剣術部の晴れ舞台、そして……7
「みんな、大丈夫か?」
慎一郎が起き上がり、仲間達の無事を確認する。
「ああ、大丈夫だ」「あたしも大丈夫」「おいらもっす!」
徹、結希奈とゴンがめいめい返事をする。その声からすると大事はなさそうだ。
激しい揺れを感じたのはほんの一瞬で、その後余震がある様子は今のところ感じられない。
辺りを見回すと、剣術部の出し物が行われていた大きなテントはさすがにしっかりと作られているようでびくともしていなかったが、その脇にある運営事務局の小さなテントの柱は倒れていた。
しかし、そこにいた秋山をはじめとする剣術部の面々に怪我はなかったようで、崩れたテントの布から這いだしてきている。
「雅治さん、大丈夫か? 怪我は?」
「ああ、問題ない。しかし、大きな揺れだったな。最近地震なんてなかったから、驚いたぜ」
そう言われてみればそうだ。年間で二千回起こるとも言われているこの日本において、北高が封印されてから地震が起こったという記憶はない。久しぶりの地震が立っていられないほどの大きさだったというのはなんとも不気味だ。
慎一郎がそんなことを考えていると、メリュジーヌが慎一郎にだけ聞こえるように言った。
『気をつけろ、今の地震、何かがあるぞ』
「何か?」
『うむ。何が起こるかはわからぬ。じゃが、そなたも感じたであろう、揺れを感じる直前のあの不快感』
「ああ。あれは何だったんだ?」
『わからぬ。何らかの大きな魔術が起動したかのようにも感じられたが……。とにかく、注意するに越したことはない。もっとも、わしの取り越し苦労ということも十分にあり得ることじゃがの』
慎一郎の不安を紛らわせるかのようにメリュジーヌがにこりと笑った。それにつられて慎一郎も笑う。
しかし、メリュジーヌのその気遣いはすぐに裏切られることになる。それも、最悪の形で。
「おい、あれ何だ……?」
近くにいた剣術部の部員達が何やらざわついている。つられるように慎一郎達もそちらの方を見ると、テントとは反対方向、地下迷宮の中心部方向に何やら大きくて黒いものが立っているのが見えた。
「デカいな。何だあいつ……?」
徹が言ったように、それは人影にも見えた。その人影は二歩、三歩歩いたところで仁王立ちになり、雄叫びを上げた。
――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……!!
それが、終わりの始まりを告げる号砲だとはこのときまだ誰も知らなかった。
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