#そして君から
僕と陸田と朝来は、受験を終えて、同じ高校へと進学した。
僕と陸田が陸上部、朝来が天文部へと入る。人数の少ない天文部に、半ば無理矢理、僕らは誘われる。兼部はあまりいい顔をされないけれど、禁止とまでは言われていない。天文部の危機的状況は誰の目にも明らかで、陸上部の顧問は僕らを大目に見てくれた。
日常はあっけなく過ぎていく。桜並木は葉桜に変わり、夏の気配が僕らをつつむ。
僕は想いを打ち明けなかった。
僕ら三人の関係を壊したくはなかったからだ。
自分の内側に秘めた想いは、時折膨らんだり、痛みをともなったりしながら、どうにか今のところは押し込めている。
できれば消してしまいたいのに、上手くいかない。死んでくれない想いを抱えて、僕は生きている。
夏休みに入り、新学期に入ると、転校生がやってきた。
星野泰時と名乗るその人は、星を見るのが好きだと自己紹介をした。
穏やかな顔をした彼は、天文部へと入部すると言っていた。
朝来と同じ場所にいる彼のことを、最初のうちは警戒していたけれど、そのうち陸田がまず打ち解けて、僕も話すようになった。共通点は少なかったけれど、理由の説明できない安堵があった。
三人だった僕らの仲は、四人になった。そうして今も、日々を送っている。
壊したくない。だから今もまだ、僕は何も言えていない。
それでもいいと、僕は自分に言い聞かせる。
この関係がいつまでも続けば良いと、夢みたいなことを願っている。
*
天体観測に駆り出され、夏の星座を見上げた夜に、君はとある話を始めた。
それは短かったけれど、不思議と記憶に残る話だった。
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