相棒と父になった男
親友の男は煙草をくわえ、煙を一息私に吹きかけると、「ところで」と唐突に話を切り出してきた。珍しく焦っている。
「……“お嬢さん”は大丈夫なのか?」
私の相棒が“お嬢さん”と呼ぶ人は、私が愛した人だ。
「“あの子”にはこの世界は重すぎる。」
「今度はどんな手を打ったんだ。」
まただ。男の煙は私を囲んで渦を描いている。本当の、本当の結末を口にしてしまったら、この男は嘆くだろうか。
もう「ごめん」で片付けられない。私が、心の内で何度「すまない」と謝ってきたか、彼は知らないだろう。
私は、心配はいらないよ、の一言で、あっさり友の不安を斬り捨てた。
「私のしたことは、私に返ってくる。それだけだよ。」
「長を継ぐ気か」
「私は、自分の負えないことをするつもりはない。完全な人・物なんてなくていい。それで良いんだ。」
「……俺は相棒についていくだけだ」
何故だろう。今日は煙が目に染みる。
この日からちょうど半月。私は父から一族の長になった。
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