悪竜と光の若者たち4

 [演技]

 火山の火口に力なく横たわる【黒竜】。全身黒く焦げていて、至る所に切り傷がある。尾は切断されており、四肢は鎖で縛られている。

 【黒竜】はかろうじて息があるという程度で、かつてのような尊大さは微塵も感じられない。

 【勇者】達四人は【黒竜】の頭付近に集まっている。




 勇者「まったく、お前はいつもいつも……」

 魔法使い「悪い悪い」

 戦士「さて、どうするか?」

 魔法使い「どうするって、トドメ刺すしかないだろ?」

 僧侶「そうですね。せめてもの慈悲としてひと思いにやって差し上げてください」

 黒竜「ま、待ってくれ……」




 [演技]

 四人が黒竜の方を見る。黒竜は顔を上げることもできない。口を動かすのみの動き。




 黒竜「ど、どうか命だけは……」




 [演技]

 【魔法使い】、茶化すように肩をすくめる。




 魔法使い「って、言ってるけど?」

 黒竜「奥の部屋にこれまでに集めた金銀財宝がある。それを全部やるから、どうか命だけは……」




 [演技]

 勇者、一歩前に出る。




 勇者「そうやってお前は命乞いする人間を何人殺してきた? 悪いがここはひと思いに……」

 [演技]

 【黒竜】突然暴れ出す。鎖を引きちぎって大きく頭を上げる。




 黒竜「愚かな人間め! ならば死ね!」

 勇者「……そうか。それがお前の生き様か」




 [演出]

 一瞬だけ部屋全体をフラッシュ。その間に【勇者】は反対側を向いていること。

 同時に剣が抜かれた音。フラッシュの後、少し遅れて【黒竜】の首がゆっくりと落ちる。




 戦士「お見事」

 勇者「さあ、行こう。世界にはまだまだ僕たちの助けを必要としている人たちがいる」




 [演技]

 【黒竜】の死体を置いて立ち去っていく【勇者】、【戦士】、【僧侶】。

 【魔法使い】が奥の方を見て、少し離れた【勇者】達に声をかける。




 魔法使い「おい! あいつの財宝、持っていかなくていいのか?」

 勇者「ああ、あれは持っていかない」

 魔法使い「そんな! もったいないじゃないか!」

 僧侶「私たちは世直しをしているのです。盗掘ではありませんよ」

 戦士「置いてくぞ。早くしろ」

 魔法使い「……………………………………あーもう! わかったよ! 行くよ! いきゃいいんだろ? ああ、もったいない。こんなだからいつまで経っても貧乏なんだよ、俺たち!」




 [演技]

 そのまま画面の奥へ消えていく四人。照明消す。




 ナレーション「こうして人の世を荒らす黒竜は成敗されました。数ヶ月後、やって来ない黒竜を不審に思った村人が黒竜の巣にやって来たとき、そこには竜の骨と、隠された財宝が残るのみでした。村はそれで大いに潤い、また同時に若者たちを騙したことを大変気に病んで村は旅人達に大変開かれた村となったのでした」

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