノでのことなど忘れるようにショーにのめり込み、愉しんだ。
そしてニーナがステージの中央に立つ。彼女の周りには他のバニーガールたちが揃って集合した。
スポットライトを浴びるニーナが言う。
「ショーはお楽しみいただけましたでしょうか! しかしまだまだこれからです! ニーナプレゼンツのロマンティックファンタジーイリュージョンショーはここからが本番! それでは次のパーティーをはじめましょーうっ♪」
ぴょんとジャンプして手を挙げるニーナ。
次の瞬間――会場の照明がパッと落ちて暗闇に包まれる。小さなどよめきが起こった。
クレスはすぐに行動を起こす。
「フィオナ、大丈夫かい?」
「あ、ありがとうございますクレスさん。少しびっくりしましたけれど、大丈夫ですよ。でも……このまま、もう少し手を握っていてもいいですか?」
「ああ、もちろん」
暗闇が苦手なフィオナを気遣い手を握っていたクレス。お互いの顔も見えないような状況で、それでも二人は笑いあって心を落ち着かせていた。
多くの者たちはこの演出に驚きつつも、次はどんなものが楽しめるのかという期待に胸を膨らませ、警戒を見せる者はほとんどいない。ヴァーンが「ヒュー! 次はストリップショーで頼むわー!」と歓声を上げ、直後に彼が「ぐえっ」と鈍い声を上げる。
明かりが復活した。
今度は大きなどよめき。多くの者が思わず立ち上がっていた。
先ほどまでの華やかなパーティー会場からは一転。
そこは――巨大なコロシアム場となっていた。
クレスたちが囲んでいたテーブルや椅子、そしてニーナたちバニーの立つステージはそのままに、それ以外のすべてが石造りのコロシアムへの変貌していたのだ。しかしただの無骨な作りなコロシアムではなく、あちこちにパーティー感を演出する花やリボンなどの飾り付けが施されている。柱もすべてニーナの姿を象ったような派手な意匠だ。
クレスたちも驚愕する。
「ここは……まさか聖都の!? し、しかしいろいろと異なっているな……」
「て、転移の魔術でしょうか? ……いえ、違う。おそらくこれは、結界内に作られた作り物の場所……」
「これだけの人数を瞬時に転移させるなんて神業でしょうし、そういうことなのでしょうね。フィオナちゃん、見えているの?」
小さくうなずくフィオナ。聖女だけが持つ『
ヴァーンが後頭部を手でさすりながら言う。
「んだよストリップじゃねぇのか。コロシアムで殺し合いってか?」
「笑えない冗談はやめてちょうだい。また叩かれたいの?」
「わかってたけどやっぱお前だったのな! 暗闇で後頭部殴るとかもはやアサシンの所行だぞ!」
「こんな美しいアサシンに殺されるなんて貴方も本望でしょう」
「ハッ、ならあと30トールくらい乳でかくしてから言えや。乳に埋もれて死ぬなら本望だからよ!」
「なぜ男はどいつもこいつも胸だ乳だおっぱいだと……」
冷気を放ちながらイライラし始めるエステル。ヴァーンがケラケラ笑い、クレスとフィオナは苦笑する。
そこでステージ上のニーナがビシッとヴァーンの方を指さしてウィンクした。
「そちらのエッチなおにーさん! 大当たり~!」
「ハ? んだよ?」
いきなりのことに意味もわからず呆然とするヴァーン。エステルが「猛烈に嫌な予感がする……」と頭を抱えた。
果たしてニーナは言う。
「それでは皆サマ! お待ちかねのメインショーは~~~……なんと! お客様ご自身がご参加いただける特別ショー! 素晴らしい運のお持ちの皆さんによる、楽しい愉快な殺し合いショーでーす♪」
両手を広げて本当に愉しそうに言ったニーナとは対照的に、クレスたち招待客はただ愕然とした。
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